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ゲー選かけ流しvol.15 『ピコンティア』

ゲームの選評を気の向くままにチビチビとかけ流す、ぬるま湯スペース。今回は『ピコンティア』。

初報から長らく沈黙を守ってきた『ピコンティア』。その後、Steamでのアーリーアクセス~本リリースを経て、無事家庭用コンソール(Switch・PS4)版もリリースの運びとなった。発売から1年が経過した今、あらためて選評で本作の特徴をまとめたいと思う。

<筆者のフライハイワークスゲームプレイ歴>
・同社作品で最初にプレイ/クリアしたのは『魔女と勇者』
・『フェアルーン』『ドランシア・サーガ』『神巫女 -カミコ-』等、スキップモア製のゲームを中心にプレイ/クリア済
・『ピコンティア』はSwitch版をプレイ。クリア後の探索、親密度イベントまで完了
・同作のプレイ時間:約50時間


ビビッドなドット絵が光るスローライフ

本作は『フェアルーン』等を手掛けるスキップモアが開発に携わっている。(フライハイワークスはパブリッシング)スキップモアはドット絵が美しいグラフィックのゲームを多数リリースしており、『ピコンティア』もその例に漏れずドット絵である。

ファミコンに代表される8ビット機のドット絵を忠実になぞろうとすると色数の制限が必ずついてまわる。一方、同社のドット絵は色数に制限は設けず、見栄えの良い色味のドット絵となっている。

スキップモアの色彩感覚は
筆者の感性にどストライク。

ドット絵=8ビット感を求める人からすれば、本作は「なんちゃって8ビット」に見えるかもしれない。筆者は8ビットの時代性や整合性よりも見栄えを優先するので、スキップモアが手掛けるドット絵の世界観はずっと贔屓にしている。

全体的に明るい色調で統一された世界は開放感に溢れ、マップのスケール以上に広がりを感じるビジュアル。
そんな世界でプレイヤーは拠点である自宅の周りを開拓しながら、舞台となる島の謎を少しずつ明らかにしていく事となる。

軽いアクション、重たい日課

本作は『牧場物語』『Stardew Valley』に代表されるスローライフゲームに属する一方、スキップモアがリリースしてきた過去作と同様、モンスターを相手にするアクション(戦闘)要素がある。

とは言え、スローライフゲームに合った温度感にするためか、アクション要素はかなりライト。よほど無茶な探索をしない限り戦闘に負ける事はないだろう。

一部好戦的なモンスター以外に苦戦する事はない。

アクション部分が本当に必要性があるかは微妙なライン。一方、アクションに不慣れな人でも十分立ち回れる難易度ではあるので、スローライフの中でのアクセントとしてはしっかり機能していると感じた。

自宅の周りを開拓して作物を植えて育てる、島を探索して素材を集める日常パートは中々のハードワーク。
クワ、オノ、ジョウロ、ツルハシ、つりざおなど、それぞれのアイテムを使用する度にスタミナを消費するため、序盤は1日のうちにできる事が少なく、かなり単調な印象を受ける。午前中にやれる事がほぼなくなってしまい、午後から翌日まで寝て過ごすような日もあった。

日用品のグレードを上げると日課の効率が
グンと高まる。ここまで来ると楽しい。

探索が徐々に進み、上位の素材を使ってクラフトした日用品を使用するとスタミナの消費効率、開拓範囲などが大幅に広まるので、俄然モチベーションが上がってくる。育てた作物をほこらにお供えする事で体力の上限も増していくのでこちらも重要。

ほこらから頂いた種を成長するまで育て、
ほこらにお供えすると体力アップの恩恵が得られる。

ストーリーが進んで活動範囲が広まると、その分、素材集めや島の住人との好感度イベント(後述)に日々奔走する事になる。ストーリーやサブイベントを意識するほど毎日の活動がせわしなくなっていく。日課に埋没していく感覚はリアルな社会人生活のよう。

アクション要素と日課の温度差が激しい事もあり、スローライフを堪能できないのが本作の悩ましいところ。もっとも、これは筆者のように効率化ばかり考えているプレイヤー固有の事情と言えなくもない。
急がず焦らずマッタリとゲームの世界に浸れるプレイヤーであれば、明るい世界観とも相まって、心地よい日常を過ごす事ができるだろう。

謎が散りばめられた世界と、そこに住む住人達

本作はジェダ博士と主人公ピコルがピコニウムの豊富な島を訪れ、2年の眠り(コールドスリープ?)から目覚めるところから始まる。

スローライフの舞台には似つかわしくない
SFチックな睡眠装置。

島には唯一の町があり、住民の殆どは町に住んでいる。住民たちはそれぞれの行動パターンに従って一日を過ごしているため、継続的に交流したい場合は住民それぞれの行動を把握して訪問する必要がある。

住人と毎日会話する事で好感度が上昇。サイドクエストをクリアして好感度レベルが上がるとアイテムがもらえたり、住民の意外な秘密を知る事ができたりするのも特徴。

個性豊かなキャラクターたちの
新たな一面が見られるかも。

住民との好感度イベントを加速させるには、住民お気に入りのアイテムをプレゼントする必要がある。そのため本作はスローライフ系のゲームによくある、ゴリゴリの素材ゲーとなっている。

住民の好きなプレゼントは素材を
組み合わせて入手(製作)するものもあり、
そのぶん様々な素材が沢山必要になる。

ストーリーを進め、住民達と心を通わせる過程で、舞台となる島の秘密も少しずつ明らかになっていく。
とは言え、伏線がきっちり回収されるカタルシスは少ない。想像の余地がかなり広めにとられている描写なので、島にまつわる疑問の全てが明示される事はない。断片的に得られる情報からプレイヤー自身が推測するしかないようだ。

筆者は、スキップモアの別作品との
繋がりを感じたのだが…?今後同社の作品で
明らかになる日は来るのだろうか。

おわりに

『ピコンティア』はドット絵が光るスローライフゲーである点、過去作が軒並み一定の評価を得ているスキップモアの新作である点から、前評判の期待値が高かった作品と記憶している。筆者も初報を見てからずっと本作を待ち続けていたクチ。

一方、島の広さはコンパクトである。やや手狭な活動範囲の中で親密度上げや素材・資材集めに奔走していると冒険感が希薄に感じられ、”ノットスローライフ”な感覚に陥ってしまう事もあった。そのため、いわゆる牧場シム系の名作と比較するとこじんまりとした印象を受ける。

一方、ディストピアSFのような設定を思わせる遺物が島に点在しており、世界観が気に入ってマイペースに遊ぶ事ができるプレイヤーなら、かなり居心地の良い空間に浸る事ができる作品。
住民たちは皆ピコルに対し好意的で、『どうぶつの森』で遊んでいるかのような安心感がある。心理的安全性の高いゲームと言えるだろう。

不思議なキャラクターとの交流もある。
なぜ彼はここに居るのか?などなど、謎は尽きない。

現実世界が忙しい人にはちょうど良いユルさではあるので、ビジュアルが気になった人は本作に手を出してみる事をおススメする。きっと損はしないハズだ。

アチーブメント機能もあるので、
本作が気に入ったらクリア後もまだまだ遊び込める。

選評は以上。
次回もよろしくお願いします。

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