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雲水晶



雲が、空一面に立ち込めている。

これを凝縮して、雲水晶を作れば、かなり金になると、女は考えた。
これを凝縮するのはかなり大変だろうが、ブラク・ホル殿に協力してもらおう。
「ブラク殿。あの浮かんでいる雲を、全てひとまとめにしてはいただけないでしょうか」
女は、指で卵くらいの円を作ってみせる。
「このくらいに」
ブラクは無言だ。
「お願いします、ブラク殿」
ようやく、ブラクが口を開いた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、・・・・!」
ああ、そうか、ブラク殿は空気の震えで会話する生き物ではないのだ。
すぐに女は、脳をテレパシーモードに切り替えた。
「お前はなぜそのような事をしようとするのだ、愚か者め!」
女は、またすぐに脳を通常モードに戻した。
これ以上、自分を叱る声を聞きたくないからだ。
どうしようかと女が考えていると、空の雲が全て消えた。
ばっとブラクの方を向くと、あろうことかブラクの手には、しっかりと雲水晶が握られていた。
しずく型のそれは、間近で見ると一層魅力的に見えた。

女が手を伸ばした先に、ブラクの姿はもうなかった。

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