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「最低限の生活費を時間コストをかけずに調達する」ことの大切さ

坂口恭平さんの本『生きのびるための事務』の感想を続けます。

前回は、事務を再定義したことが凄いと書きましたが、ほかにもいろいろな要素が詰まっています。


僕が凄いなと思ったのは、お金の管理のところです。
この本では、ざっくりと今の生活費を把握して、最低限いくらあれば足りるのかを知ることと、その金額をどう確保するかについて序盤に書かれています。
これ、すごく重要なところです。

生活費や固定費を最低限に抑える


この本では、主人公がもともとお金のかからない暮らしをしていたこともあって、さらっと流れていくので、意外と見過ごされてしまうのかもしれません。
僕も、一応は、プロとしてお金についてアドバイスしているので、ここがすごく重要なポイントです。

スタート時点での固定費は、最小限にする。

これが出来ていない人が本当に多いのです。

売上というのは、自力じゃどうにもできないところがあります。
もちろん、目標を目指して頑張るのですが、売れるかどうかは相手次第です。
どんなに良い商品やサービスも、誰もが買ってくれるわけではありません。
狙ったところまで届かないということはいくらだってあるし、届いたとしてもそれが永続する保証もありません。

ところが、固定費というのは全部自分で決めているのです。
月々の家賃をいくらにするかは自分でその条件を選んで、進んで契約しているのです。
人を雇用したり、定額のサービスを申し込んだり、ほとんどすべて、自らが契約をしにいって、月々の支払額を決めてくるのです。
そのために必要なお金が手許にない場合は銀行からお金を借りてきます。
これだって、お金を調達したという側面しか見ていない人が多いですが、毎月いくら返済してくのかも決めてきているのです。
銀行で1千万を返済期間5年で借りるということは、5年間で税引後の利益額で1千万円稼ぐことを約束してきたことと同義です。税率をざっくり30%として考えると、税引前では1千4百万の利益が必要なのです。

このようにして、スタート段階で月々いくら支払うのか、借入期間でいくら利益を出すのかを自ら約束してきた上で事業を始める人が大多数です。
そして、その中の固定費には、自らの生活費も含まれているのです。
事業を始める前は、勤めていた会社で雇用されていた時の給料が月30万だったから、自分が作る会社でも30万でスタートしよう、という感じで始まってしまうのです。

これがどれだけリスクのあることを何気なくしているかわかりますか?

なので、この本の素晴らしいところは、その最低限の生活の様を最初に描いていることなんです。
極端な話、風呂に入らなくてもいいし、食料はその辺の人の土地に種まいてでも植物育てて食えるでしょ? と言っているわけです。
それくらい、最低限の生活をできる姿勢と知恵を持つことが大切だとさらっと言っているわけです。
なかなかできないけれど、それくらいの覚悟がないと事業を始めるべきではないと、多くの事業者を実際に見てきて思います。

最低限の生活費を調達するということ

お金に関して、この本で最も凄いポイントは、その最低限の生活費を調達する手段を具体的に描いているところです。
しかもその第一候補が、生活保護を受けることなのです。
この辺りはなかなか普通の人はアドバイスできません。
主人公もそれはちょっと、と日雇いの仕事をすることを選択しますが、とにかく、最低限の生活を調達する手段を何でもいいから、できるだけ時間をかけずに持つことを伝えています。

ほんと、これには唸りました。

実際に多くの会社や個人事業主さんを見ていますが、世の8割は赤字と言われているだけありますので、赤字続きの人も多いんですね。
ただ、多くの会社や事業というのは、代表者の生活費や役員報酬がなければ黒字になる場合が多いのです。
要は、その人が満足できる生活を営むところまでは届かないということなだけで、その事業で生活しようとしなければ、なんとかやっていけるのです。

つまりは、ですよ。
事業のスタート段階で、その事業で生活することを考えちゃいけないんです。
だから、いきなり始めるんじゃなくて、副業しなさいってことなんです。

実際は、多くの人は、お金を借りてそこから役員報酬を出して、最後は返済できずに苦しんでいきます。
頑張っても頑張っても、報われずに疲弊していきます。
成り立っていない事業で生活をしようとするからそうなるし、自分で頑張ろうとするからいつまでたっても自分以外の人で回せる仕組みを作れないのです。

ただ、今までこんな風にお客さんにアドバイスしたことはほとんどありません。
これから事業を始めたいっていう人には言えるのですが、僕のところに来た段階では、大抵の人は、すべてを決めた後で来るからです。
例えば、飲食店を始めるために、内装費で1千万かけて、すべて借入金で調達して、そこから事業をスタートさせた後でやってきます。
こうなると、もう戻れないんですよね。
なので、この段階で頑張る方向性と、限度が決まっちゃうんです。

はい。なので、坂口さんの本で、本当に最低限の生活費を生活保護を受けることでお釣りもできて、やりたいことに専念できるよ、ということをさらっと言ってくるあたりに、衝撃を受けたのです。
と同時に、坂口さんは、きっと多くの人を心から救いたいのだなと思いました。

ということで、いいですか、皆さん。

1.生活費は最低限にセットする。
2.生活費は新しく始める事業とは別でなるべく時間をかけずに調達する。
3.事業の固定費も必要最小限で始める。

元手がない中で事業を始めるなら、この3つが大事ですよ。


p.s. ちなみにタイトル画像はChat GPTに作成してもらいました。
「最低限の生活で、ぼろぼろで、その辺に生えてる植物を食べなら楽しく頑張るイメージ」と伝えたらこの画像。ウケる。

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