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コーチングの基礎

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ルー・タイスのコーチング・プリンシプルに基づいたマインド(脳と心)の仕組みと上手な使い方について説明しています。各記事には1つのテーマの解説と、それに対応するワークが含まれていま… もっと読む
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#ゴール設定

【3】 何が見たいものを決めているのか?

私たちはあることに注目すると、つまりロック・オンすると、それ以外のことがスコトマとなって認識できなくなります。 そして、私たちが無意識にロック・オンしているのは、「自分にとって重要なこと」です。 つまり、私たちは自分にとって重要なこと以外はスコトマとなって認識できていません。 では、「自分にとって重要なこと」を決めているのは何でしょうか? それは、情動記憶(emotional history)です。 情動記憶とは、過去の体験についての感情を伴った記憶のことです。 その感情が

【4】 重要なものだけが通り抜ける

私たちは、自分にとって重要なものだけを知覚しています。それ以外の情報はスコトマとなるため知覚できません。 「自分にとって重要なもの」とは、具体的には、自分にとって価値のあるものと危険なものです。 自分にとって価値のあるものと危険なものを知覚させ、それ以外の情報をスコトマにするメカニズムがRAS(Reticular Activating System)です。 RASは脳にあるフィルターシステムのようなものです。 RASのおかげで、私たちは自分にとって大切な情報を大量の情報のな

【31】 マインドの「仕組み」と「使い方」

ルー・タイスのコーチングの体系は、「マインドの仕組み」と「マインドの使い方」から構成されています。 なぜ、効果があり、再現性があるかというと、心理学、認知科学の知見に基づいたマインドの仕組みに従った方法論を採用しているからです。 コーチングを実践しているか否かにかかわらず、常に働いているマインドの仕組みに従っているため、無理なく自分の思考や行動を変化させていくことができます。 通常、私たちのマインドは現状維持をするように働いています。 これまでの記事では主に「マインドの仕組

【32】 理想を実現する方法

ルー・タイスのコーチング全体に通底していることをお伝えします。 ルー・タイスの方法論は、ゴール設定と、「自分はそのゴールを実現できる人間だ」というエフィカシーをあげることに集約されます。 これは、設定したゴールを実現したときの自分自身の姿や、そのときの自分が見ているはずの世界への臨場感を高めていくということです。 私たちの創造的無意識は、無意識の中で臨場感の高い世界を維持しようとします。 もし、目の前の現状と、無意識が「真実」だと思っている世界が違うときは、現状を無意識が

【33】 ゴール設定の3つのルール

今回から、より実践的なマインドの使い方について解説していきます。 この記事では、ゴール設定の仕方について概観します。 マインドの力を引き出すための原則として、ゴール設定には3つのルールがあります。 それは、 1. Want-toのゴールであること 2. 現状の外に設定すること 3. バランスよく設定すること の3点です。 それぞれのルールについて、簡単に説明していきます。 1つ目の「want-toのゴールである」とは、他人や社会に植え付けられたり思い込まされた

【34】 Want-toのゴールを設定する

ゴール設定の3つのルールから、「Want-toのゴールを設定する」ことについて説明します。 ゴールを設定する際は、他人や社会から強制されているようなゴールを設定しないようにする必要があります。 また、「これをやらなければならない」と自分で自分に押しつけるようなゴール設定も避けましょう。 「Have-to = 〜しなければならない」という強制は不安と緊張を生み、そこから逃げようとする創造的逃避が生じます。 「〜しなければならない」という動機づけの裏側には、「さもないと恐

【35】 「ゴールを設定しなくてはいけない」と思わない

コーチングを学び実践し始めたばかりで、ゴールを設定することにまだ慣れていないときに陥りがちな問題があります。 それは、「ゴールを設定しなくてはいけない」と思ってしまうことです。 前回の記事で扱ったように、「Have-to = 〜しなくてはいけない」と思うと、不安や緊張が生まれ、ゴールを設定すること自体を無意識に避けるようになってしまいます。 設定するゴールを「Want-to=〜したい」という気持ちに基づいたものにするのと同様に、ゴール設定という行為自体も「Want-to

【36】 ゴールは現状の外に設定する

コーチングにおけるゴール設定には「want-toのゴールを設定する」「現状の外に設定する」「バランスよく設定する」という3つのルールがあります。 今回は「現状の外に設定すること」について説明します。 ここでいう「現状」には、単に現在の状態だけでなく、現状の延長線上にある未来の状態も含まれます。 たとえば、スポーツで言えば、現在のレベルだけでなく、現在の練習を続けていればいずれ到達できるレベルも現状に含まれるということです。 会社でいえば、現在の年収やポジションだけでなく

【37】 ゼロを足す

現状の外に出るための方法としてルー・タイスが勧める方法の一つが、「ゼロを足す」ことです。 たとえば、いつものランチの値段が700円前後であれば、ゼロを一つ足して7000円のランチを食べることを考えます。 もしランチに7000円を使うとしたら、どんなお店でどんな料理を食べるでしょうか? 他にも服、趣味、年収など、それぞれの金額にゼロを一つ足したらどうなるでしょうか? 自分の生活がどのように変化するかを想像してみてください。 想像する際は、「一人称」「現在形」で想像します。

【38】 抽象度の高いゴールを設定する

ゴール設定における3つのルールのうちの1つとして、「ゴールは現状の外に設定する」というものがあります。 前回の記事では、現状の外にゴールを設定する方法として「ゼロを1つ足す」という方法を紹介しました。 今回は、より本質的に現状の外のゴールを設定する方法として、「抽象度の高いゴールを設定する」ことについて説明します。 抽象度(levels of abstraction)とは、もともと分析哲学の用語で、ある概念がどれくらい抽象的であるか、どれくらいの情報を潜在的に包摂している

【39】 現状の外のゴールがスコトマを外す

「自分が本当にやりたいことがわからない」という悩みは、現代ではとても多いように思います。 コーチングを学び、心からやりたいと思うwant-toのゴールを設定しようと思っても、何が本当にやりたいことなのかわからないという場合が少なくありません。 また、自分のやりたいことだと思って設定したゴールが、実は親や先生、社会に刷り込まれたものである場合もあります。 なぜ「自分のやりたいことがわからない」かというと、それがスコトマになって認識できなくなっているからです。 現在の自己イメ

【40】 ゴールはバランスよく設定する

数回にわたってゴール設定における3つのルールの中から「Want-toのゴールを設定すること」「ゴールは現状の外に設定すること」について見てきました。 今回は、3つ目のルールである「ゴールはバランスよく設定すること」について考えていきます。 私たちの多くは、子どもの頃から「目標を絞りなさい」「1つのことに集中しなさい」といったことをよく言われます。 その結果、自分が人生のなかで達成しようとする目標が「志望校に合格する」「いい会社に就職する」「組織のなかで結果を出す」といったこ

【41】 バランス・ホイール

前回は、ゴールをバランスよく設定することについて説明しました。 今回は、多方面にバランスよくゴールを設定をするためのツールであるバランス・ホイールについて説明していきます。 バランス・ホイールには様々な活用の仕方があるので、自分の使いやすいように工夫していくのがよいと思いますが、ここではベーシックな使い方を紹介します。 バランス・ホイールの作り方まず、紙やノートの真ん中に、下の図のような線を引きます。紙の大きさはA4程度の大きさがあると、書き込む文字が小さくなりすぎなくて良

【42】 幸福のバランスを考える

ゴール設定の3つのルールのうちの一つが「バランスをとること」です。 人生の多方面にゴールを設定しバランスをとることで、人生に調和がもたらされるとともに、創造的無意識のエネルギーとクリエイティビティを引き出しやすくなります。 ゴールのバランスには、もう一つ重要な軸があります。 それが、「幸福のバランス」です。 幸福には4つの段階があります。 第一段階の幸福は、基本的な幸福です。 これは食欲や性欲といった本能を満たす幸福です。 強烈で直接的な幸福感がありますが、一瞬で過ぎ去