影ができる方向に、もまも達はぞろぞろと歩いていきます。 いつでもそうです。彼らの行き先は、影だけです。 お天道が傾くにつれて、もまも達の行き先はずっと変わり続けます。 ぞろぞろ、ぞろぞろ、歩き続けている彼らも、夜が来た途端、みんな電池の切れた機械のようにぱたんぱたんと倒れます。 そして、影と光の間を彷徨う夢を見ます。 ずうっと、朝が来るまで。
オキドリは、ただの大きな鳥です。 本当に、ただの、大きな大きな鳥です。 本当ですよ、ただの、大きな大きな大きな鳥です。 大きい以外のアイデンティティなんて、なあんにもありません。 大きな大きな大きな大きな鳥。 辞典にも載っていません。 大きすぎて、誰もオキドリの存在に気づかないのです。 悲しいです。
エラにこびりつく大量の荒虫は、全て穏虫にしてやった。 穏虫になった荒虫は、自分が荒虫だったことなんて全く気づかずに、おだやかな足取りで自分の巣へと帰っていく。 でもそこの巣で待っているのは荒虫で、穏虫は仲間外れにされる。 穏やかにすすり泣く穏虫は、訳のわからぬまま穏虫仲間を増やしていく。 穏虫は、ドタバタとあらあらしい足音で行き交う荒虫に絆され、大抵、荒虫に成り下がる。 そしてまた、エラに群がってくるのだ・・・
浮巣には、それはそれはかわいい"ねころん"が住み着いているのであります。 ねころんは、時々ネコロンになったり、猫論になったりします。 浮巣は、それはそれは居心地の良い空間でして、ふわふわふわふわふわふわして、わふわふわふわふわふわふして幕を閉じるんでしょう! この全てが、"イラサブロー"から始まっているという神話は、この国では誰もが知っているお話。 読み聞かせをしてくれた"おばあちゃあん"は、なぜか全てが""なのです。 "こ"の"中"に"入"る"言"葉"を"募"集"
猫は歩いていた。 猫は真っ白で、肉球は四角形をしていた。 歩きにくくて仕方ないと、生まれた時から思っていたが、もう慣れた。 この猫は知っていた。 肉球が四角い猫が、世界に一匹しかいないということを。 ちなみに肉球が四角い虎も、肉球が四角い犬も、この世界に一匹ずつしかいないのだ。 道を、反対側からこちらに歩いてくる猫がいる。 自分とは真逆の黒猫で、毛はぱさついていた。 だが、足を前に出すたびにチラリと見える黒猫の肉球は、四角形だった。 反射的に、白猫は、横を通
魚なんて、所詮は鼻があちこちに刺さっただけの刺身だよ。 でも、その刺さった鼻を抜いてやれば、それはお前のおっかさんと同等だろ? うっ、確かに。
ぬめぬめ国は、予想通り、ぬめぬめしていた。 街を歩いていると、地面がぬめぬめしていて転びそうになるし、それぞれの家を囲む塀も、得体の知れない、黒光りするぬめぬめしたものに覆われている。 予想以上と言ってもいい。 その時、前方からカピバラに似た生物が疾走してきた。 僕は、やっとぬめぬめでないものに出会えると、横を通り過ぎていくカピバラの脇の下あたりの毛を無我夢中で掴んだ。 でも掴んだ毛はごっそり抜けて、カピバラは逃げていった。 僕はそのおかげですっ転んでしまった。
心の辺りに空いた穴は、塞がないとぼろぼろ崩れていってしまう。 それが、太陽のぬくもりや川のせせらぎで埋まるのなら、それで十分。 でも、崩れて崩れて食い止められなくて、やがて全てが崩れ落ちてしまったとしても、また、ひとつひとつ拾い集めて、くっつけ合わせば大丈夫。 それはきっと、前の自分より強くなってるから。
ひっそりと生まれたオクラの品種には、次のようなものがあります。 真っ赤オクラ 細長オクラ 土オクラ 〜真っ赤オクラのエピソード〜 辛いものが大好きで、世界中の辛いものを食べ尽くしている男がいた。 男には、辛いものの他にもう一つ、好きな食べ物があった。 オクラだ。 オクラが辛くなればいいのに、そう思わない日はなかった。 男はひたすら、オクラの苗に、水の代わりの唐辛子水を与え、肥料の代わりにキムチを混ぜ込み続けた。 やがて苗は大きくなり、真っ赤なオクラの実をたわわにつけ
猫の横顔というものは、いつ見ても透き通っているのです。 正面や横から見ても、普通の猫の顔です。 横から見た時だけ、水晶と同じかそのくらい、透き通って見えるのです。 透き通るからといって、溶けてしまったり、割れてしまうことはありません。 ただ、ずっと猫の横顔ばかり見つめていると、そのうち本当に透けて、消え去ってしまうので、気をつける必要があるでしょう。
落ちたリンゴは、きそっぽ菌の通学路をさえぎってしまうので、すぐに片付けなければなりません。 片付けても、また、リンゴが落ちて、また、きそっぽ菌の通学路をさえぎるようであれば、かまととが必要になるでしょう。 かまととの頂点には深い穴が空いていて、その穴を掘っていくと、解決策が見えてきます。 この場合は、どう考えても、「石の中で一番、野口英世の横顔に見えるものを探せ」なのは明確です。 そうとわかったら、八分以内に、川辺で野口英世を見つけなければなりません。 一秒でも遅れ
後方にもふもふの気配を感じて振り返ると、そこにはただ、ぎぞぎぞがいた。 あなた、ぎぞぎぞですね? そう問いかけるには、少しだけ、自分のパロメーターの残量が足りない。 そんなふうにして迷っているうちに、ぎぞぎぞはもふもふと化した。
さあ、火だるま対雪だるまの戦いが始まります。 ああ、早くも火だるまが雪だるまに覆い被さった! 雪だるまは溶けて蒸発・・いや・・ 合体! ふけだるまが誕生だ! ふけだるま、それは誰と戦うのか。 誰と闘おうとして、この世に生まれてきたのか。 そんなことは関係ない! ふけだるまは、ふけだるまと戦うんだ! おおっと!ふけだるまが分裂! 二人だ!ふけだるま、二人だ! 大丈夫ですか、気を確かに。 そんなことをいわれなくてもわかっているさ。ふけだるまは、ぼくだって。
ここは孵化したさつまいもが預けられた国だ。 おぎゃあおぎゃあ。 さつまいもは、孵化してはいけない存在なのに。 なぜ、孵化してしまったのだろう。かわいそうに。 そう思うなら、あなた、孵化したさつまいもの面倒を見てくれますか。 孵化してるんでしょ。孵化してるさつまいもって、あんまり美味しくないんだもの。 いやいや、孵化したピーマンの肉詰めは、おむつ替えが臭くてたまらないよ。 それに比べたらってもんさ。 孵化してないさつまいもの方に、僕は心血を注ぐよ。すまないね。 あ
ビリヤニというものは、細長い米粒を使った料理だと聞くけど、こんなにも細長いなんて知らなかったわ。 米粒をぐるりと首に巻きつけて弄びながら、娘は言った。 こら、米粒で遊んではダメだよ。 父親は、フォークで米をくるくると絡めとって口に運んだ。 本当は、本物のビリヤニを食べさせてやりたかった。 でもだめだ。 何年か前から、ビリヤニ米は日に日に細長くなっていってしまった。 最初は小指の爪ほどの長さしかなかった米は、まるで髪の毛が伸びるように、どんどん、どんどん・・ 今
ピモタンの体長を測ることができた者だけに、皇位継承権を与えよう。 三人の、似て似つかぬ一卵性双生児は、ピモタンを血眼になって探し始めた。 それは、もしかすると猿の穴のようなものかもしれないのだと思うと、血眼になった眼球が猿に占領されていく感覚に襲われた。 猿は、我々の敵だ。 ドードー鳥に育てられた父親にそう教えられてきたものだから、しょうがないではないか。 猿について考えると、頭の中の水分が全て目から溢れ出してしまうので、これ以上は考えないようにする。 まあ結局、ピ