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「2位の人」-10/18/23

小学校時代、好きな女の子がいた

二重の丸い目、ぷにっとした頬、ほんの少しだけ横に広がった鼻、白い肌、長い髪を結んだお下げ髪、学年一人だけの黄土色のランドセル

小学3年生で同じクラスメイトとして仲良くしていたとき、ふと「かわいいなあ」と思ってしまったあの瞬間からずっと、その子の事を考えるようになった

その子はいつも砂場で女の子の友達とおしゃべりしながら遊んでいたので、気を引きたくて、ドッジボールを抜けがけし砂場でウロウロする

「なに、それ、へたくそ~」

どうやって話しかけたら良いのかわからないため、私はしばしばいじわるを糸口として関係をはじめた

『は!うるさい!』
「おれのほうがうまいなー」
『じゃあやってみてよ』
「ほら、こんなもんでしょ」
『へたじゃん!』
「うるさいなー」
『しょうがないなあ、おしえてあげるよ』

しょうがないなあ、というフレーズを彼女はよく使っていた
その言葉を私はいつも待っていた
私の狙いが成功したことを示す言葉だったから

超好きだった

体育の授業中、座りながら先生の話を聞くように言われると、なぜか隣にぴったり座ってきたときの、接面の熱を今でも覚えている

2人の天邪鬼として、ずっとじゃれあっていたいと願いながら過ごしていたある日、教室に残っている彼女に会いに行った際、こう言われた

『あっ、2位の人だ』

2位

「2位?」


『そう、男の子の中で2位』
「1位は?」
『るいと。で、グランプリは、りょうたかな』

いつも通りの無邪気な彼女で、こう言ってきた
ただ私にはそれがいじわるではない、事実であることがわかった

と、同時に、
僕の狙いが、全くの的外れだったということに気がついた
もう、とっくに後戻りできないことも理解していたので、

「は?うるさ!もっと順位上げろよ」

そう言ったが、もう彼女がしょうがないなあ、と言ってくれることはこの先なかったと記憶している



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