見出し画像

継続MASは使いづらい?


今日は、同業者向けのお仕事の記事です。
知らない人は、なんのこっちゃ? という話です。

うちの事務所は、基本的にはTKCのシステムを使っています。
その中で、決算のシミュレーションや、経営計画が策定できる「継続MAS」というシステムがあります。
今日は、この継続MASの良いところと、使いづらいところ、工夫しているところなどを書いてみたいと思います。
同じように継続MASを使っている同業者の人がいましたら、リアクションをもらえたら嬉しく思います。

良いところ① さくっとシミュレーションができる。

継続MASの良いところは、さくっとシミュレーションができるところです。
特に、決算予測は、個人的には使いやすいと思っています。
その場で、ちゃちゃっと社長と話をしながら作って、このままでいくとこういう感じですね、と決算の着地点を見せることができますし、納税予測もさっとしてくれるので決算前は便利に使っています。
予測については、当てることが目的ではないので、あくまでも、この数字で行った場合という前提を置くことが大切です。
それをしないと、予測と実際が違ったと言われるトラブルが生じる可能性があるので注意です。
あくまでも、大まかに、税額や全体像が把握できるところに価値があると思っています。

悪いところ① ちゃんと作ろうとすると壁にぶつかる

継続MASの悪いところは、ちゃんと作ろうとすると難しいところです。

仕訳をガシガシ打って直せるわけではないので(一部はできますが)、細かなところが弱いです。

例えば、太陽光発電なんかをしている会社は、事業税で収入割が発生します。
収入割については、租税公課℀で処理しますし、それ以外の法人税等は、法人税等℀で処理をします。
最終的な損益は変わりませんが、経常利益に主眼を置いた場合にはズレが生じます。
今これを書きながら気が付きましたが、そもそも、収入割の税額をきちんとシミュレーションで出してくれるのかもわかりません(どうだったっけ? 毎月概算計上していたので、あまり気にしていなかったけれど)。

細かなところを気にするお客さんの場合には、その細かな違いで、なんで違うんだとトラブルになることがあります。
継続MASの苦手なところを掴めていれば、事前にその辺を説明して予防線を張ることができるのですが、こちらも気が付いていない場合は、後々めんどうなことになる場合もあります。

悪いところ② 損益予測はやりやすいが、貸借対照表や、キャッシュフロー予測がやりづらい

損益予測と同時に、貸借対照表や、キャッシュフローの予測なども出してくれます。

ただ、出してくれるんだけれど、なんでそうなるんだ? とこっちが頭を悩ませることもしばしばあります。
貸借対照表などの区分がおおざっぱなので、実際にどの科目を拾ってきているのかわかりづらいところがあります。
例えば、その他流動資産って何だっけ? というようなことです。
キャッシュフローも売上回転期間などに基づいて算出してくれますが、こちらが思い浮かべたように表現することが結構慣れないと難しいです。

継続MASがどのように計算をして表示してきているのかを把握できれば、いじる場所がつかめるのですが、それがわからないと、頭を悩ませ続けることになります。

良いところ② バンクミーティングや経営改善計画などにも使える

僕は、バンクミーティングの時なんかは、5か年計画を継続MASでよく作ります。

経営改善計画の7000Pが流行っていたころは、経営改善計画用の様式に切り出して出力もできるので、使っていました。
国の補助金を通さない場合は、継続MASの書類だけで、バンクミーティングをしています。
ローカルベンチマークもできてくるし、金融機関ごとの借入金の状況もよくわかるので、金融機関側にとっても、意味のある資料になっていると思います。

悪いところ③ 細かな突っ込みに弱い

これは、悪いところ①②ともかぶりますが、細かな突っ込みに弱いです。
バンクミーティングなどでは、当然ながら、専門的な突っ込みが張ります。
この数字はどいいう意味ですか、と聞いてくるわけです。

中には、こちらが意図していなくて、自動的に計算されて出てきている数字があったりします。
すると、説明できないわけです。
システム上、そうなってしまったんですけど、と説明に窮することがあります。

特に、国の補助金の様式に切り出した場合には、見えないところで、国の様式に合わせるために数字の調整計算が入っている場合があって、それがどこからどう来たのかわからないことがありました。
直したくても、エクセルにロックがかかっていて直せなくて困ったこともあります。

悪いところ④ マーケティングに弱い

継続MASに限らず、TKCのシステム全体に言えることですが、税理士が得意とするような事項に対してはシステム化されて強いのですが、それ以外の分野については無防備というか、疎かになっています。

経営計画を立てる上で、売上をどう作っていくかということも当然、大事なわけです。
継続MASでも、商品別に設計をしたりといったことはできますが、大雑把すぎるのです。
アンゾフモデルとかもありますが、小規模零細企業にとっては、もっと細かな具体的なことを拾っていかなければ意味をなさないと思っています。

売上を作るうえで、どんな顧客がいるのか、顧客層ごとにどうなっているのか、顧客単価はどうなのか、どのくらいの頻度で売り上げがあるのか、それぞれの原価率はどうなっているのか、等々、会計数値では出てこない様々な情報が必要になるわけです。
ただ、そういった会計数値以外のことを記録するための仕組みがTKCシステムではほぼありません。
会計にこだわりすぎて、見えなくなっているのかもしれません。
TKCが税理士の集団としての視点からしか物事を見ていないと、そろそろ時代から取り残されるかもしれません。
TKCの本当の脅威は、freeeやマネーフォワードではない、もっと別の異分野からやってくるような気がします。

工夫しているところ① 別のシステムで補う

TKCで出来ないところは、別のもので補えばいい。
うちの場合では、会計数値以外の日常情報を記録する仕組みを作って、クライアントに使ってもらうようにしています。
kintoneなどを使って、自社開発したものがほとんどですが、これに日々記録してもらうことで、そのデータがあらゆるところで活きてきます。
税務会計という視点ではなく、現場にとって必要な情報になってきます。

すると、自然とマーケティングや管理会計が具体的な着眼点を基にできてきます。
データから様々な気づきが生まれるわけです。
また、見えていない情報については、見えるようにしないと気持ち悪いと感じるようになります。
見えなくて当たり前から、見えないと気持ち悪いに変わるのです。

結果的に、会計も連動して、現場の情報に紐づいた自計化が完成します。
書類をスキャンして、csvなどにして、RPAやAIも駆使して省力化しようなんていうのが流行りですが、そんな作っただけの書類にどこまで価値があるのかは微妙なところだと思っています。
税務調査にも弱いし、いざ意思決定をしようというときには、従来の財務諸表程度の情報しかないわけです。
すべての情報が紐づいた、ブロックチェーンのような状態で、取引が起こる前から、マーケティングや税務会計まで、全部が情報として繋がっている。
そんなことが、きっと当たり前になってくるんだと思います。

それに向けて、うちの事務所でも微力ながら、やれる範囲内で取り組んでいます。

工夫しているところ② 現状予測を丁寧にやる

継続MASには、現状を予測するところと、それを基に、どう改善していくのかという2つの視点がありますが、最初の現状予測を丁寧にしっかりとやっておくことが重要だと思いました。

特に、既存の借り入れ状況はもちろん、貸借対照表の各項目ごとに、今後5年間でどう残高が推移していくのかといったところを、しっかりと最初にやっておくことで、後で楽になります。

今までは、損益計画を作ってから、計画書を出力して、あれ? なんでこんなキャッシュフローになるんだ? 貸借対照表もおかしくね? となっていましたが、そういったことが防げます。

kintoneでもエクセルでもいいと思いますが、継続MASの各区分が、会計上のどの科目と対応しているのか、それぞれの科目の数字が今後どう動くのか、それによって、継続MASには、どう数字を入れればいいのか。
こういったことを丁寧に抑えておくことが大切です。
継続MASがどのように計算しているのかの算式も見て、どういった場合に注意をしなければいけないのかも、別のところで意識する仕組みを作っておく必要があります。

そう思って、今日は、kintoneで継続MASの弱点を補うアプリを作っていました。
このアプリに情報を入れながら、継続MASを動かすと、誰でも素早く、重大な間違いを犯すことなく、計画が作れるのではないかと思っています。

工夫しているところ③ 返済可能額の計算式を組む

継続MASでは、例えば、FCFの8割を返済原資として、返済計画の見直しをしていくという発想をしています。

ただ、このFCFには、財務活動におけるCFが入ってないんですよね。
財務活動におけるCFには、金融機関の借入以外にも、リースの未払金なかも含まれている訳です。
そのリースのキャッシュアウトがFCFには入っていないので、これだと、返済可能額がきちんとわからないことになります。

そこで、リースの支払いも考慮したうえでFCFを計算する算式をkintoneアプリで組んでいます。
キャッシュの8割を計算し、返済可能額を各金融機関の残高割合で配分する残高プロラタの計算までできるようにしています。
それに基づいて、継続MASの返済条件設定を直しています。


以上、いろいろと継続MASについて思うところをざっくりと書いてみました。

どの会社に限らず、1つのシステムだけですべてをやりきることにはできません。
やりきれないことをやりきるためのそれぞれの工夫もシステム化できると、本当に効率的になってくると思います。

もう少し落ち着いたら、この計画の作り方を動画にして、後輩たちの今後に役立つ教材を作りたいと思っています。

経営や資金繰りに困る事業者がいなくなると良いんですけどね。
なかなか現実は厳しいので、できる範囲内で、支援しています。

それでは、同業者の皆さん。
お互い頑張りましょう。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?