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地域みらい留学LIVE「Withコロナ時代の地域で暮らし学ぶこと」

地域みらい留学LIVE「Withコロナ時代の地域で暮らし学ぶこと」と題して、地方に対して様々な仕掛けをしてきている方をお呼びしました。
ご参加いただきました中学生や保護者の皆さま、ありがとうございました。
開催レポートをお届けします。

《対談メンバー》
◆指出一正 : ソトコト 編集長
◆岩本悠 : 地域・教育魅力化プラットフォーム 代表理事
《モデレーター》
◆水谷智之 : 地域・教育魅力化プラットフォーム 理事・会長


水谷) 
みなさん、改めましておはようございます。まずは、本日のゲストであり、日本で色々な地域のことを取材されてきた「地方創生の第一人者」、雑誌「ソトコト」編集長の指出さんを紹介させてください。

指出) 
よろしくお願いします。私はソトコトという、1999年に創刊した、社会と環境をテーマに、ライフスタイルを取り扱う雑誌の編集長を務めています。昨年からはソトコトオンラインというオンライン事業にも取り組んでいますので、「social and eco」のメディア事業に取り組む人間だとご認識いただければ嬉しいです。コロナ禍の前までは、まさに地域みらい留学の舞台となっているような地域に取材に行き、その地域の「気分」を言葉にすることを通じて、ローカルの魅力を伝えてきました。また、観光でも移住でもない切り口で、地域に関わってくださる人たち、つまり「関係人口」を増やし、地域の魅力を作っていくことにも挑戦しています。

楽しい1時間にできればと思っています!よろしくおねがいします!

水谷)
そしてもう一人、岩本悠も紹介させてください。私と一緒に、この地域・教育魅力化プラットフォームという団体を作っていいます。この地域みらい留学なんですが、元々は12年前に、隠岐の島という、元々は後鳥羽上皇が流された、つまり「一度行ったら帰れない程遠い」と称された島にある、隠岐島前高校という高校に、東京から飛び込んで、この「高校魅力化」「しま留学」というムーブメントに最初に取り組んできた張本人です。


岩本)
よろしくお願いします!今このコロナの中で、改めて地域の持つ力が注目されて来ていると思うので、地域の持つ可能性について、みなさんと考えられる時間にしたいと思います。

2人の高校時代を振り返って

水谷)
岩本さんは見た目も変わってますが、経歴もかなり変わっているので、自己紹介も兼ねて、岩本さんの高校時代を振り返ってみてください(笑)

岩本)
僕は東京で生まれ育ちました。当たり前ですが地域留学なんて選択肢はなくて、地元の公立高校に進んで、大学へ進むというのが一般的なコースでした。大学に入った後は、ようやく多少の自由を手に入れたことで、いわゆる「学校社会の中で空気読みながら生きる」というものに辟易していたのもあり、「やりたいことをやろう」と思っていました。ただ、結局は「自分が何をやりたいか」が分からないまま入学したので、遊ぶだけの生活を2年過ごしました。そう過ごすうちに「このままだと、今までと変わらない、周りに流されて生きるだけだ」という危機感が生まれてきました。まさに、「学校の中の私、地域も社会も知らず」だったのだと思います。自分の適性についても、体育が好きとか、そういう好き嫌いはありましたが、「自分は何に向いているのか」「何がしたいのか」はやはり分からず。

そこで、自分の世界を広げるべく、一年間色々な国を見て回りました。その一年間は、自分の人生を衝撃的に変えましたね。学校の外に、こんなに学びや刺激があったのかということに気づかされました。自分がかつていた教室より、100倍も多くのことを学ぶことができました。わかりやすく、自分の「戦闘力」が上がる感覚を味わいましたし、自分にとって初めての「地域留学」でしたね。

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(画像右が高校時代の岩本さん)

その後、まずはグローバルな事業を展開していたソニーに入社し、ひょんなことから島根に浮かぶ海士町という町に移住したんですが、それも第二の衝撃でした。それまで、自分の関心は海外にあったんですが、「都市と地方でこんなに違いがあるのか」というカルチャーショックを受けました。たくさんの挫折を味わいましたが、その分成長には繋がりました。そして、地方での生活を通じて成長していく感覚を、もっと若い年代の人に経験してほしい、もっと人生の充実度や幸福度をあげてほしいという思いから、この「地域留学」をはじめました。

水谷)
ありがとうございます。指出さんはどのような高校生活を送られてきたんですか?

指出)
僕は群馬の高崎で生まれ育ち、小中高と公立で過ごしました。少し群馬県の紹介をすると、群馬って色々とランキングの低い県なんですね。女性の幸福度ランキング47位とか、美肌ランキング47位とか(笑)。そんな県なので、常に東京に対してコンプレックスや憧れを抱えながら過ごしていました。そんななか、僕のいた高崎高校は、一言で言えば「バンカラ」な校風でした。わざわざ下駄履いてきたやつとかいましたし。でも一番すごかったのは、「自主カット」が許されていたこと。自主カットというのは、勝手に帰っていいということですね。なので、僕は普段昼まで授業に出席して、そのあとは近くの湖でずっと釣りしていましたね(笑)でもそれって、先生方は僕らを信頼してくれていたからだなと思っています。

話を戻すと、地方の公立高校って、少なからずコンプレックスを持っていると思うんです。「なんでこんなところに生まれたんだろう」「東京の私立とかだったらもっと華やかで、モテモテの生活を送れたのかな」と、「東京にいるもう一人の自分」を思い描きながら生活したっと思います。ただ、振り返ってみると、個性あふれる田舎の先生方から、完成されていない、作り込まれていない教育を受けたこともよかったと思います。その場所のローカル性を愛する、大事にするということを教えてもらい、心地よい感覚でした。


キーワードは越境・逆光・熱狂

水谷)
海士町に移住され、これまで高校魅力化に取り組んで来た岩本さん、ここまで続けてきたなかで、その根底にある思いって何かありますでしょうか。

岩本) 
僕は移住する時から、こういう島留学をやりたいと思ってました。
人が成長する時って、3つのキーワードがあると思いんです。

①越境(自分の安全なテリトリーから超えていくこと)
②逆境(苦しい局面を乗り越えることで、それが必ず成長につながる)
③熱狂(寝食を忘れるくらいエネルギーを注ぐこと)

があります。この3つ全てを自分の力で作り出すことは難しいのではと思っています。
でも①の越境なら、ちょっとした勇気で踏み出せるし、踏み出した時に、必ず苦しい局面、逆境にぶつかる可能性は高いと考えています。

なので、この地域留学を通じて、その独自性を堪能してほしながら成長機会に変えて行ってほしいと思います。今いる安心安全の場所から抜け出して、ワクワクドキドキを感じる、全く知らない環境に立ち向かう経験自体が本質的だと。これが地域みらい留学にかける、僕の思いです。


地域に身を置く一番のメリットは、「ユーモア」


水谷)
様々な地域をみて来た指出さんにお聞きしたいです。
ずばり、多感な15歳からの3年間、地域に身を置く意味って何だと思いますか?

指出)
それはもちろん、美味しい食べ物、世代間交流とか色々あると思うけど、一番は「ユーモア」が磨かれると思います。地域の人たちは、原理原則として経済原理じゃなくて、安心や人情という、人間関係の原理で動く。だから、素の部分で接し会えることができる。勉強はもちろんできるし、人と人との間合いとかも学べたりして、この積み重ねは、確実に「人間としての厚み」に繋がっていくと思います。
多分皆さんが好きな人たち、アーティストとかって、ユーモアがありますよね。それは多分、学校社会だけではない、地域社会で学べるような感性を磨かれて、ユーモアのセンスを気づかれて来たと思っています。

岩本)
なるほど。新しい観点ですね、でもわかります。よく、都会からか海士町に来た子で、「心開いたら負け」と言わんばかりに最初はツンツンして斜に構えていた子たちも、地域の人に大事にしてもらって、毎日接し続ける中で、雰囲気がわかりやすく変わってくる。大人とちゃんと真正面に話ができるようになる。コミュニケーションの幅が広がっていく姿を見ると嬉しくなりました。その子は、最終的に趣味のカメラで海士町の廃校などの写真を撮り続けて個展を開いたりして、卒業後の現在は海外でカメラマンとかやってます。そういう「幅の太さ」って、ユーモアという観点で見ることもできるな、と思いながら聞いていました。

指出)
太さっていう表現は、わかりやすいですし良い言葉ですよね。
ローカルを知るということは、まさしく「太さ」を身に付けることだと思います。
だって、そこで生きている人がやっていることは、まさにその社会の表れなわけですから。
答え合わせが1番早くできるんです。大人は何を考えてるのかなとか、大人は何に困ってるのかなとか、大人は若い人に何を期待してるのかなって。

水谷)
太さとか、ユーモアって新しい観点でしたね。
たしかに、都会には「居場所探し」という言葉がまことしやかにあるように、居心地の良いとこだけで、居心地の良い人たちを選んで、生きていくことができてしまう。だけど地域だと、それができない。私自身、地域に行って、高校生と話す時に圧倒的に感じるのは、彼らがどんな相手でも対峙しますよね。笑って付き合うことができる。それは、付き合いやすい人間とだけ付き合って、後は逃げることをしない。必然的にそういう資質が身についていくんでしょうね。


質疑応答


Q1 このコロナという節目を、どんな節目だと思いますか

指出)
端的にいうと、みんなが同じ言葉を使っていることに尽きます。「コロナ」を共通言語として、色々な決断が生まれている。例えば仕事がなかなかままならないのでこのタイミングで店じまいしようとか、テレワークに切り替えようと言ったりとか、そういう意味で今まで内面の中でもやもやしていた事とかを、口に出すきっかけになったと。コロナが何かを変えたというよりも、何か大きな局面の出現をみんなが待っていた節はあると思います。明らかに働き方とか、暮らし方とか、生き方が変わってくるんでしょう。


岩本)
うまく言語化できないけど、心身の健康性とか社会の健康性とか、それらの価値が見直されるタイミングが来たと思います。自分が幸せになれる場所で、自分が幸せになれることをやる。僕は今、海士町の家から配信していますけど、家を出たら目の前に海があります。これは、純粋に体が喜んでいますよね。


Q2.親御さんへのメッセージ

指出)
これからは「自分たちの生活を自分たちでつくる」ということが求められてくると思います。その時に、それが面白いと感じてくれるような教育を受けていたか、ということはすごく大きなことだと思いますから、高校で学べることというのはよりプラクティカルのことですし、もちろん光と影もあります。それらも全部含めて地域は宝物がたくさんありますから、自分たちで未来を作りながら楽しく生きていってほしいと思います。
あとは、15歳って立派な大人ですから、何をやりたいのかということを、日常的に自分で考え、選択していくレッスンをしてほしいと思います。

岩本) 
良いことばっかり言って来たので、最後に添えられる言葉があればすると、「進路とか、学校とかって絶対的な正解なんてないし、失敗したっていい」ということですかね。絶対的な正解で失敗してはならない、というのに縛られると、かえって挑戦できなくなる。極端に例えれば、今回の地域留学で、「あ。違った」となったとき。その時は地域留学365で違う環境に飛び込んでみるとか。そういう風に、今の社会はいくらでも取り返しがつくように変わってきています。

水谷)
最後に、参加者(実際に娘さんが地域みらい留学を使って地方の高校に通っている)からの感想で、感銘を受けるお言葉をいただいたので、これをシェアして終わりたいと思います。     

「やっぱり、(入学先の生活が)思った通りとは違うことが分かってよかった。これは実際に島に留学した娘が最近漏らした感想です。でもだから頑張れるって言っていました。娘が太くなっていく様子が、親元離れていても実感しています。」

※本記事は、2020年7月25日・26日の『地域みらい留学フェスタ2020オンライン』の事前対談です。昨年まで、東京・名古屋・大阪・福岡で開催していた地域みらい留学フェスタが、オンライン開催で帰ってきました!高校3年間地域で学ぶ「地域みらい留学」と高校2年生の1年間地域で学ぶ 「地域みらい留学365」。オンラインだからこそ気軽に参加していただけるように多くのイベントをご用意しています。ご関心がある方は是非、ご参加ください!(参加費無料・事前予約制)

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