交流会での自己紹介で

プロフェッショナル・コーチという職業の私でも、たまにビジネス交流会に参加します。

興味のあるテーマであったり、SNSでよくお見かけする人が参加予定だったりするとつい参加したくなります。

そして初めてお会いする方には自己紹介させて頂くのですが、その中でどうしても私が提供している苫米地式コーチンングについて説明することになります。

基本的にいつも同じような説明なのですが、相手の方がどのような立場なのかによって、多少、意識して話すポイントが違ってきます。

苫米地式コーチングについて説明する時のポイントは、クライアントが（１）現状の外側にゴールを設定する、（２）エフィカシーを高く維持する、のをコーチが支援することです。とても説明自体はシンプルなのですが、私が「現状の外側」と言った時に、相手の方がどのように感じるのかがとても気になります。

ビジネス交流会でお会いする人は、ご自身でビジネスをされている経営者の方か、会社に勤める会社員の方がほとんどです。

せっかく説明するなら、コーチングに興味を持って欲しいと思っているので、出来るだけ相手の方の状況に合わせて、刺さる説明になるようにあれこれ考えながら短い時間で話します。

経営者の方の場合、その人の職業ゴールは、たぶん今経営しているビジネスに深く関わることでしょう。別に今とは全く違う職業のゴールがあっても良いですが、ここでは今のビジネスを継続するとして話を進めます。

では、その上で「現状の外側のゴール」と言った場合、どんな職業ゴールが想像できるでしょうか？

「現状の外なのだから、今はまだ手がけていないビジネスの領域に進出すること？？」と発想しがちです。

もちろん、そういう現状の外側もあるでしょう。でも手がける領域が違っても、今いる社員と似たような人材とこれまでと同じような経営の仕方であれば、実は現状の内側かも知れません。

次にこんな風にも考えられます。抽象度を上げて今手がけているビジネスを再考してみるのです。少し分かりやすく言い換えると、より利他に意識を向けてビジネスを考え直してみるのです。

多分、どんなビジネスにおいても売る人・買う人以外に、従業員や地域住民、株主や行政担当者、その他のステークホルダーがいて初めて成立しています。そして経営上の計数管理として売り上げや利益、給料や報酬といった金銭的なものを見る以外にも、考慮に入れても良い要素がたくさんあるはずです。

会社の規則や運用が必ずしも働く人にとって良いものになっていないかも知れません。もしかしたら取引先にとって、非常に不利な条件の契約を押し付けてしまっているかも知れません。事務所や工場がある地域に対して、大きな負担や不利益を強いていることがあるかも知れません。従業員の家族に対して、必要以上に心配をかけている事があるかも知れません。

それらのことを含めて目指したい職業のゴールを探したら、きっと現状の外側にゴールが見つかると思います。

自分だけ、もしくは自分達だけがもっと得をするというのは、あまりにも狭い自分たちの世界を維持、拡大していく事でしかありません。しかもこれは現状を強化する事でしかないのです。

まさかここまでの話を初対面での自己紹介の時には話せません。けれども、頭の中ではこんなことを思い浮かべながら、その時、1分あるかないかの時間の中で言葉を選んで話します。

さて、もう一つのタイプである、会社員の方の場合だとどうなるでしょうか？

会社員の方の場合は、「現状の外側」が今お勤めの会社から離れることだったりします。会社に勤めると言うことは、自分が決めたルールではなく、会社が決めたルールに自分が合わせていかなければなりません。会社にとっての現状というのが先にあって、それに自分を合わせていくということです。

その時、自分のコンフォートゾーンの中で仕事に関わる部分だけを合わせていくだけならまだいいのですが、そうならないことがあります。

自分の職業ゴールだけではなく、その他の、例えば家族や健康、趣味や生涯学習といった領域のゴールにも、会社が想像以上に影響してくることがあります。

そして諸々のことが窮屈になって来たところで「現状の外側」のゴールを探し始めると、転職ということも起こり得るわけです。

だから、私がコーチングについて説明する時、「現状の外側のゴール」と言った時の反応を見ると、今の職場に対して満足しているのか、抜け出したいと思っているのかをなんとなく察することができたりするのです。

「現状の外側」と言うと何か新天地を思わせるような響きがあって、簡単に行けるなら行きたいと思われがちなのですが、実は現状の外側のゴールを見つけるのも、そこに行くのも結構大変です。大変なのだけれど、そのゴールは人に止められても行きたくて仕方がない場所として設定するから、喜んで行ってしまうのです。

自己紹介の場面で相手の方に、「現状維持でいいのか、それとも現状を打破して現状の外側に行きたいのですか？」とお聞きするわけではもちろんないのですが、頭の中ではそんなことを実は考えているのです。

経営者の方であれ、会社員の方であれ、コーチングを必要としている方にきちんとメッセージが届くようにと、これからも気をつけて自己紹介したいと思っています。

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