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相互扶助の新しい仕組みを “プロダクト化”してみた|CNCの経営戦略①

みなさんこんにちは、株式会社CNC代表の矢田明子です。
CNCは島根県の出雲圏域を拠点に活動する、2017年設立の会社です。

CNCとはCommunity Nurse Company(コミュニティナース・カンパニー)を略したものですが、「コミュニティナースって何?」と、頭にはてなマークが浮かんでいる人も多いと思います。

そこでこの記事では、コミュニティナースの実践内容や私たちCNCが目指すもの、そしてビジネスモデルについてお話しします。

読み終わるころには「コミュニティナースのビジネスモデルはおもしろい」、そして「うちの地域にもコミュニティナースが広がっていったらいいな」と思ってもらえたら嬉しいです。


コミュニティナースって何?

コミュニティナースとは、「コミュニティナーシング」という看護の実践にヒントを得て、CNCが提唱してきたコンセプトです。「人とつながり、まちを元気にする」を目指して活動しています。

コミュニティナーシングという言葉に明確な定義はなく、国や地域によって、そのあり方はさまざまです。

おそらくこの言葉を聞いて、看護師をイメージする方もいらっしゃるかもしれません。もちろん看護師のメンバーも多いのですが、私たちが考えるコミュニティナース,コミュニティナーシングは、何か特定の資格が必要なものではなく、もっと広い概念です。

コミュニティナースは、コミュニティナーシングを実践しようとする態度やあり方、つまり「生き方」であるともいえます。

どういうことでしょうか。

一般に、看護サービスを受けるには病院に行きますよね。裏を返せば、病院に行って初めて、看護師と会えます。病気になって初めてわかりやすく、治療を補助する形での看護に出会うのです。

でも、その前の「まちで暮らしている」段階でケアが実践されれば、病気や要介護にならずに済むのではないか?という発想が起点になっています。

よく「保健師とどう違うの?」と言われますが、コミュニティナースは保健師よりももっと、まちの生活に溶け込んだ態度やあり方です。

具体的には、コミュニティナースとして活動するメンバーが、暮らしのそばで地域の方々の一人ひとりと顔の見える関係性を築き、活動拠点で交流したり、住居を訪れたりする。

そして住民同士のつながりを深め、結果的に互いに助け合うコミュニティを広げていく。

そうすることで、結果的に育児や介護の負荷を減らしたり、孤立状態を和らげたり、病気の進行を未然に防ぐ。そうした一連のプロセスを通して、地域の方々の力になるというものです。

私がこの活動を始めようと思ったきっかけは、最愛の父の死でした。父の身体にがんが見つかったときにはかなり進行しており、亡くなるまでわずか5ヵ月でした。

「もっと日々の暮らしの中で、不調のサインを察知することができていれば」

父の死を経験して、私はこんな思いを抱いたのです。

27歳で看護大学を受験。入学と同時に、仲間とコミュニティナースの原型となる活動を始めました。

このあたりの詳しい経緯は、著書『コミュニティナース』からご覧いただけます。

具体的な実践事例

この説明だけでは、まだ漠然としていますよね?

では、コミュニティナースが実際の現場でどんなことをしているかを紹介します。

まずコミュニティナースは、「その地域の方々、全員のことを知る」という目標を設定しています。その範囲は、活動場所によっても異なりますが、おおよそ5人のコミュニティナースで数千人ぐらいの人口を想定しています(例外もあります)。

そのための方法として、最初にみんなと接点がつくれる「場づくり」を行うことが多いです。雲南では、古民家を改装して活動拠点にしていますし、地域の郵便局とも、人が集まる場として連携しています。

でも、こうした場にやってくる人ばかりではありません。忙しいビジネスパーソンや、コミュニケーションが苦手な高齢者などは、待っていても接触することはできません。

そうした方々に対しては、こちらから出会いに行ってコミュニケーションを取ります。

とはいえ、いきなり家を訪問しても警戒されてしまうだけ。できるだけ「自然な形で出会う」のが、コミュニティナースの特徴です。たとえば、

  • 移動販売の業者と連携して一緒に行く

  • ガス会社と連携し、メーターチェック担当者と一緒に行く

  • 喫茶店やガソリンスタンドなど、多くの住民が立ち寄る場所に協力してもらい、コンタクトを取るための“経由地”になってもらう

など、地域によってやり方はさまざま。もちろん、向こうが会いたくないと思ったら、無理に会うことはありません。ただし「ここにはこんな人が住んでいるのかな?」とわかるようにはしておきます。

そうすることで、相手が「会ってもいいかな」と思ったときに、スムーズにお話しすることができます。コミュニティナースが全員と直接の顔見知りにならなくても、「その気になったら出会える」状態を作っておくのです。

ちなみに私たちは、地域の方の個人情報を持っているわけではありません。

行政が出している地域別人口などのデータや、住んでいる地域の公開情報を元に、地域の自治会やまちづくり組織などの協力を得ながら、どうすれば自然な形で接点を持っていけるかの戦略を立てます。

そうして住民と接する中で、少しでも異変を感じたら医療機関につなぐのはもちろん、たとえば経済的問題など医療・介護に直接関係のないことでも、必要な支援につなげたりします。

要は、「戦略的おせっかい」ですね。

ちなみに先ほど、コミュニティナースは育児や介護などに悩んだり、孤立状態に陥っている方々の「力になる」と書きました。

しかし正確には「力になる」のではなく、「力になってもらう」ことから、関係構築を始めているのも特徴です

具体的な事例をお話しします。

北海道の小さな村で、コミュニティナースがあるおじいさんのお家を訪問したとき、玄関におしゃれなハンチング帽が飾ってあるのを見つけました。聞けばそのおじいさんは現役時代、東京でコーヒーショップを営んでいたとのこと。

「じゃあ次の集会のとき、コーヒーを淹れてもらえませんか?」

コミュニティナースの提案に、おじいさんは張り切って市街地までコーヒー豆を仕入れに行き、地域のみんなが集まる場でおいしいコーヒーをふるまってくれました。

それを見て刺激されたおばあさんが、若い頃に得意だったレース編みで教室を開いて……と「やってみたい」が連鎖し、地域の活力がアップしたのです。

多くの方にとって「困っているでしょう、助けてあげますよ」と言われても、いい気持ちはしません

そうではなく「私たち、困っています。助けてもらえませんか?」と言われると、「じゃあ、ちょっとやってやるか」という気持ちになります。そうしたコミュニケーションと関係構築を、大切にしています。

コミュニティナースが介在することで、これまで接触のなかった高齢者と子育て世代が出会うこともあります。

高齢者は小さい子どもと遊べてうれしい、元気をもらえる。お母さん・お父さんは短時間でも子どもを預けられて、とても助かる。こんな、ウィンウィンの効果が生まれます。

育休中に地域で子ども好きな高齢者と出会っていれば、お母さん・お父さんが仕事に復帰した後も、近所のおじいちゃん・おばあちゃんに何かと助けてもらえるケースが多くなり、子育てがグンとしやすくなるんです。

「すごく助かったから、何か恩返しがしたい」と、あるお母さんは市報に割り振られたコミュニティナースのコーナーの、ライターを申し出てくれました。

介護や見守りサービス、子育て支援など、日本にはいわゆる“弱者”を支えるサービスがたくさんありますが、人間って「自分がケアされる側になっている」と感じると自尊心を持ちにくいものです。「助けて」と声を上げるのも勇気がいります。

でもこんなふうに、コミュニティナースのちょっとしたきっかけ作りでそれぞれに役割が生まれることで、喜んで助け、助けられる関係性が広がっていく。結果的に子育てや介護の問題もコミュニティで解決できるようになるのです。

喜んで助け、助けられる関係性の広がり

ビジネスモデルはどうなってるの?

このように書くと「高い志をもって社会貢献をしている非営利団体なんだな」と思われがちです。ですが、そうではありません。

私たちはNPOや社会福祉法人ではなく、株式会社です。しっかりと事業を回し、収益を確保しながら会社を存続させ、事業を拡大したいと思っています。

私たちが、いわゆる「売上」をどのように得ているかというと、現在は主に3つのパターンに分けられます。

①民間企業からの受注
②地方自治体からの受注
③コミュニティナース実践志願者へのトレーニング受注

がそれぞれ約3分の1ずつです。

②と③はイメージがつきやすいでしょうが、①は「どういうこと?」と思うかもしれませんね。

具体的には、各地域の民間企業に、コミュニティナースを運営するオーナーになっていただき、その社会実装を私たちが一緒になって実施するというものです。

実は各地域の民間企業こそ、コミュニティナースを広げるうえでの重要なパートナーになりうる存在だと私たちは考えています。

民間企業に活路を見いだした経緯

私たちが「民間企業こそ事業のパートナーだ!」と思っているのは、これまでの試行錯誤の中で導き出した結論です。

はじめは「地域の人が元気になる」ことを目指す事業なのだから、行政と相性がいいと考えました。

コミュニティナースを地域に取り入れることで高齢者が元気になる→医療費・介護費を削減できるという文脈は確かにあり、実際にいくつもの自治体が導入してくれました。

ただ、その形で何年かやってみたところ、コミュニティナースの特性が、自治体と「合っているように見えて、非常に難しいな」とわかったのです。

何が難しかったかというと、ずばり、予算決定のルールや「成果」の定義、、つまりガバナンスの特性です。

コミュニティナースの事業は「まちを元気にする」が目的なので、5年、10年、20年と長期的な目線で事業を見る必要があります。1年ですぐにわかりやすい成果が出る、というものではありません。

ところが行政の予算は単年度ごとで、毎年、議会で審議をして単年度で成果を定義し、予算を成立させなければいけません。担当者も議員も数年ごとに変わる中での、合意形成の不安定さが一つ。

もう一つは、こちらのほうが本質的ですが、コミュニティナース事業が、医療・介護領域以外でも、子育てや防災などあらゆる分野でインパクトを発揮することです。

行政組織は現状、多くの場合、縦割りで事業の管理体制が敷かれています。

なので、医療・介護の文脈で導入したのであれば「介護費がこれだけ減ったから、これだけの予算をつける」という発想になります。そのほかの分野でのインパクトは考慮されづらい現状があります。

コミュニティナーシングが広がる社会

従来の尺度には収まらないことをしているんだ!という自信にはなりますが(笑)、私たちとしてはたまに、インパクトが過小に評価されているな、と感じることもあります。

むしろ第1部でお話ししたように、「高齢者(医療・介護)×子育て」など、属性や課題にかけ合わせがあるほうが、問題解決のメカニズム自体を変化させていくため、私たちが希望を持っている未来に、より近いものになります。

こうした体験を経て、地域の民間企業と協業する道がコミュニティナース事業には合いそうだ、と考えるようになりました。

「いやいや、民間企業こそ自社の営利が大事なんだから、行政と組む以上に難しいんじゃないの?」

みなさんのそんな声が聞こえてくるようです。

たしかに「うちのメリットは?」「費用対効果は?」と短期的な数字を重視する会社だと、難しいと思います。
ただ、自社の利益を求めるのと同じくらい、地域の活力を重視する企業が、実は日本にはたくさんあります。そうした企業の経営者の方には、コミュニティナースの価値に気づいてくれるところも少なくありません。

考えてみると、医療や介護を含め、現代社会の福祉は「再分配」の形でおこなわれていますよね。いったん税金として集めたものを、分配する。その分配にも(議会審議のように)何かと手続きが必要です。

それはそれで必要だけれど、資本主義社会のど真ん中にいる民間企業が、経済活動の一環としてお金を回せば、もっとダイレクトな実行ができるのではないか。そう考える経営者の方々と出会うことが、最近は増えてきました。

彼らの多くが、地方で先祖から継いだ会社を経営していて、子どものころから自然と「地域とともに」という公共的・長期的な意識を備えた方々です。

私はこの方たちを、リスペクトを込めて勝手に「公益経営者」と呼んでいます。彼らとの出会いが、コミュニティナース事業を大きく前進させたと言っても過言ではありません。

彼らのユニークな価値観や美意識、ふるまいについては、後編で詳しく紹介します。

どこでも誰でも再現できるマニュアルを構築

私たちの事業は、地域のいろんな人と接触する仕事です。中にはちょっと偏屈な人を相手にすることもあるので、「飛びぬけたコミュニケーション能力を持った人じゃないとできない仕事では?」と思われるかもしれません。

CNCでは、新社会人でも3カ月のトレーニング期間を経て、各地域でコミュニティナースとして活躍できるプログラムを設計しています。

どのようにしているか、少しだけお話ししますね。

たとえば、企業や自治体など導入オーナーが存在する特定地域でコミュニティナースを実装することになった場合。

コミュニティナースが地域に入る3カ月ほど前から、取り組みを始めることを市報などで告知してもらいます。必要な場合は私も住民説明会に出向き、不安や疑問がある人とも事前に対話を重ねておきます。

つまり、コミュニティナースが現場で力を発揮するための下地づくりを、必ず先にオーナー側と一緒になって行うのです。

そして実際にコミュニティナースが現場に入り始めたときは、ローカルテレビなど地元メディアに取り上げてもらって、認知度を上げていきます。

そして、高齢者の多い地方の小さなまちであるほど、農業など、一次産業に従事している人も多くいらっしゃいます。それらの産業には、必ず組合や業界団体があります。

まずはその業界団体のキーパーソンと関係を構築し、その信頼も得ながら地域に入ると、かなりコンタクトが取りやすくなります。こうしたノウハウは山ほどあって、これらを駆使しながら地域に溶け込んでいきます。

たとえば人口3000人の北海道・更別村は、コミュニティナース3人、プロジェクトマネージャー2人の計5人が現場に入ってこの手法を実践したところ、2年目で住民の2700人がコミュニティナースを認知するまでになりました。

ちなみにコミュニティナース5人のチームで、おおよそ2000人にアクセスすることができます。その精度も徐々に上げている最中です。

つまり私たちは、コミュニティナースという属人性の高そうな仕事を、誰がやっても再現できるように体系化しているのです
サービスの受益者は、地域の住民。お金の出し手は、地域に根ざした「公益経営者」の方々

ちょっとかっこつけると、相互扶助の新しい仕組みを “プロダクト化”したといえるかもしれません

課題を持った人に向き合うことが「資産」になる

10年以上活動を続けてきて、私たちの事業は、資本主義社会の中で、人知れず多くの人が悩みを抱えている現代の日本社会にこそ、必要とされると確信しています。

育児や介護、もしくは孤立といった課題に対して、現状では「お金を払って、誰かに助けてもらう」「行政に助けてもらう」という解決策しかありません。しかも、その網の目からこぼれ落ちる人も多い。

つまり、お金を通じて、モノやサービスをやりとりする市場経済や、行政による再分配が十分に機能していないことを意味します。

そうした中で、それぞれの住民が、誰かを助け、そして誰かに助けられることで、市場経済や再分配の外で、課題が解決される構造を私たちは作っています。

もう少し説明すると、これらの課題は、「相手を助けてあげる」というスタンスでは、もう解決できないと実感しています。

人を「助ける」ためには、お金や人的リソースが必要になります。その原資は、多くの場合は税金です。

しかし高齢化が進み、人口が減っていく日本では、そのコストは際限なく上がる一方です。つまり、仕組みとして限界を迎えている。

そこで発想を転換し、コミュニティの中にいる人々が、「自分も幸せになるから、相手を助ける」という思いのもと、互いに助け合う仕組みを作るとどうなるか。

元来、我々ホモ・サピエンスは社会的な動物ですから、相手を助けたり、頼りにされること自体を喜びと感じる回路が備わっているはずです。

市場経済が行き渡った現代社会では、その回路は忘れられつつありますが、コミュニティナースを通じてもう一度思い出すことができるのではと考えています。

結果として、課題を持った人に向き合うことが、「マイナスをゼロにする」ではなく、むしろ喜んで誰かの役に立っているという「資産」に変わるのではないか。そうすることで、社会全体のケアに対するコストが大幅に下がるのは、言うまでもありません。

一方で先にも書いたとおり、民間企業として売上にも向き合いながら、再現性を持って、各地にコミュニティナースが実現するための仕組みを構築しています。

この仕事は、ビジネスの第一線で活躍されている方が、その能力を社会に還元するために、最高のもの、と手前味噌ながら思います。

一緒に事業拡大をしてくれる仲間を募集!

目標は、私がいなくなっても事業になんの影響もないようにすること。3代先まで続く事業にすること。そして一億総コミュニティナース、相互扶助が当たり前のインフラになる社会をつくること、です。

でもそれには、まだまだ人材が足りません。

そこでCNCは、コミュニティナース事業を一緒に進めてくれる仲間を募集しています!

募集職種は以下の2つです。
■企業や自治体、医療機関など全国のパートナーとコミュニティナースのプロジェクトを共創する「プロジェクトマネージャー」
■全国各地域の現場で、コミュニティナーシングを実践する「コミュニティナース」

次のような方に来ていただけたらうれしいです。
●変化のスピードが速い時代の中で、後世に「残るもの」を作りたい方
●自分の時間を、日本をより良く変えていくことに投資したい方
●長期目線で、must思考よりもwant思考のできる方

いろいろな人と関わる仕事なので、折衝や営業スキルも身につくと思います。少しでも興味を感じてくださったら、どんなことでもお問い合わせください。
みなさんからのご連絡をお待ちしています!

最後になりましたが、今回の執筆・編集にあたって、Podcast Studio Chronicle代表の野村高文さんに多大なるお力添えをいただきました。
ありがとうございます。

編集協力:野村高文(Podcast Studio Chronicle)
音声プロデューサー・編集者。東京大学文学部卒。PHP研究所、ボストン・コンサルティング・グループ、NewsPicksを経て、現在はPodcast Studio Chronicle代表。旅と柴犬とプロ野球が好き。


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