【57】 プッシュ/プッシュ・バック
子どもの頃、宿題をやろうと思っていたところに、親から「早く宿題をやりなさい」と言われて、やる気がなくなったという経験はありませんか?
大人になってからは、仕事を押しつけられてやる気が削がれたり、セールスで商品を強く進められて、かえって買う気がなくなったりする経験をしたことがあるかもしれません。
これらの例に共通しているのは、「何かを押しつけられると、無意識がそのことに対して反発する」ということです。
このマインドの仕組みを、コーチングでは「プッシュ/プッシュ・バック (push/push-back)」と呼んでいます。
私たちには、外から押されると無意識に押し返す性質があるのです。
プッシュ/プッシュ・バックは、興味をもっていることや、やってみたいと思っていることに対しても働くため、注意が必要です。
プッシュ/プッシュ・バックの知識は、自分が他人に何かを勧めたり、行動を促すときにも、役に立ちます。
他人に何かを「させよう」とすると、相手の無意識は抵抗するため、かえって逆効果になります。
むしろ、押し付けないように提示する方が、相手に届くことも多いでしょう。
プッシュ/プッシュ・バックには、さらに重要な点があります。
それは、自分自身に何かを押しつけた場合も、プッシュ/プッシュ・バックの原理が働くということです。
「やらなければいけない」と思いながら物事に取り組んだり、自分自身を急かしたりすると、自分自身を「プッシュ」することになります。
すると、無意識はそのことに反発し、先延ばしといった形で抵抗を示します。
他人との関係の中だけでなく、自分自身との関係においても、プッシュ/プッシュ・バックが起こっていないかを意識にあげるようにしておくとよいでしょう。
ワーク
仕事やプライベートで他人から「プッシュ」されたと感じる場面はありますか?
また、自分自身に「プッシュ」していることはありませんか?
自分の体感を大切にしながら、観察してみましょう。