P.A.WORKSのオタクによる『白い砂のアクアトープ』感想
冬アニメ、ハコヅメがマジで面白いですね。
そんな冬アニメの話題はいったん置いておき、今回は1クール前に放送していた『白い砂のアクアトープ』の感想を書いていきたいと思います。
ちなみに私はこの作品を制作したP.A.WORKSのファンで、P.A.が元請けをしているアニメは24作品中16作品(全体の2/3)見ています(目指せ全制覇)。
良かった点
絵コンテの切り方がうまい
第4話にて、仕事用の長靴や文房具を購入した風花に対し、くくるが経費精算を勧めます。
「いいえ、これは私が買ったものなので」と固辞する風花に対し、くくるは「駄目だよ!こういうことはちゃんとしないと」と、強く言い返します。
結局風花は渋々精算を了承するのですが、そのときのカットがこちら。
見えますか、後ろの「経費節約!!」というポスターが!!!!!!!!!この細かさよ。
閉館間際のがまがま水族館。
もちろん経費に余裕はありません。
この前提をセリフではなく、プロップで念押ししてくる演出がニクいです。
ちなみにこの回の絵コンテ担当は、岡村天斎さん。
なにげに監督作品を見たことがないので、とりあえず長年見る見る詐欺をしている『クロムクロ』から見たいと思います…。
(個人的には)2クール目から化けた
P.A.のお仕事シリーズが大好きなオタクなので、個人的にはメインキャラが社会人となった2クール目以降の展開が非常に面白かったです。
特に印象的だったのは、第16話と第18話でした。
第16話
第16話のテーマになっていたのは、仕事と子育ての両立。
「こんな重いテーマを深夜アニメで取り扱うのか!」と、初めて16話を見たときには衝撃を受けました。
特に印象的だったのは、知夢の「私だって仕事したいのに!私の仕事を奪わないで!」というセリフ。
このシーンは、石川由依さんの迫真の演技も相まって、視聴時「うわああああ」と言いながらリアルに頭を抱えてしまいました。
この回の脚本は、シリーズ構成を担当している柿原優子さんなのですが、これは柿原さんが実際に思ったことなのかな…とも感じました。
ちょうど16話を視聴した当時、勤め先の労働組合のアンケートで「会社が存続の危機(私の勤め先は斜陽産業なのです)なのに、子育て支援に力とか呑気すぎる。他の人がしわ寄せを受けて、結果やる気が低下することが、会社にとっては弊害なのでは?」という意見が寄せられているのを目にしまして…。
実際産休、育休を取ったり時短勤務をしたりすると、誰かがその分の仕事を負担することになるのは、まぎれもない事実でもあります。
アニメでくくるが子育て体験をして知夢の苦労を実感したように、結局はお互いがお互いの置かれた環境を理解し合い、助け合っていくのが一番の解決方法なんだろうなあと、この作品を通じて改めて勉強させられました。
なお私は24歳喪女なので、子育てとは一生縁がないでしょう()。
第18話
18話は、くくると朱里の対比がうまく描かれているなあと感じました。
やりたいことが明確にある正社員のくくる。
やりたいことが特にないバイトの朱里。
同じ職場でも、こういう温度差って実際ありますよねえ…!!
必ずしもやりたいことを仕事にすることが正解ではないけれども、くくるたちの熱量に感化されて、仕事にやりがいを見出していく朱里の姿は素敵だなと感じました。
主題歌が総じていい
OP,EDも全て素晴らしかったです。
OPはARCANA PROJECT、EDはMia REGINAと相沢梨紗という、ディアステージざんまいなメンツで、ディアステのオタクは歓喜していました。
4曲とも大好きですが、特に好きだったのは2クール目のOP『とめどない潮騒に僕たちは何を歌うだろうか』。
個人的に、2021年よく聴いた楽曲10選にも入りました。
引っかかった点
1クール目と2クール目でテーマがブレた?
1クール目は、主要キャラが高校生で、がまがま水族館が舞台です。
また舞台となったがまがま水族館では、館内で幻を見るといった不思議な現象が起こるといったファンタジー要素も盛り込まれていました。
一方2クール目は、主要キャラが社会人となり、先述したようなリアルなお仕事描写に定評がありました。
…1クール目と2クール目で、物語のテーマがブレていませんかね?
もちろん、2クール目は1クール目での物語展開やキャラ同士の関係性を土台として話が進んでいっていました。
しかし、1クール目のファンタジー要素のある青春ものを楽しんでいた層は、2クール目から生々しいお仕事アニメを見ることになり、「求めていたものと違う」という風に感じたのではないでしょうか。
また、私のように2クール目の方が好きだった層は、変にファンタジー要素を入れず、花咲くいろはやSHIROBAKOのように最初からがっつりお仕事アニメとして作ってほしかったと感じているのではないかと思います。
1クール目と2クール目をそれぞれ別アニメとしてそれぞれ作った方が、テーマがすっきりまとまって良かったのではないかと感じました。
副館長の「プランクトン」呼び
2クール目に入ってから、Twitterで「白い砂のアクアトープ」と検索すると、高頻度でサジェストに「パワハラ」が出てきました。
このサジェストを見るたびに、「副館長のキャラ設定、もうちょっとどうにかならなかったのかな…」と感じていました。
個人的には、くくるのことを「プランクトン」とさえ呼ばなければ、副館長はパワハラ上司ではないと思っています。
くくるに多量の仕事を任せるのは、それだけくくるのことを信頼しているということ。
またそもそも、
希望する職種に就けなかったことに不平不満を言いまくり、現職にやる気を見出さない
仕事を任せられている状況を仕事の押し付けと認識する
時には自分が任せられた仕事を放り出し、担当外の飼育の仕事に手を出そうとする
挙句の果てには無断欠勤する
など、社会人としてくくるは相当未熟で、私としては見ていてかなりイライラしました。
「プランクトン」呼びさえなければ、副館長はパワハラ上司ではなく、新人のくくるを厳しく指導するいい上司だったように思うのですが…。
また副館長=パワハラ上司というノイズを視聴者に与えない方が、社会人としてのくくるの成長によりスポットライトが当たり、物語としてもきれいにまとまったのではないでしょうか。
NL要素は必要だった?
イントロダクションにも「ガール・ミーツ・ガール」と銘打たれていたように、今作品はこれまでの篠原俊哉監督作品とは違い、男女の恋愛ではなく女同士の友情(捉えようによっては恋愛)を物語のテーマとしています。
しかし、幼なじみの櫂がくくるに片思いしている設定や、空也と夏凛の腐れ縁の関係など、男女の恋愛を示唆する(前者は示唆どころではありませんが)関係性もそこそこ描かれています。
でも結局最後まで何も進展なかったんですよね!!!!!!!!!!!!!
まあこのアニメが青春群像劇であれば、「これらの関係性の今後は視聴者にお任せします」という選択もなしではないとは思いますが、このアニメのテーマは「ガール・ミーツ・ガール」ですよね??????????????
百合アニメに中途半端なNL要素要ります????????????????
特に櫂がくくるに片思いしている設定は、2クール目では一層無意味になっていたように感じます。
中途半端なNL要素は排除して、お仕事百合アニメとして描き切った方が良かったのではないかと感じました。
百合というよりも共依存では?
※以下に書くことは、「男女CPが好きで、同性愛ものには大して興味がない」という私の個人的な好みも影響していると思います。
個人的に風花とくくるの関係は、百合というよりも共依存のように感じられて、正直若干気持ち悪さすら覚えました。
クライマックスで風花は、くくると一緒にいたいという気持ちよりも海外研修を優先します。
この展開で共依存から脱却を描いているんだろうなあとは思いましたが、それなら海外に行くことを決断するまでの心情変化のプロセスをもう少し丁寧に描いてほしかったです。
また、最終話で一気に2人の別れと再会を描いていますが、これも2人が離れていた間の出来事を丸々かっ飛ばしているので、あまり感動できませんでした。
2人が離れ離れの間、お互いにどう支え合ってどう成長していったのかを尺を使って描くべきだったように感じました。
2022年のP.A.WORKSへの期待
総評としては、「なんだかんだまあ面白かったし好きだが、絶賛はできない」というところでしょうか。
個人的に『色づく世界の明日から』が円盤を購入するほど大好きで、『凪のあすから』も前者ほどではないもののかなり好きな作品であったため、今回は篠原監督に期待し過ぎてしまっていたのかな…というのが正直な感想です。
ここ最近、P.A.WORKSは苦戦を強いられています。
『Angel Beats!』『Charlotte』を一緒に作った麻枝准氏と新作『神様になった日』を制作するも、クソアニメ過ぎて大爆死。
(おそらく)『神様になった日』を制作するために、元請けから離れたウマ娘の2期がまさかの大ヒット。
白い砂のアクアトープも、円盤の売り上げは爆死しているようです…。
そんな踏んだり蹴ったりのP.A.ですが、4月からなんとついに、初の漫画原作作品『パリピ孔明』を手掛けるそうです。
結構な有名作ではありませんか…!
私もコミックDAYSで読んでいます。
これまで手出ししていなかった漫画原作に挑戦ということで、高い原作力を武器に心機一転頑張ってほしいなあと思います。
追記
2024年に聖地巡礼してきました。
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