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コーチはマルチステージの人生をサポートする

“いまグローバルな規模で私たちの働き方が大きく変わりつつある。”
(「リデザイン・ワーク 新しい働き方」リンダ・グラットン著)

コロナ禍の前から徐々に働き方が変わりつつあるような感覚はあったが、世界規模でコロナ禍を同時に体験した結果、個人と組織のいずれもが、働く場所、働く人同士の関係性、仕事とそれ以外の活動(子育てなど家庭生活、生涯学習や地域での活動等)とのバランスなどについて、根本的に再考を迫られたのではないかと思う。

それに加え、先進国では人生100年と言われるようになり、これまで60才くらいになると定年を迎えるというのが一般的であったが、それがマルチステージの人生へと変化しつつあるという。

昔は幼稚園もしくは小学校から大学や大学院まで教育を受け、その後にフルタイムの仕事につき、定年の60才前後まで働き続ける。そして、定年後はそれまでの蓄えをもとにして孫の世話でもしながら引退生活を送るというのが一般的であった。

それが、人によって辿る道筋は異なるが、長い人生の中で、学ぶ、働く、休むというそれぞれの時期を行ったり来たりしながら、生涯かけて成長していく、そんな風に変化しているというのだ。

一人ひとりの置かれた条件はさまざまだが、その中で本人の心からやりたいこと、すなわちコーチングでいうところのゴールに向かって人生のマルチステージを歩んでいくというイメージは、とてもワクワクするし、一人ひとりが輝いて生きている感じもする。

マルチステージということは、仕事を通じて高い報酬を得たいとか、昇格したいとかという職業上のゴールだけではなく、職業以外の興味のある分野を学んでみたいとか、一時期は家庭重視で子育てに専念したいとか、お金にはならないけれど社会的に意味のある社会貢献活動に注力したいといった人生を構成するさまざまな領域に、明確なゴールを持つ人が想定されているということである。

いま思うと、学び→仕事→引退の3ステージの人生というのは、とても窮屈な考え方だった。人生というのはそういうものだと思い込んでいたが、テクノロジーが進化したおかげもあって、随分と人々の考え方が柔軟になり(ならざるを得ず)、人生の捉え方も変化した。

経済の世界でさえ、いまや大企業が職業以外の複数のゴールを持つ個人を想定していて、そういう個人を尊重する姿勢を見せつつあるというのも驚きだ。

そんな世の中になった今だからこそ、コーチには大事な役目がある。

ひとつには、まだ職業のゴールばかりを注視していて複数のゴールを見つけられていない人のサポートをすること。

もう一つは、複数のゴールを持った人が、その一つひとつのゴールを達成していけるのだという自信を支えてあげることだ。コーチングでいうと、エフィカシーをあげるということだ。

マルチステージの人生になり、個人も組織もその活動に対するマネジメントは複雑になっていく。すなわち、個人で言えば、どのようにマルチステージを歩んでいくのかという人生のマネジメント、組織でいえば、一人ひとり違ったマルチステージを持つ大勢の人が働く組織のマネジメントである。

特に組織のマネジメントでは、リンダ・グラットン氏が言うように、基礎的な人間的スキルを持った人が重要な役割を果たすだろう。基礎的な人間的スキルとは、「聞く力、コミュニケーション能力、相手の身になって考える能力、判断力、意思決定能力など」である。
これは、コーチが得意とする能力だ。

ということは、よりたくさんの人がマルチステージの人生を歩んでいくと、もっとたくさんのコーチが必要とされるに違いない。

その時にきちんと役割を果たせるよう、万全の準備をしておこう。


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