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刀の中に海を見る【博多藤四郎・今荒波】

今回行ってきたのは東京国立博物館の総合文化展。4月11日に展示替えされてからなかなか行けずにいましたが、先日ようやく足を運ぶことが出来ました。刀剣乱舞に登場する博多藤四郎が展示されているとのことなので、今回は博多藤四郎目当てで行ってみることにします。


太刀 古備前正恒

トップバッターは、国宝・古備前正恒。もうめちゃくちゃかっこよかった……!肌が黒くて、なんだかものすごく光ってました(これは照明のせい?笑)
古備前正恒は平安時代の太刀にしては反り浅めです。姿全体はやや細めな感じで、鋒が小さくちょこんとしています。そういうところは平安らしい、優美で上品な姿ですね。ただ三日月宗近のような貴族感は強くなく、より勇ましい雰囲気があるなと思いました。多分それは反り具合の違いによる印象の違いではないかと感じます。
そして個人的に、この刀は映りが見えやすかったです。特に茎側の地鉄の映りが分かりやすいので、観てみると楽しいと思います。

古備前派は、平安時代から鎌倉時代に備前国(現在の岡山県)で栄えた刀工集団のひとつで、備前伝の始まりとされています。有名な刀工は友成・正恒・包平など。彼らが作る優美な太刀は贈答用としても扱われていたらしいです。たしかに友成作の鶯丸は御物として今も宮内庁に管理されていますね。

さらに、刀剣ワールドさんの記事を読んでいると、このような記述が。『「焼出し」に個性があり、「はばき元」の焼幅を上部よりも狭く焼き出します。』
あれ?そうだったけ、と手元の写真を確認すると、たしかにハバキ元の刃文の幅が狭いです!!写真撮っておいて良かった!

あとから確認することが出来るので、やはり写真撮影可の展示は有り難いですね。綺麗に写っていて良かった。(^^)


太刀 伯耆安綱

こちらも平安時代の太刀。かっこいいですね……!
伯耆国は「ほうきのくに」と読みます。場所は現在の鳥取県。安綱はあの天下五剣の中でも最も古いとされる『童子切安綱』の作者です。日本の刀工のなかでもかなり初期の人物ですね。

実はこの前、両国にある刀剣博物館に訪れたときに安綱の太刀を三口見たのですが、どれも肌が立っていて力強い印象でした。そして今回の安綱も、やはり肌の模様がよく見えますね。同時期に安綱を四口も見れるなんて、すごく嬉しいですし勉強になる……!

今回の安綱は物打ちと鋒部分に傷がありました。そういえば以前「傷のなかでも、美術的価値が上がるものと下がるものがある」と聞いたことがあります。それについて検索すると、こちらの記事が出てきました。

いつも引用させてもらっている刀剣ワールドさん、傷(疵)についても書かれているなんてすごい。勉強中の私にはめちゃくちゃ有り難い存在です。。。
美術的価値が下がる傷はやはり展示会にでることはないのか、紹介されている傷はどれも見たことがない気がします。烏口だけはどこかで見たような気がしなくもないですが、はっきりと記憶にありません。
美術的価値が上がるのものは、切り込み傷・矢傷・刃こぼれとのこと。刃こぼれに付加価値があるとは知りませんでした……!たしかに、刃こぼれがある刀はたまに展示で目にすることがあります。切り込み傷というのは、あの石田正宗にある傷ですね。あれはすごい迫力だったなぁ。

石田正宗の切り込み傷

矢傷はその名の通り、刀身で矢を受けた際についた傷のこと。私、矢傷という存在は知りませんでした。今回の安綱についている傷は矢傷かな、と思うのですが自信が無いのでまた行って確かめたいと思います。
それにしても、傷にも色々種類があるのですね!私にとってこれは新たな発見でした。できることなら美術的価値の有無に関係無く、色んな種類の傷を見てみたいなぁ。

短刀 博多藤四郎

さて、本日のお目当て・博多藤四郎です。
博多藤四郎を見たのはこの日が初めてでしたが、とにかく肌に目が釘付けになりました。小さな姿のなかにぐるぐるとした年輪模様がいくつも見えて、見ていてとても楽しいです。特に鋒側は杢目の模様がよく見えます。私はそれが鳴子海峡の渦潮みたいだな~って思っちゃいました。肌の模様って不思議とずっと見ていられる魅力がある……。

名前になっている『博多』の由来は、福岡藩主になった黒田長政が博多で購入した短刀だからだそう。

博多藤四郎の作者である藤四郎こと『吉光』は、山城国(現在の京都)の粟田口派に属し、鎌倉時代中期に活躍しました。天下三作のひとりにかぞえられる、非常に評価の高い名工です。吉光はとくに短刀を多く作刀したことで知られていますが、現存する唯一の太刀である「一期一振」は現在御物として管理されています。生きているうちに一度でいいから見てみたいものですね。

太刀 備前一文字(号 今荒波)

この刀が展示されていると知らなかったので驚きました……!「今荒波」という名は以前どこかで聞いたことがあって、かなり印象に残りやすい名前だったので「どんな刀なんだろう」と興味がありました。まさかここで出会えるとは! 東博さんが所蔵していた刀だったのですね。

刃文は一文字らしい華やかな丁子です。残念ながら私のスマホでは綺麗に採れなかったので、こちらの『e-国宝』サイトを貼らせて頂きます。こちらのサイトは文化財が綺麗な画質で見られるのですごく良いです。

名前の由来は『荒波のような躍動的な刃文』から。私は最初、「丁子刃はどれも躍動的に見えるけどな……」と思ってなかなか荒波を感じることができませんでした。でもしばらく眺めていると、丁子が大きく盛り上がっている部分と控えめな部分があることに気がついたんです。それで「……あ!」と。丁子の動きが規則正しくなくて、変化があるところがたしかに『波』のように見えてきます。私の見方があっているかは分かりませんが、個人的にはこの刀の名前である『荒波』を感じることが出来て嬉しかったです。

私はよく地鉄の模様や刃文を海面に例えて表現することがあるのですが、この刀に「荒波」という名をつけた人物も同じように感じたのかもしれないと思うと、少し親近感のようなものを感じます。
海に限らず、刀に現われる様々な景色は星空や炎、雲、稲妻などに例えられることがありますが、こうした例えは刀剣をより魅力的に見せてくれますよね。素敵な表現に出会うと、その刀の解像度がぐっと上がるので助かります。


太刀 尻懸則長

こちらは大和伝の尻懸派の太刀です。尻懸派は初めて見ました……!嬉しい!
肌な柾目肌で刃文は直刃調。まさに大和伝という感じがします。銘はものすごく小さいです。そういえば大和伝の刀には無銘が多いと聞いたのですが、これは在銘の刀ですね。大和伝において、在銘と無銘はなにか意味のある違いだったりするのでしょうか……。気になります。

最後に

さすが東博、いつものことながら常設展(総合文化展)のラインナップすごいですね…!今年の初めに年間パスポートを作ったのは大正解でした。パスポートがあるおかげで気軽に東博へ行こうという気持ちになれます。
前回の総合文化展には3回足を運びましたが、もちろん今回の展示も何度か行くつもりでいます。ブログを書きながら知識がまた少し増えたので、次に刀を観る日が楽しみです(^^)


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