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コーチングの基礎

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ルー・タイスのコーチング・プリンシプルに基づいたマインド(脳と心)の仕組みと上手な使い方について説明しています。各記事には1つのテーマの解説と、それに対応するワークが含まれていま… もっと読む
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2020年10月の記事一覧

【18】 思考のプロセス〜その3〜

マインドの3つの機能のうち、「意識」と「無意識」について解説してきました。 今回は、3つ目の機能「創造的無意識(creative subconscious)」について扱います。 創造的無意識とは、「問題解決、思考、概念化、アイデア、理論、独創的な力を導き出すために働く心的作用の源」のことです。 今までになかったアイデアや問題解決の方法を「ひらめく」ように働く部分といってもよいかもしれません。 創造的無意識は、私たちの「無意識」にあるリアリティと現実の世界が一致するよう

【19】 創造的無意識の働き〜秩序の維持〜

創造的無意識の機能のうちの1つは、マインドの「秩序を維持する」ことです。 ここで言う秩序とは、無意識の中の「リアリティ」と外の世界が一致している状態のことです。リアリティと実際の世界が一致している状態が、マインドの秩序が保たれてる状態です。 リアリティとは「個人が真実であるべきだと考えているすべてのことがら」のことです。「私はこういう人である」「これは価値のあるものだ」「これはやる意味のないことだ」「これはこういうものだ」といったあらゆる信念から構成されています。過去に認

【20】 創造的無意識の働き〜矛盾の解消〜

前回の記事に引き続き、創造的無意識の働きを詳しく見ていきます。 私たちの現在の状態は、無意識のリアリティや信念、自己イメージと実際の世界が一致した秩序ある状態を創造的無意識が維持しようとした結果、出来上がったものです。創造的無意識の働きによって、私たちは秩序ある状態を維持するような判断や行動を無意識にとっています。 では、実際の世界と無意識のリアリティが矛盾した状態、つまり秩序を失った状態にあるとき、創造的無意識はどのように働くのでしょうか? このような矛盾した状態のと

【21】 認知的不協和

創造的無意識は、「無意識にあるリアリティ」と「現状」が一致していないとき、「現状」をリアリティと一致させるように働きます。リアリティと実際の状態の矛盾を解消するような判断や行動を促します。 創造的無意識がもつ矛盾を解消する機能について、さらに詳しく見ていきます。 私たちが無意識に抱いているリアリティと実際の世界が一致していないとき、ストレスや緊張を感じます。 心理学者のレオン・フェスティンガーは、このストレスや緊張を「認知的不協和(cognitive dissonanc

【22】 創造的無意識の働き〜エネルギー、創造性、気づき〜

創造的無意識の働きのうち、「秩序の維持」「矛盾の解消」について見てきました。そして、前回はその背後にある認知的不協和のメカニズムについて解説しました。 今回は、創造的無意識の働きをまた別の側面から見ていきます。 創造的無意識は、リアリティや自己イメージより実際の世界の方が低いレベルにあるとき、実際の世界をリアリティに修正するために3つのものを放出します。 それが、エネルギー(energy)、創造性(creativity)、気づき(awareness)です。順番に見ていき

【23】 自己充足的予言

自己充足的予言(self-fulfilling prophecy)という言葉を聞いたことはありますか? 自己充足的予言とは、未来について予測あるいは予言をすると、その予測が実際に現実となってしまう現象のことです。 自己充足的予言について、コーチングの理論に基づいて具体的に考えてみたいと思います。 たとえば、「今日は良い日になる」と思って1日を過ごすと、様々な出来事のうち「悪いこと」にはスコトマができ、「良いこと」だけがRASを通り抜けて認識されます。 また、「今日は良

【24】 創造的無意識の働き〜テレオロジカル〜

ここまで数回にわたって、創造的無意識の4つの機能のうち「秩序の維持」「矛盾の解消」「エネルギーの創出」の3つを考察してきました。 今回は、創造的無意識の4つ目の機能である「テレオロジカル(teleological)」について考えていきます。 テレオロジカルとは、「目的論的」とも訳され、コーチングでは「目標に向かって進む」機能を意味しています。 ここでいう「目標」とは、無意識のリアリティ・自己イメージです。 自分が「これが現実だ」「自分はこういう人間だ」と信じている状態を目

【25】 人は慣れ親しんだものを求める

少し目を瞑って、次の質問の答えをいくつか思い浮かべてみてください。 あなたが落ち着いて自分らしく振る舞うことができる場所はどこですか? 逆に、もし足を踏み入れたら緊張してしまいそうな場所はどこですか? 思い浮かべることができたら、それぞれの場所の共通点を考えてみてください。 おそらく、落ち着いて自分らしく振る舞える場所は、慣れ親しんだ場所ではないでしょうか。 逆に、緊張しそうな場所は、行ったことがなかったり、自分が行きそうにない、あるいは場違いに感じるところではないで

【26】 自己イメージがコンフォート・ゾーンを決める

今回は、コンフォート・ゾーンについて、自己イメージや創造的無意識との関連から考えていきます。 私たちの創造的無意識は、無意識の自己イメージを維持するように認識や行動を制御しています。 「自分はこういう人間である」という自己イメージや「ものごとはこうあるべきだ」というリアリティを維持するように働いています。 もし現状が自己イメージから離れたら、創造的無意識は現状を自己イメージと一致させるように行動を促します。 ただし、現状は自己イメージと完璧に一致していなければならないわ

【27】 コンフォート・ゾーンの内と外

自分が慣れ親しんでいて、落ち着いていられる領域のことを、コンフォート・ゾーンと言います。 以前の記事でも、コンフォート・ゾーンの内側にいるときと外側に出たときの違いを解説しましたが、今回はより具体的に考えてみたいと思います。 コンフォート・ゾーンの内側にいるときは、リラックスして、いつも通り振る舞うことができます。 行動する際も、努力することなくフリー・フローの状態でいられます。 家の中で活動したり、仲の良い友人と馴染みの店で話しているときには、無理に頑張って何かをしてい

【28】 環境のコンフォート・ゾーン

前回の記事では、コンフォート・ゾーンの内側にいるときと外側にいるときの反応について考えました。 今回は、環境のコンフォート・ゾーン(environmental comfort zone)について考えていきます。 私たちのコンフォート・ゾーンは、自己イメージによって決められていることを以前の記事で紹介しました。 創造的無意識は「自己イメージ」と現実が一致するように働きますが、両者が一致していると判断される範囲をコンフォート・ゾーンと呼ぶからです。 自己イメージには、あらゆる

【29】 コンフォート・ゾーンと人間関係

前回は、環境のコンフォート・ゾーンについて扱いました。 今回は、その具体的な例として、人間関係についてコンフォート・ゾーンの観点から扱います。 私たちは環境と相互作用しながら、生きています。 外が暑ければ、汗をかくことで体温を下げようとします。 部屋にいれば、冷房をつけることで部屋の温度そのものを自分にとって快適な高さまで下げることもできます。 このように、人は環境から影響を受けつつ、環境に影響を及ぼすという双方向性をもちながら生きています。 そして、無意識に自分にとって快

【30】 コンフォート・ゾーンの外は見えない

私たちのマインドは、現在のコンフォート・ゾーンを維持するように働きます。 現状のコンフォート・ゾーンより高いレベルのパフォーマンスを発揮することはできないのです。 そのため、現状より高いパフォーマンスを発揮するには、コンフォート・ゾーンを現状の外へ、さらに外へと広げていく必要があります。 しかし、ここで一つ問題があります。 私たちはコンフォート・ゾーンを外側へ広げていこうにも、コンフォート・ゾーンの外側がスコトマになってよく認識できません。 私たちのコンフォート・ゾーンは

【31】 マインドの「仕組み」と「使い方」

ルー・タイスのコーチングの体系は、「マインドの仕組み」と「マインドの使い方」から構成されています。 なぜ、効果があり、再現性があるかというと、心理学、認知科学の知見に基づいたマインドの仕組みに従った方法論を採用しているからです。 コーチングを実践しているか否かにかかわらず、常に働いているマインドの仕組みに従っているため、無理なく自分の思考や行動を変化させていくことができます。 通常、私たちのマインドは現状維持をするように働いています。 これまでの記事では主に「マインドの仕組