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JABA北海道結成記念大会 決勝 日本製鉄室蘭シャークス対JR北海道

2020年8月18日に行われた決勝戦、日本製鉄室蘭シャークス対JR北海道硬式野球クラブの観戦記です。

大会の概要は、こちらの記事をご参照ください

昨年の都市対抗野球・社会人野球日本選手権双方で代表権を獲得した日本製鉄室蘭シャークスと、王者復権を狙うJR北海道
この二者の激突は、決勝に相応しい投手戦となりました。

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スターティングメンバー

先攻 日本製鉄室蘭シャークス
(中)小林 (遊)井上 (三)大石 (一)小屋畑 (捕)田畑 (二)青木 (右)飯田 (指)永森 (左)前田 (投)岩﨑

後攻 JR北海道
(中)水木 (二)冨田 (右)丹澤 (指)松浦 (一)福田 (三)嶋田 (遊)西山 (捕)今西 (左)小林 (投)夏井

バッテリー

日本製鉄室蘭シャークス
岩﨑(7回1/3),佐藤(1/3),今崎(1/3)-田畑(7回2/3),佐々木(1/3)

JR北海道
夏井(7回),伊藤(2回)-今西(7回),井内(2回)

試合経過

JR北海道・夏井康吉投手(東北高-富士大)、日本製鉄室蘭シャークス・ 岩﨑巧投手(前橋商業高-法政大)の投手戦となった決勝戦。

立ち上がりはJR夏井投手のほうが不安定に思えました。
1回表に室蘭シャークスは一死1,2塁の好機で4番・小屋畑尚哉選手(室蘭大谷高-道都大)を迎えますが、セカンドライナー併殺で得点ならず。
一方の室蘭シャークス岩﨑投手は、3回まで死球1つのみで一巡目を抑えます。

先制したのは室蘭シャークス。
4回表、大石悠介選手(駒大苫小牧高-関東学院大)、小屋畑選手の連打でチャンスを作り、田畑瑛仁選手(浦和学院高-中央大)の当たりはセンターヒット、これをセンターが後逸する間に大石選手が生還し先制。
なおも無死1,3塁の好機でしたが、後続がファウルフライ、スクイズ失敗、三振と続かず得点は1点にとどまります。

先制されて火がついたか二巡目になり対応したか、その裏からJR打線が岩﨑投手を捉え始めます。
4回裏には冨田勇輝選手(東海大四-八戸学院大)のヒットを足がかりに3塁へ走者を進めますが無得点。
5回裏は先頭・西山裕貴選手(国士舘高-東北福祉大)が左中間へ2ベースを放ち、続く今西直輝選手(神戸国際大附-東北福祉大)もセンター返しで続き無死2,3塁の絶好機をお膳立て。しかし、後続がファースト正面ゴロ、スクイズ失敗、セカンドゴロに倒れ、夏井投手を援護できません。

夏井投手は尻上がりによくなり、5回6回を三者凡退に抑え、7回に二死から連打を浴びるも追加点を与えず、7回1失点としっかり先発の役目を果たしました。

一方の岩﨑投手も、整備を挟んで落ち着きを取り戻したのですが、8回に捕まります。
8回裏JRの攻撃は1番・水木海斗選手(青森山田高-國學院大)から。彼がセンターヒットで出塁し、冨田選手が送ると、ベテラン丹澤賢選手(甲府工業-国士舘)の打球はセカンドのエラーを誘い一死1,3塁のチャンスに。
最高潮に盛り上がるJRベンチ。

室蘭シャークスはここで岩﨑投手から佐藤峻一投手(北見柏陽高-道都大-オリックス)に交代。
JRの4番・松浦昌平選手(札幌第一高-筑波大)が三振し2アウト。
続く福田涼太選手(東海大四-東海大北海道)の打席で佐藤投手が暴投し三塁走者が生還して同点。福田選手はバッテリーの動揺を見逃さずセンターへ勝ち越し打を放ちます。
更に死球を挟んで西山選手がライトへの2ベースで追加点。

3点目を奪われ、室蘭シャークスは今崎淳次郎投手(駒大苫小牧高-関東学院大)、佐々木大樹捕手(花巻東-東海大)のバッテリーにチェンジして後続を断ったものの、8回から登板したJR伊藤宏太投手(岩見沢東高-北翔大)の前に打線が奮わず。

8回裏に逆転したJR北海道が3-1で決勝戦を制し、この大会4年ぶりの優勝を果たしました。

大会結果・個人表彰

優勝:JR北海道硬式野球クラブ
準優勝:日本製鉄室蘭シャークス
最高殊勲選手賞:福田 涼太 選手(JR北海道)
敢闘選手賞:岩崎 巧 投手(日本製鉄室蘭シャークス)
首位打者賞:嶋田 源太郎 選手(JR北海道)
12打席8打数5安打 打率.625

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そらそうよ

(我慢比べは)そら(先にミスしたほうが)そう(やられる)、と思う試合でした。まして試合巧者のJR北海道。

JR北海道はメンバーが大きく入れ替わった今季、投打がしっかり噛み合って好調を維持しています。
投手では伊藤投手の本領発揮に加えて、怪我を克服した夏井投手が先発を全うできるようになったのは大きな安心材料。

野手はルーキーと2年目の選手の活躍が光ります。上がごっそりいなくなったのでそらそうよ、なのですけども。
決勝スタメンに名を連ねた水木選手・冨田選手(新人)、福田選手・西山選手・今西選手(2年目)が攻守で活躍し、そして脇を固めるベテランがはちゃめちゃに打つ。嶋田選手はこの大会に限らず今季ずっと好調で、都市対抗予選でもキーマンになることでしょう。

大会MVPって優勝チームの先発投手か殊勲打の選手に送られることが多くて、この試合では勝ち越し打を決めた福田投手が受賞したのですが、個人的には西山選手を選びたい。
ダメ押しの2ベースを含む猛打賞、そして守備での貢献が素晴らしく、何度唸らされたことか。惜しみない賛辞を贈ります。

シャークス推しとしては、本当によい投手戦だったので、それだけに、岩﨑投手の好投が優勝に繋がらなかったことはつらく、悔しい。
逆転を許してしまった佐藤投手はこの1ヶ月ほど登板を回避しており、おそらくは調整途上。とはいえ、バッテリーごと替えられた若き田畑捕手にとっては、試練の一戦となったことでしょう。

また、プレオープンマッチに引き続きJR伊藤投手を打てなかったことは、相手に自信を与えることとなり、野手にとっては悔しかっただろうと思います。

どんなに好調でも、良いプレーを重ねても、紙一重で勝ちは逃げていき、勝敗は覆らない。その痛みを思い出す試合になりました。
苦い結果が報われるべきときは、この先にある。
来る都市対抗予選で、全員が十全の力を発揮できるよう願っています。

応援できないつらさ

結成記念大会は一般客の観戦が可能でしたが、JABA公式大会ガイドラインによってその行動には制限があり、大声を出して声援を送る、応援歌を歌うといった「応援行為」ができません。

プレオープンマッチのときにはそれほど意識しなかったのですが、この決勝のような手に汗握る鍔迫り合いになると、声を出したくなります。
あやしい一般人の声なんぞがグラウンドの選手に届いているかはさておき、ただじっと見守るなんてできやしない。

それでも、意図的に大声を出す行為は、飛沫感染防止を鑑みれば避けるべきですからぐっと飲み込む。あとは拍手ぐらいしかできない。
勝っているうちはそれでもいいのです。
8裏の被逆転、9回の三凡。頑張れ!の一言も発せられないことは、なんてもどかしいんだろうと歯ぎしりしました。

これから始まる都市対抗予選も、応援はありません。
応援団はもとより、各地から駆けつける熱心な応援者の方々も、会社の指示で、あるいは自己判断で、今年は自重せざるを得ないかもしれない。
一年で最も苛烈な大会の中、私たちは喉から出かかっている声を出すことが、できない。

では誰がその思いを形にして、選手を鼓舞できるか?
……それはベンチなのだと。

スタンドで静かに見守る人、遠くから祈る人、誰もが抱く「全力を出し切れますように、彼らが望む幸せに手が届きますように」その思いを、私はベンチに託します。どうか声にしてほしい。

ヤジや煽り以上に(私はこれをダメだとは思いません)味方を励まし讃える声でベンチが賑やかであってほしいし、推しにはどのチームよりも明るい雰囲気で戦ってほしい。
応援のない異常な年に、そう願うのでした。

本記事の写真はみつる(@k_mitsuru_n)さんからご提供いただき、承諾を得て加工しています。いつもありがとうございます!

JABA北海道社会人野球結成記念大会のまとめはこちら

他の観戦記はこちら(順不同でぼちぼち追加します)
1回戦 北海道ガス 対 TRANSYS

社会人野球観戦ガイドはこちら