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なりたい自分になるための無意識の使い方

無意識の働きについて、ひとつ、こんな場面を考えてみて欲しい。

『あなたの部屋には、お気に入りのひまわりの花の絵が壁に飾ってある。部屋に入るたびに、その絵が目に飛び込んでくる。ある日、部屋に入って絵を見ると、何かいつもと違う感じがする。よく見ると、右にほんの少しだけ傾いているようだ。本当に微妙な傾きなのだが、あなたは何か気持ち悪くて、その傾きをまっすぐに直さずにいられない。別に大した傾きではないので、絵を見る分にはまったく影響はないのだが、いつも見ている様子と違うし、絵は真っ直ぐに飾られているものという信念とそぐわないので、直さずにいられなかったのである。

しばらく経って、また少し絵が傾いている。今度はその傾いた絵を、しばらくそのままにして我慢してみる。すると、傾いた絵に自分の内側の感覚を合わせてしまい、傾いた絵に慣れて気にならなくなる。』

傾いた絵に対する対処法はふたつあるということだ。そして、どちらを選ぶかはあなた次第。

一つは、絵は真っ直ぐに飾られているものだという自分の内側にある基準に合わせて、傾いている絵を物理的に真っすぐに直す。もう一つは、傾いているという物理的な現実に自分の内側の感覚を合わせる。

自分の内と外の現実が合致しないことは、日常生活に山ほどある。それも、毎日毎日、幾つもある。自分が外に合わせるか、自分に合わせるよう外に働きかけるか、いずれにせよ、そうやって、いつもの生活を維持していると言える。どちらの選択肢を選ぶかは、あなたが何を欲するのかで決まる。

それなら、次のように考えられないだろうか?

いま自分自身に不満があって、もっとこうなりたいという気持ちがあったとする。でも、そうなるにはこんなことが出来ないとだめだとか、あんな人とも付き合わないといけないとか、いまの自分では能力的に無理だ、性格的にとても貫徹出来そうにないなどと思ってしまうことはよくある。

たとえば、あなたは今は会社員として携帯電話の部品を製造する会社に勤めているが、実は世界中を自転車で旅するYouTuberになりたいと思っていたとする。

でも、自転車には小さい時から乗っているので乗り方は知っていても、世界中を自転車で旅するにはどんな自転車を準備すればいいのか、どんな装備を積んでいけばいいのか全く分からない。それに、どのルートを通ればいいのか、危険な場所はないのか、自転車で通れない場所はどうやって通ればいいのかなどを考え出したら、とても実現可能だとは思えなくなってくる。さらにお金がいくらかかるのか、周りのみんなが賛成してくれるかどうかも心配だ。体力的にも、平地だけを走るわけではないので、山を越えられるのか、砂漠のような暑い乾燥地帯を無事走り抜けられるのかも心許ない。動画の撮影は、友人と旅行した時に思い出の記録に撮影したことがある程度で、YouYube向きの撮影の仕方や機材のことはよく分からない。自分が自転車で走っている時の動画は自分では撮れないし。。。会社員として働いて来たので、目標を立てればその実現に向けて計画を立てて実行するというのは、確かに得意なのかもしれないが、それほど根気のある性格でもないし、最後までやり遂げられるだろうか。

こんなことをグルグル考えて、結局、夢を諦めてしまったことはないだろうか?

でも、もしかしたら先ほどの絵の傾きの例のように、慣れてしまえばそれが当たり前になって、どうということではなかったと気づく程のことかも知れない。どんなに大きなチャレンジだったとしても。

ここで大事なのは、今までの居心地のいい場所にいた、いつもの自分では「理想的な私」にはなれないということである。そして、放っておくとあなたの無意識は「理想的な私」になるのを邪魔する。無意識は、いつものあなたに戻そうとするのだ。

でも、ここでとっておきの事をお伝えしよう。無意識は、「理想的な私」になるためにも働いてくれるのだ。それもとても強力に。ただし、まずあなた自身が「理想的な私」という行き先を意識的に選択しなければならない。

先ほどの絵の例で言えば、「傾いた絵」に向かうのか、「真っ直ぐな絵」に向かうのかは、あなたが選択することだ。無意識は向かう方向までは決めてくれない。決まった行き先へ向かっていくのをサポートしてくれるだけだ。

「理想的な私」という行き先を決めたなら、まずはその「理想的な私」というのをどんどん頭の中で具体的に想像してみよう。そして、実際に「理想的な私」として過ごしている自分とその環境を十分に五感で味わってみよう。その時、どんな態度や判断が身に付いているかも同時に想像し体感してみよう。

そして「理想的な私」を本当にリアルに感じることが出来ていれば、あとは無意識が「理想的な私」を行き先として認識して、そちらに連れて行ってくれる。

人間というのは不思議なもので、そういう想像上の未来の自分を、頭の中で作り上げることができる。小学校の時に「将来、どんな人になりたい?どんな職業につきたい?」と聞かれた時、自分の限られた知識とテレビなどのメディアを通じて見た映像の記憶を駆使して、未来の自分を存分に想像したことがあるのではないだろうか?しかも、実際に未来の自分になった気になって、はしゃいだ記憶がないだろうか?

当然、同じことを大人になってからもできる。

ただ大人の場合は、「そんなこと言ったって、無理に決まっている」などという先入観が邪魔をしたり、もしくは、大人の世界を知りすぎて複雑に考えてしまって、余計に想像しにくいということがあるかも知れない。そういう想像するプロセス上のテクニカルな困難は多々あるだろうが、子供より複雑な思考ができる分、精緻な未来像を頭の中で構築して、リアルに感じるということが可能なはずだ。難しいと感じる人も、練習しだいで出来るようになると思う。

さて、ここまで来たら、あとは無意識がサポートしてくれる。

もうあなたにとっては、「理想的な私」の方がよりリアルに感じているのである。「理想的な私」でないと気持ち悪いくらいに。でも、今この瞬間に客観的に見たあなたは、これまでのままで変わっていない。そこで、あなたの頭の中は大混乱になる。「あれっ、おかしいな。理想的な本来の私からズレてるぞ!」と無意識が気づく。

あなたが意識しなくても、無意識はちゃんと分かっていて、そのギャップを埋めるよう働いてくれる。「理想の私」と矛盾するようなことがあれば、それを解決するようにアイディアを思いついたり、解決策を考えたりしてくれるのだ。ついでに「理想的な私」に向かっていくためのエネルギーも自然と湧いてくる。

どうだろう。意識して頑張って「理想的な私」になるというのとはかなり違うことに気付いただろうか。無意識を活用するというのは、こういう意味である。

そう簡単にはいかないかも知れないが、よく知って練習すれば無意識を使いこなせるようになる。そして、どんどんなりたい自分に近づいていって欲しい。


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