太宰に学ぶ超絶ワンオペメンタル
地獄のワンオペレーション
ワンオペ育児、つらいですよね・・・。
日常的にワンオペという方もいるでしょうし、
平日だけor休日だけワンオペという方もいるでしょう。
私は完全ワンオペではないですが、夫は泊まり勤務も多く、
土日も仕事ということもよくあります。
一か月まるまる土日も含めて帰ってこないということも・・・。
いやまぁ、普通に虚無ります。
家事育児を一人の肩に背負うのはシンプルに仕事量が多いし、
プレッシャーもあるし、逃げ場がなくて精神が詰む。
日常的にワンオペの方とか、
パートナーが在宅していたとしても家事育児にディスタンス取っちゃってる方は本当におつらいことと思います。
そもそもとしてワンオペっていいもんじゃないので、
官民問わず託児所やサポートサービスを利用するとか、
親戚友人に頼るとか、
自分の機嫌をとる方法を見つけておくとか、ソフト面ハード面ともに自分を守るセーフティネットは整えておくべきだと思います。
さて今回は、
王道のワンオペ対策はしたうえで、
さらにちょーーっとだけワンオペ育児を乗りこえる強く賢いメンタルを作るサプリみたいな文学を処方したいと思います。
究極のワンオペ文学「ヴィヨンの妻」
そのサプリ文学はコチラ。
太宰治の「ヴィヨンの妻」です。
読んだことありますか?
太宰さん、お好きですか?
私は、よくいうように
「これは私のことを書いてる…!」
みたいに感じて、若者時代にどっぷりハマったという経験はないのですが、
むしろ青春を卒業して、子持ち主婦になってから好きになりました。
さて、女にだらしなく、あちこちにちょっかいを出しては死ぬ死ぬ詐欺を繰り返した挙句、本当に愛人と心中してしまった太宰さんですが、
その作品中にはエグイほどのワンオペ育児が描かれています。
「ヴィヨンの妻」のあらすじを乱暴にまとめますと・・・
妻と夫と子供が3人暮らしておりまして、その夫が超だらしなくて、
夜な夜な飲み歩いて家を空ける。全然家にいない。当然金もない。
外に女もいるっぽいし、しかも子供は障がいがあるみたい。
ある時夜、夫がベロベロになって帰ってきたと思ったら、直後に飲み屋の人が家に殴り込みに。
だらしな夫は飲み屋で長いこと(3年間も!)金を払わず飲み散らかしていて、とうとうキレた店の大将が家を突き止めて追いかけてきたらしい。ヤバい。
とりあえずその晩はなんとか場をおさめたものの、夫はとんでもねーことしちゃってるわい、どうしよう・・・
で、ここからがビックリビビンバなんですが、
妻は障がいのある3歳児をおんぶして、夫がタダ酒飲み倒している店に行って、
ちょっとお店手伝います~から、
なし崩し的に働き始めるんです。
鬼行動の人!
しかも、お店では客あしらいもうまくって、人気出ちゃう。
だらしな夫も女連れで店に来て
「げ、かみさんが働いてる!」
と最初は気まずそうにしてたんだけど、
奥さんは飄々と働いてるもんだから、
そのうち普通に通いはじめる。
で、まぁ、こんな感じで生きていこうかね、っことで話は終わりなんです。
この夫がねえ、
私ならどう処刑してやろうか、って考えるだけで
飯5杯はイケるってくらいの奴なんすよ。
夫は殆ど家に落ちついている事は無く、子供の事など何と思っているのやら、坊やが熱を出しまして、と私が言っても、あ、そう、お医者に連れて行ったらいいでしょう、と言って、いそがしげに二重廻しを羽織ってどこかへ出掛けてしまいます。お医者に連れて行きたくっても、お金も何もないのですから、私は坊やに添寝して、坊やの頭を黙って撫でてやっているより他は無いのでございます。(P105)
妻、気の毒・・・
そんな生活のくせに、こんなこともほざいてます。
「女には、幸福も不幸もないのです」
「そうなの?そう言われると、そんな気もして来るけど、それじゃ、男の人は、どうなの?」
「男には、不幸だけがあるんです。いつも恐怖と、戦ってばかりいるのです」(P137)
は?
もう一回いうね。
は?
いや、これは文学なので、
きっと思想とか文学的試みとか、
太宰のナントカのカントカが投影されている、
とかがあるのかもしれませんが、その辺の深い読みはダザイストとか研究者に任せます。
では、オカン的視点でこれを読むとどうか。
とにかく妻、すごくないですか?
よくこんな状況で、何とかしようと行動できますよね。
しかも、私の乱暴なあらすじだと伝わってないかもしれませんが、
本文読むと、
この妻がなんとも可愛らしく、天然そうでいて実は機転のきくステルスかしこで、
ふわふわしてるのに強くてたくましいんです。
でも、私はこの作品を
こんなにつらい状況でも頑張ってる人もいるんだから私も頑張れる!
これに比べたら私なんてたいしたことない!
…なんていうド根性を鍛えるためにオススメしたいわけではありません。
人は人だし、そもそもこれ、フィクションだし。
じゃあなんでこの作品を推したいのかというと、
私はこの小説を読んで救われたところがあるからです。
目の前で騒ぐ子供と、
終わらない家事
退路なし、待ったなしの泣きたい一日。
もーいや!!!
と叫びたくなるとき
「ヴィヨンの妻さんなら、どうするのかなぁ」
って思うと、一瞬ゆとりができるんです。
私も文学的妻になった気分で乗り切ってみようかしら、
なんて思う。
キツイわ…って思うとき、
少し自分を俯瞰してタフになる、ドーピング剤。
これも文学の効用だと思っています。
この作品の最後は、妻の言葉で終わります。
「人非人でもいいじゃないの。私たちは、生きていさえすればいいのよ。」
心に小さな「ヴィヨンの妻」を。
ワンオペ生活のハックにいかがでしょうか。
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