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「現実とかけ離れている?」ケアの難しさを知る学生からみた、マスメディア|保育を学ぶ白梅学園大学でコマロンの授業⑤

昨年、コマロンにご協力いただいている白梅学園大学(東京都小平市)での田中真衣先生の授業(地域福祉)で、ゲストスピーカーとして講義をさせていただきました。白梅学園大学では、保育士・幼稚園の先生、小中学校、特別支援学校の教員などを目指す学生さんが多く学んでいます。今回も、授業後に学生さんに書いていただいた感想文を織り交ぜつつ、授業から見えてきたことをお伝えします。(最終回)

子育ての日常を伝えたい――。そんな思いで、新聞記者である私は、コマロンを立ち上げました。それに対し、こんな感想を書いて下さった学生さんがいます。

(私は)年の離れた弟がいる学生です。私も「メディアと現実はかけ離れている」と思います。

今まで子どもに関する本や記事を読んできましたが、そのほとんどが「親がするもの」ばかり。「お兄ちゃん」がやることについて書かれているものはありませんでした。また、本や記事が取り上げている子ども(の様子)が弟に当てはまることなんてなかった。

今回の授業の前に、コマロンの記事を読んだのですが、私はコマロンの日常の一場面を切り取った記事が好きです。

そして、私が学生の皆さんに伝えたかったことを、私以上に分かりやすく表現してくれていました。(ありがとう!)

記事を書く力は、保育者など、対人援助職の発信力を大きく上げるものだと思います。援助をする人の発信力の向上は、「援助」を多くの人に広げることにつながります。今日の授業の内容は、とても役に立つ、宝のような物だと思いました。(注*うれしいので原文のままご紹介します)

このほかにも、学生の皆さんがコマロンへの応援メッセージや、コマロンのありかたを端的に表す文章をたくさん寄せてくれましたので、一部をご紹介します。保育を専門的に学ぶ学生さんならではの表現も多く、とても勉強になりました。ありがとうございました。

保育者の主観的な考え方から子育てははじまるため、自身の思いや考えが非常に大切だと感じた。子どもへの関わり方、過ごし方は、子どもによってさまざまであり、一人一人の個性を尊重していくことが求められると感じた。

コマロンの記事は、さまざまな人の視点から日常を見つめ直すものであると感じました。誰かの視点を通じて自分と違う意見、考え方に触れることができます。ささいな出来事を記事にすることで、さまざまな人の気持ちや悩みに寄り添ったメディアになっているのではないかと思いました。

子育て中に孤独を感じるのはつらいことであり、そういった気持ちを持った人が自分の他にもいることをメディアで知り、安心感をもらうことは重要だと思います。

私は、母になってはじめて、ケアにまつわる、情緒的な人との関わりや複雑さ、しんどさ、予定の立てられなさ、ふと訪れる喜びを体感しました。

でも、白梅学園大学の学生さんは、社会人になる前から、ケアの複雑さを、体感している。すごいことです。

ちなみに、私が産後(育休中)に感じたことを羅列してみると、こんな感じでした。※私は、体力がなく、子育てにまつわる感情労働にやられるタイプなのに、新聞記者を続けている人間です。

・子育てって、こんなに擦り減るの?私、すぐ乳腺炎になって発熱して寝込むから、早々仕事復帰するのはしんどい・・・物忘れもひどくて、新聞読むと、目がしょぼしょぼする。でも復帰する時期を、産前に会社に言ってしまったなあ。どうしよう。
・なんで、この(メディアに出ている)お母さん、産後すぐ出張しつつ働いているのに、こんなに健康的でキラキラしているんだろう・・・。子ども連れて出張なんて、私と我が子は絶対無理・・・。
・自治体が「待機児童数減少」って自信満々に発表しているし、メディアも伝えているけれど、家の近くの認可保育所には入れなさそうだなあ・・・。 空いている認可外園、見学したらちょっと環境面で不安・・・私も待機児童に関する新聞記事、書いてきたけど・・・今の私には全然参考にならない。(と思い、ネット検索を続ける)
・育児書通りに離乳食あげているのに、我が子、離乳食全然食べないよ。
・夜、子どもって全然寝ない!!!寝かしつけたあと、仕事できない!!!私も夜は寝ないと、体が持たない!!!でも・・・我が子はかわいい。

ケア労働の「実感」は、それぞれ違います。そして、「実感」を持った人たちは、発信する余裕がなかったりします。日々のことで忙しいから。

だけど、実感を持つ人たちが、少しずつ、自分のペースで、フラットに発信する。知らない人を責めるのではなく、こちらの世界から見える景色をゆっくり伝えていく。コマロンでは、これからも、そんな場でありたいです。

【まとめ】山内真弓。小学生と保育園児の母。元転勤族で、茨城、仙台、千葉、東京で子育て。コマロンをはじめた毎日新聞記者です。

※学生さんの感想は許可をいただいて掲載しています