「君が実はAIでも好きだよ」

私の主人の話しようと思う。結婚して丸5年、付き合ってから7年が過ぎた私たちの関係は、戸籍上は夫と妻であるが、私たち自身の感覚では「特別なパートナー」である。

主人と始めて出会ったのは小学校1年生のとき。私と主人の実家は徒歩3分と近い距離にある、小中の同級生だった。小学校低学年の頃こそ「家が近い」という理由で遊んだ記憶が朧気にあるが、小中時代の関わりはほとんどない。その後お互いが社会人になった24歳になる年に、主人が働く居酒屋で私は客として訪れ再会を果たした。その頃の私は男遊びが人生で一番トチ狂っていた頃で、手篭めにしてやろうという下心で主人に近づいた。

そんな下心の思惑通り、主人とは男女の関係になったのだが、不思議と今までの恋愛感情とは違う居心地の良さを感じていた。私の病気のことを話しても引かない、が、変な同情もしてこない。私の過去の阿婆擦れエピソードを知っても引かない。「今の私」だけをちゃんと見てくれている感覚があった。

お互いに結婚願望がなかった。子どもを持つことも望んでいないのであれば、結婚しなくてもいいよね。なんなら付き合う必要あるかな?なんて言っていた。が、一応付き合おうとなんとなく付き合い始めた。

主人には「いつか自分の店」を持ちたいという夢があった。建築関係の専門学校卒後、ハウスメーカーの営業マンとして勤めていたが、厳しいノルマ、残業代は貰えず睡眠時間だけが削られていく。いわゆるブラック企業だった会社だったため、主人の心は壊れかけた。最終的に色々あって仕事を辞め実家に戻って働き始めたのが、私たちが再会した居酒屋で、主人はそれとは別に昼の時間帯に別のバイトもしていた。身体はボロボロだったが夢のためにと頑張っていた。私もその夢を応援し、なんなら「始めるなら早いほうがいいよ!」と背中をグイグイ押し、今の店を二人で始めて今に至る。

私たちは仲が良い。なんでも話すし、ふざけ合うし、同じことで怒って同じことで喜ぶ。付き合ってから今日までなにもないわけではもちろんなかった。私の病気で振り回したことも何度もあった。思い込みが強く頑固で曲がらない私の思考に戸惑わせたこともあった。それでも主人は「侑ちゃんを第一優先にしたい」と言ってくれる。「なにがあっても驚かないかな。例えば侑ちゃんが実はAIだったとか、宇宙人だったとか、歳を30歳誤魔化してても、侑ちゃんには変わりないからなー」と言うのだ。

私はすごい人と結婚したと思った。
主人と再会したこと、今一緒にいれることに
私は人生の運を全部使ったんじゃないか、
そんな風にすら思えてくる。

主人にもそう言ったことがあった。
「それは俺も同じだよー」

優しくてカっとなるけど寝たらすぐ忘れて、動物がすごく好きで、私が持ってくるどんな話題にもちゃんと耳を傾けてくれる。私の理不尽な「これしてほしくない」要望にも、「改善出来るよう努力するよ」と言ってくれる。

私は主人を幸せにしたい。
そのためには私が機嫌良く生活を送ることが一番なのだ。ごめんね、いつも困らせて。でもありがとう。

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