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子どもたちの興味をきちんと繋いでいく

施設長の山下です。
5月11日からひばりが丘のアフタースクールcommonでは午前中は1コマ30分×3回のプログラムを毎日実施しました。新型コロナウイルスの影響で休校になった子どもたち。特に1年生は入学式から一度も登校していないという子もいます。朝から学校に通って友だちと一緒に授業を受け、給食を食べて、みんなで遊ぶという「日常」が送れていません。

少しでも学校に近い日常を感じてほしい、学校が再開したときスムーズに学校生活に入ってほしいという想いから、このプログラムは始まりました。

Science & Artプログラム

その中のメインプログラムが「science & art」です。近年注目される教育「STEAM教育」の中のS=scienceとA=artを取り入れたプログラムで、学校の教科でいえば理科と図工です。しかし、このSTEAM教育におけるartは広義な意味でliberal arts、つまり「教養」と呼ばれる概念も含まています。学術的な学びを日常生活と結び付け、一般化することでその学びの価値は大きくなると考えます。

commonで行った最初のscience & artのプログラムはクロマトグラフィ。クロマトグラフィは化学の分野で用いられる実験手法で、様々な物質が混ざったものを分離し、何が含まれているか同定する際に使われます。この手法で水性ペンの色素の分離しました。

ペンには様々な色がありますが、それらはいくつかの基本となる色を混ぜて作られています。色の三原色と呼ばれる赤、青、黄色がベースになっていることが多いのですが、メーカーによってはそのほかの色が使われていることもあります。

導入は理科らしく予想から。
まだ学校で教科の学習をしたことがない1年生の子どもは「?」の顔、顔、顔。それでも自分なりに「黒には茶色が入っていると思う!」や「赤にはオレンジがある!」といった発言を始めます。そしていざ実験。

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「あ、水色が見えてきた!」「とってもきれい!」「おもしろーい」といった声が響きます。

やっていることはサイエンス。
でも子どもたちの発言はアート。
子どもたちに配ったプリントには結果を書く欄を用意しましたが、これは大失敗。子どもたちには黒い色に水色が含まれている驚き以上に、きれいな模様ができたこと、そしてそれが「〇〇みたい」と見えたことのほうが大発見!!

「もっとやっていい?」「次はこの色のペンを使いたい!」と色の不思議に引き込まれていきます。

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子どもたちが実験で作ったクロマトグラフィの紙は、最後は絵になりました。
色画用紙にペタペタ貼って様々な形を作っていきます。ある子は切って昆虫のパーツに変身させたり、クロマトグラフィだけでは表現しきれない想いを、折り紙やシールに乗せてどんどん表現していく。理科の実験では捨てられてしまう紙が、子どもたちの自己表現のツールになりました。

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教科学習と子どもの興味のもどかしい関係性

教科は物事の体系的に学ぶためには適した形です。
しかし、形に当てはめるがゆえに隙間に落ちてしまうものがあって、それが実は大切なことだったりします。学びは常に連続性を持っていて、1つの物事から数珠繋ぎのように興味関心が移っていくのが本来の姿だと思います。

その繋がりや学校の学びだけではこぼれ落ちてしまうことを拾ってあげて、そこから次の興味へのつなげていく。
「これは今関係ないよ」と言われがちな発想や着眼点の中にその子らしさや個性があります。その個性をつないで伸ばしていった先に子どものなりたい姿があると考えます。

休校というピンチを、commonでは学びのチャンスととらえ、学校ではできない学びを経験する場にして、子どもたちの気持ちが「学びたいと思うようになる」きっかけになる出来事を、commonでは応援していきます。

commonが大切にしたい5つのこと

私たちが子どもを見取るときに、いつも大切にしていることが5つあります。
1.試行錯誤と工夫
考えながらやってみること、やってみながら考えること。どの時代においても、試行錯誤をしながら工夫をする体験が子供達の成⻑の基盤となります。子供たちのプロセスそのものや時には失敗することも含めて、見守っていきます。
2.安全基地
何かをやってみようと挑戦をするためには、心の余白と安心感が重要です。「大丈夫だよ」と言い合える信頼関係を子供たちと築いていきます。
3.多様な観点
子供達の個々の多様な特性・個性を見てとり育みます。そのために必要な多様な観点・ボキャブラリーを養います。
4.コミュニティを育むこと
自分自身で挑戦するからこそ、他者の挑戦も喜び合えるはずです。個人の成⻑は、その環境やコミュニティの成⻑と紐づきます。「個」を大切にしながら、そんな「個」が集まることの可能性も探求します。
5.大人の背中
科学や建築、文学、語学、芸術、デザイン、歴史、哲学、プログラミング・・・。子供たちは、きっと大人の背中を見ているはずです。私たち自身が持つ、専門性やネットワークを活かしながら、多様で豊かな社会のあり方を伝えます。

こんなことを日々向き合いながら、子どもたちと楽しく過ごしています。

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