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プロ野球選手にとってグラウンドに立てる幸せはとても大きい

コブ山田です。
ようこそいらっしゃいました。

今回は、プロ野球中日ドラゴンズ和田一浩コーチについて、記します。

2022年10月、中日の1軍打撃コーチとしての復帰が発表されたときは、うれしさの一方で個人的な懸念点があったのも事実です。
それは、和田が自身の選手時代、個性的なバッティングフォームで生き抜いてきた成功体験が凶と出ないかどうかです。

西武時代に和田一浩の打撃フォームを見たときは、私は思わず目をこすりました。
左足を大きく伸ばしたオープンスタンス。野球少年に模範とできるようなフォームではありません。外角投げられたら打てないだろと思っていました。
ところが、それが和田の身体にフィットしていたのでしょう。打率.300以上が当たり前。4番のアレックス・カブレラを敬遠しようにも5番の和田も打ってきます。最終年こそBクラスでしたが、伊東勤監督時代の西武の強さのひとつと言えます。

伊東が監督を退任したタイミングで和田もFA権を行使し、幼少期育った東海地方へ帰ってきたのでした。
中日時代には落合博満監督のもとオープンスタンスが小ぶりなものとなった時期もありましたが、特徴的な打撃フォームに変わりはありません。
打撃コーチを務めるにあたって選手が持っている能力を引き出すことが問題なくできるか…。この点を気にしていました。

後半戦に入り数試合経った2023年07月30日(日)時点で、打率.285、ホームラン13本、53打点という選手がいます。
細川成也です。

昨年まで横浜DeNAの06年間で123試合しか出場できなかったのを中日移籍後一瞬で更新できる勢いです。環境が変化した結果、大成功になっています。
球場の広さで言うと横浜スタジアムよりバンテリンドームナゴヤの方が広くホームランが出にくいです。それでも更新してしまっています。
2023年も最下位を争う中日の課題のひとつから打撃力がなくなることはありません。抑えのライデル・マルティネスが07月30日(日)現在も防御率0.00を継続している事実からも、先制点をとって逃げ切れる試合が増えていれば、勝ちも増えて順位も上位に浮上できるというものです。
そんな中で存在感を見せるバッターが細川。2023年前半のMVP打者と言っていいほどの大活躍です。
笠原祥太郎の放出はありましたが、細川は25歳。大卒社会人のスラッガーをドラフトで獲得し、すぐプロに適応できたようなものです。

その細川に関して、オールスターゲーム前に出たのがこの記事です。

やはり細川も怖いもの知らずということはなく、どうしても調子の波はあります。打てないとまたベンチ、2軍に落ちてしまう恐怖はあるものと思います。
そんな中で、和田が細川にこの言葉をかけたのでした。引用します。

「和田コーチには打てなくなった時期も、今までは試合に出たくても出られなくって苦しんでいたんだろ? 試合に出て悩めるなんて幸せなことじゃないかって声をかけてもらってました。その和田さんが活躍したのも30歳のシーズンからって聞きました。そこから2000安打ですもんね。本当にすごいと思います」

前向きになれるいい言葉だと感じたとともに、私は1つのエピソードを思い出しました。

2011年。前年中日は優勝し、その勢いを持続できるかと思っていた時です。
どうにもバッターの様子がおかしいのです。前年ホームラン39本打ちセ・リーグMVPを獲得した和田からホームランが出ません。和田だけでなく、森野将彦もホームランが減っています。

全体的な原因として、2011年・2012年は統一球と呼ばれるホームランが出にくいボールを使用しており、それによって全球団共通し軒並みバッターの成績が落ちました。例外なのは埼玉西武の中村剛也ぐらいと言っていいぐらいでした。
和田は前年とは別人のような打撃不振でした。最終的な成績は打率.232、ホームラン12本、54打点。納得できる成績ではありませんでした。

加えて、優勝を狙いに行く09月18日(日)、和田は2軍降格を経験します。

佳境と言っていい時期に、高年俸の主力選手が2軍落ちしたのです。和田不在の間、ナゴヤドームで首位東京ヤクルトを迎えるも勝ち越してチームは上向きになります。
和田の登録抹消は打撃不振が主因なのですが、その打撃不振の原因のひとつが視力低下でした。ヘッドコーチを務めていた森繁和『参謀』183ページにもその記述があります。

数秒でバットにボールを当てるアクションをするにあたり、視力は前提能力です。見えないと何にもなりません。視力矯正と調整を経てその後復帰しますが、大事な時期に試合に出たくても出れない経験をしていたのでした。

西武時代、ひとつしかないスタメンキャッチャーの座は伊東勤と中嶋聡に阻まれ試合に出たくても出れない。
中日時代、主力選手にステップアップできていたのになかなかバットに当てられず試合に出たくても出れない。
中日時代、主力選手にステップアップできていたのになかなかバットに当てられず試合は出ていても悩む悩む。

「試合に出て悩めるなんて幸せなことじゃないか」
という言葉は細川のために和田が紡ぎだした言葉ではなく、自身の経験から自然と出た言葉だったと私は感じました。

2023年現在の細川は、西武時代の和田と重なります。存在感を示すことができれば、主力選手の待遇に見合うパフォーマンスができず悩む日も来るかもしれません。
そんな時に、自身に大きな影響を与えてくれた和田コーチの存在を思い出して、そしてゆくゆくは後輩たちへも何らかの形で伝えていってもらえればと思います。

ありがとうございました。

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