見出し画像

【バスケ】小さいチームが勝つ戦術「5アウトモーションオフェンス」


はじめに

 これをお読みのあなたは、おそらくバスケットの指導者ではありませんか? しかも「どんなオフェンスを教えたら、うちのチームは試合に勝てるのか」と悩んでいることで しょう。そんなあなたに、本書を手にしてくださって、感謝しています。 わたしは今まで16年間、高校生の男子を教えてきました。毎年、試行錯誤の連続です。特に多い悩みは「大きい選手がいない」というものです。でも、考え抜いて、ついに良いオフェンスを作ることができました。それがこの「5アウトのモーションオフェンス」です。

・能力で勝てなければ、チームで勝てばいい
・個人で点が取れなければ、プレイで点を取ればいい

 わたしはそう考えています。本書で紹介するオフェンスは、高校生男子はもちろん、女子でも、中学生でも、ミニバスでも使える、シンプルですが効果的なオフェンスです。最大の特徴は「自分の得意プレイが発揮しやすい」ということです。選手が伸び伸びプレイすれば、試合の結果もついてきます。 もちろん、これを読んでくださっているあなたが、指導者ではなく現役の選手でも役立つ内容です。バスケットをより深く理解ができるようになり、プレイ向上のヒントがたくさんあります。 本書をぜひあなたのバスケットにお役立てください。


モーションオフェンスの特徴

このオフェンスは
・決められたセットプレーなし
・ピックアンドロールなし
という特徴があります。

 「決められたセットプレーがない」ということは、選手が自分の判断をしてプレイすることを重視します。ディフェンスを見て、状況判断するわけです。バスケ指導のよくある問題点として「教えたことばっかりやろうとしすぎて、ミスが増える」ということがなくなります。
 そして「ピックアンドロールなし」というのは、大きい選手がいないチームでもできるプレイを目指しているからです。ピックアンドロールが有効なプレイであることは間違いないのですが、ボールハンドラー、スクリーナー、シューターというはっきりしたポジション分けが前提のプレイでもあります。それを突き詰めるのも1つの方法ですが、たとえば中学3年間で「とにかくスクリーンをかけるのが君の仕事だ」と教わった子は、スクリーンすることしかできなくなります。シューターの子は立ち止まってプレイすることしか覚えないでしょう。今はどの年代、どのチームでもピックを多用していますが、育成という観点からいくと、ちょっと考えたほうがよさそうです。もっと言えば「ピックばかりで本当に選手はおもしろいのかな?」とわたしは思います。

 パターンなし、ホジション固定なし。でもこれだけで「さあ、自由にやってごらん」では難しすぎます。だから、次の6つを原則として教えてあげる必要があります。わたしがよく生徒にするたとえ話は「先生が教えることは木の幹だよ」です。この6原則が木(オフェンス)の幹となる考え方で、そこはチームとして共有します。そしてそこから伸びる枝や葉っぱ(個人のプレイ)は自由に伸ばすというイメージです。

6原則は次の通りです。
1)5アウトのスペーシング
2)ポジションレス
3)パスアンドカット(斜めのカット)
4)ドライブへの合わせ
5)バックドアを狙う
6)プレイメイカースポット(ショートコーナー)

順を追って説明し、最後に練習方法を紹介します。

1)5アウトのスペーシング

まず、5アウトのスペースに立ちます。

スライド2

 できるだけ広がった状態を作ってオフェンスを始めるのです。なぜこうするのかというと「インサイドに広いスペースができるから」です。普通のオフェンスは1人か2人、インサイドに立ってポジションを取ります。背が高く、体が強いセンターがここにいるなら良いのですが、そうでない 場合、はっきり言って邪魔になってしまいます。それであれば、5アウトに広がっておいた方が良いのです。5人が広がれば、ディフェンスも自然と広がるので、制限区域に誰もいなくなり、そこが攻めやすくなりますね。

スライド3

 バスケはゴールに近ければ近いほどシュートの確率が高まりますから、これは大事なことです。無意識のうちに、なんとなく立って邪魔にならないよう、まずは5 アウトのスペースを意識しましょう。

インアウトを作る

 5アウトでインサイドが攻めやすいことがわかれば、ディフェンスは当然それを守りに収縮します。こうなるとアウトサイドがノーマークになります。これを「インアウト」と良い、最も効率の 良いシュートチャンスの作り方です。

スライド4

 良いオフェンスはいかにして「インアウト」を作るかにかかっていると言っても良いくらい大事 なことです。インサイドをまず攻める、そしてディフェンスが収縮したらアウトサイドがノーマーク。ノーマークになったらアウトサイドはシュートする。単純ですが、このインアウトでディフェ ンスを揺さぶることが重要で、そのための出発点が5アウトだとお考えください。

ここから先は

9,583字 / 56画像

¥ 1,000

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?