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ゲー選かけ流し(追憶編) vol.3 『龍虎の拳』

ゲームの選評を気の向くままにチビチビとかけ流す、ぬるま湯スペース。
今回は筆者が最も贔屓にしている格ゲーシリーズ『龍虎の拳』について、その魅力をまとめたい。

<筆者の『龍虎の拳』プレイ歴>
・龍虎の拳シリーズは3作全てプレイ、全キャラ1コインクリア済み
・『龍虎の拳2』はリョウで1コイン隠しボス撃破
・最も好きなシリーズ作品は『龍虎の拳』


ストーリーに強くフォーカスしたシングルモード

1990年代、『ストリートファイターII』の記録的大ヒットによって格闘ゲームブームが到来。様々なメーカーが格ゲーをリリースしていく事となる。

そんな中でNEOGEOシステムを擁し、カプコンの対抗馬としてのポジションを確立したのがSNK。そのSNKが「100メガショック」のキャッチと共に世に送り出したのが『龍虎の拳』である。

第一印象から、今までのNEOGEO作品より
グラフィックの表現力が増している事が分かる。

『龍虎の拳』をプレイすると、従来の格ゲーよりも格段に演出とストーリーに力を入れている事が見て取れる。
ストーリーは、本作でメインを張る "無敵の龍" リョウ・サカザキと "最強の虎" ロバート・ガルシアが、さらわれたリョウの妹ユリを救うために舞台となるサウスタウンを奔走。極限流空手を駆使して様々な強敵たちと拳を交えていくという流れ。

ゲームのヒロインはとにかくさらわれがち。
ユリもこの頃はか弱い女の子だった。

さらわれた家族や仲間の救出劇自体はアーケードゲーム史の中でもありきたりな設定であるが、この手のストーリー/演出は基本的にデモ画面で語られる事が殆ど。アーケードは回転率を上げるためにテンポを優先する傾向にあり、ステージ間のデモは短い(無い)のが普通。

ステージごとにキャラクターの掛け合いがある。
テンポを損なわない程度にストーリーを把握できるという
良い塩梅に仕上がっている。当然スキップも可能。

本作はデモ画面は元より、ステージ開始前と後にストーリーに関わる会話パートがあり、ステージ間のデモまで挟まれるという力の入れよう。100メガショックの名に恥じないよう作られた意欲作である事がヒシヒシと伝わってくる作品である。

演出の面で言えば、音作りのセンスも良い。ステージの曲も「ART OF FIGHT」を始めとするノリの良いキャッチ―な曲群が楽しい上、効果音の爽快感は今でも語り草となっている。

要所で響くスコーーーーーーーン!というヒット音は、『バーチャファイター』のクリーンヒットのように、リアリティとはかけ離れている音であるものの、何度でも聞きたくなる中毒性がある。

龍虎の拳のSEを語る上では欠かせない暫烈拳。
ビシビシビシビシビシビシビシビシビシ
スコーーーーーーーーーーーーンッ!!

対戦ツールとしての扱いにくさ

ストーリーと演出に重きを置いている『龍虎の拳』だが、対人戦を前提とした格ゲーとしてみた場合、かなりとっつきにくい代物である。

本作はクレジット投入後、リョウとロバートの2名しか選択できない。ストーリーモードで戦うキャラクター達を対戦モードで使用するには、乱入しないと遊べない。1人用プレイで様々なキャラを操作して鍛錬を積む事ができない点は、対戦ツールとして見た場合に大きなハンデキャップである。

他のキャラを操作するならもう1コイン。
ボスキャラを使いたければステージをボスまで進めて
1コイン。これは対戦ツールとして厳しい…。

また、リョウ・ロバートが豊富なワザに恵まれており、主人公格の性能を持っているのに対し、他のキャラクター達は必殺技の数が少なく、戦略の幅を広げにくい。ましてや乱入でしか遊べないとなると、さらに戦術を練りにくい。

ラスボスのMr.カラテはリョウのコンパチ、かつワザの出が非常に速いため、実質的な最強キャラはMr.カラテと思われる。本作の様なバランスに大きな偏りがあるゲームは他の格ゲーと比較して扱いづらく、対戦が盛り上がっているシーンがあったという話はついぞ聞いたことはなかった。

対戦が煮詰まったら最終的な強キャラが
定まったのかもしれないが、そこまで攻略が
進んだゲーセンはあったのだろうか…?

SNK発の格ゲーで対戦が盛り上がりを見せたのは、筆者の知る限り『餓狼伝説2』以降となるのだが、それはまた別のお話。

ゲームの面白さは筆者としては太鼓判を押すが、ゲーセンで、商いとして稼働させる格ゲーとしてみた場合、本作はポテンシャルの低さが目立つ作品であると言わざるを得ない。

革新的システムの数え役満

対戦ツールとして重い枷を負っている『龍虎の拳』だが、本作最大の特長は、その後の格闘ゲームでトレンドになった様々な本作独自のシステムや仕様を備えていることである。

攻撃を受けて顔が腫れ出血しているリョウの姿が
ズームイン演出でバッチリ確認できる。

<本作発祥のシステム>
・ズームイン/ズームアウト機能
・超必殺技(覇王翔吼拳)
・隠し必殺技/乱舞技(龍虎乱舞)
・ボーナスステージによるステータス強化
・気力ゲージによる必殺技威力変化
・気力溜め/挑発
・パンチ/キックによる飛び道具の相殺

ボーナスステージで超必殺技伝授の
ミニゲームに成功すると覇王翔吼拳を習得できる。

細かい演出にも事欠かない。
・ダメージによって顔が腫れる、サングラスが取れる等の視覚演出
・ダメージによる疲労の蓄積(ガードの構えが下がる:龍虎乱舞の発動条件)
・脱衣KO(!!)

脱衣無し/有りでステージ後のセリフにまで変化が
あるという芸の細かさ。
…脱衣シーン?お見せできないよ!

など、本作が初と言える要素がてんこ盛りであった。後の格ゲーで取り入れられたものも多く、システム面で『龍虎の拳』が後の格ゲーに与えた影響は格ゲー史上随一である。

格ゲーというジャンルを確立し、業界を発展させたのは紛れもなくカプコンのストIIだが、格ゲーの各種システムの草分けになったのは『龍虎の拳』である、と筆者は断言する。

おわりに

「100メガショック」第一弾として、NEOGEOというアーケードブランドの認知を図るべくして世に送り出された『龍虎の拳』。対戦要素にはかなり偏りと物足りなさを感じるものの、その後NEOGEOが快進撃を続けるきっかけとなる作品であった。

対戦が盛り上がらなかったという事から、シリーズはその後『2』と『外伝』の計3作で途絶えてしまっている。現在は『THE KING OF FIGHTERS』シリーズにコンスタントに出演しているものの、主人公チームや餓狼伝説チームと比べて三枚目キャラなストーリーに翻弄される事が多く、SNKの格ゲーの中でも不遇な立ち位置のゲームである。

本作を遊べば、元来シリアス路線である事が分かる。
ニコニコ動画など、ネタとして消費される機会が
多い事について、筆者は手放しで喜んではいない。

一方、SNKプレイモアが『龍虎の拳』のシリーズ新作の可能性について言及した事もあり、どこかでシリーズがリブートされる未来もあり得るかもしれない。

主人公リョウ・サカザキは他の格ゲーにゲスト出演する事が多く、シリーズやキャラクターに対する潜在的なニーズはあると筆者は信じている。今後の展開に期待するとともに、原点となる本作についても機会があれば是非触れて欲しいと思う作品だ。

本作を一言で表すとすれば、
「未来の礎となる数々のシステムを生み出した格ゲー界のビッグダディ(ビッグマム)」
である。


本作の選評は以上。
次回もよろしくお願いします。

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