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現実からバーチャル空間へ音楽活動を拡張する━━へぷたんさんインタビュー【バーチャル探訪vol.02】

「バーチャル探訪」はこれからのバーチャルSNS「cluster」を深く考えるためのインタビューシリーズです。

clusterは2020年3月の大型アップデートにより「バーチャルSNS」として進化しました。そこから1年以上が過ぎ、clusterでは想像以上に多くの人が、つくり、あそび、生活をしています。

clusterは日々アップデートを続けていますが、よりよい場所とするためには現在clusterにいる方たちの声も必要だと考えています。

そこで、clusterでつくり、あそび、生活をしている方たちにお話を聞くインタビューシリーズをはじめることにしました。
clusterの楽しみ方はさまざまだと思います。そこでシリーズを通して、さまざまな方にお話を聞く予定です。

「cluster、バーチャルSNSって何?」という方はぜひご覧ください!

バーチャル空間でのクラシック音楽の可能性を探究するバーチャルピアニスト・へぷたんさん

第2回でお話を聞くのは、へぷたんさんです。

へぷたんさんはヨーロッパの音楽大学の現役の学生で、clusterではピアノコンサートを開催しています。その他にもさまざまなワールドでピアノの練習を行い、その様子を配信するなど、自身のバックグラウンドを拡張した活動をclusterで展開しています。

ピアニストとして現実での活動の代替ではなくバーチャル空間ならではの価値を模索しているへぷたんさんに、clusterをはじめたきっかけや、何を魅力に感じているのか、活動の動機などをお伺いしました。
(聞き手は、クラスターのFUKUDAが務めます)

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へぷたんさん(「ピアノ練習室(仮)へぷたん」にて)
(特記なき写真はFUKUDA撮影)

──今日はお時間いただきありがとうございます。このバーチャル探訪では、毎回、お話を聞く方にワールドを選んでもらい、そこでお話を聞くことにしています。
今回は、Ichitaro/いちたろうさんの「IchiKon Caffee 3号店 V8.35」にお邪魔しています。

よろしくお願いします。
clusterにまだ来たての私でいいのかな...と思っていますが、今日はよろしくお願いします。

第一回のYou Aoiさんのインタビューでいちたろうさんのワールドがclusterで生活するきっかけになったという話がありましたが、実は私もそうなんです。なので、今回はそのきっかけになったこのワールドにしました。
そのことは後ほどお話ししますね。

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開放感のあるカフェスペースと夕焼けに染まった空が印象的な「IchiKon Caffee 3号店 V8.35


コンサートをきっかけにclusterで生活するように

──まず、clusterをはじめたきっかけはどのようなものだったのでしょうか?

はじめてclusterに入ったのはREALITY連携がきっかけでした。

clusterはオリジナルアバターを作成し配信ができるスマートフォン向けバーチャルライブアプリの「REALITY」と連携しており、REALITYで作成したアバターになってclusterで生活することができる

スマホで手軽に入れるというのもきっかけのひとつでした。
でも、最初はclusterのあそび方とか楽しみ方が全然分かりませんでしたね。
REALITYの友達と待ち合わせて時どきclusterのワールドに遊びに行ったりしましたが、結局は定着はしませんでした。スマートフォンにアプリは入っているけど、開いてはいないという状態が続いていました。

また、当時からclusterのワールドは完成度高いな〜って感じていて、どれも公式で用意したものだと思っていました。でも実はユーザーさんたちがつくったものだということをclusterによく遊びにくるようになって初めて知り、驚きました。

──へぷたんさんは現在ではcluster内で多くのコンサートを開催されていますが、最初のコンサートは今年の3月でしたよね。
あまりclusterに入らなくなってからコンサートを開くことになったのは、どういうきっかけだったんですか?

私は現在ヨーロッパの音楽大学に通っているのですが、新型コロナウイルスの影響で今年の2月から休学していました。
一方でもともと、バーチャルピアニストとして活動をしてみたいと考えていて、そんな折にいちたろうさんと知り合い、3月にclusterでコンサートを開催することになったんです。なので、不意に時間ができたという、よいタイミングでしたね。

そこから、打ち合わせのためにこの「IchiKon Caffee 3号店 V8.35」に通うようになったんです。そして、この場所でいろいろな人に会うようになって、clusterの世界の魅力がだんだん見えるようになってきました。

特にクリエイターさんにあのワールドのこだわりポイントはどこかとか、そういう裏話を聞けるのは、私にとってすごい魅力ですね。
そのようにワールドをつくっている方やアバターをつくっている方、イベントをされている方にお会いしたことによって刺激を受けたんです。その出会いによって次第に私もclusterで生活するようになっていきました。

また、コンサートに合わせて、それまで9年使っていたノートパソコンを新調したりしたので、最初のコンサートはかなりの意気込みで臨みました。

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──コンサートの準備をきっかけにclusterで生活するようになったんですね。はじめてバーチャル空間でコンサートを開催した時はどうでしたか?

めちゃめちゃ楽しかったですね。もちろん緊張しましたけど...

clusterには「エモート」と言って、ボイスで話したりテキストチャットをしなくてもリアクションできる機能があるのですが、その中に「拍手」のエモートがあります。
演奏が終わって、みんなが拍手のエモートをしてくれると現実と同じように本当に拍手されているような気持ちになるんですよね。
なので、自分は家でピアノ弾いてるだけなのですが、clusterでの演奏は目の前でお客さんが聞いてくれているという、現実のコンサートみたいな臨場感がありました。

それはYoutubeの配信ともREALITYの配信ともまったく違う体験で、やっぱり目の前に人がいてコミュニケーションが取れているからなんだと思います。

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clusterのエモート機能


バーチャル空間で過ごすのは、故郷に帰ってきた気持ち

──それはバーチャル空間のいいところですよね。僕もclusterは喋らなくてもエモートでリアクションできるので、想いを伝えやすいなと思う時があります。
そもそもバーチャルピアニストになろうと思ったのはどうしてだったんでしょうか?

私はもともと工学系の大学を卒業したんですが、子どもの時に一度辞めてしまった音楽をどうしても学びたくて、その後にヨーロッパの音楽大学に留学したんです。

cluster上で開催されるイベント「TTVR」ではへぷたんさんが経験した海外の音楽大学での経験が語られている

なので、工学系のバックグラウンドも活かしてバーチャル空間で何かをやってみたいということに思い至るのは自然な感覚でした。

また子ども時代の話ですが、私もしゃちょー(クラスター社CEO加藤)と同じでひきこもりだった時期があって、その時はMMORPGをよくやっていたんです。
当時は狩りやクエストに行ったりすることもなく、街の中でチャットしてるだけ...という過ごし方も珍しくなかったので、その点ではバーチャル空間で過ごすことには抵抗がなく、それどころか故郷に帰ってきた!みたいな気持ちでしたね(笑)

そういう経緯もあって、自分の中では自然な流れでバーチャル空間で活動していきたいなという気持ちが固まっていきました。


バーチャル空間でクラシック音楽を拡張する

──clusterに最初に来た時からバーチャルピアニストの活動をやってみたいという気持ちはあったんですか?

ありました!
最初にclusterにきた時は定着はしませんでしたが、幻想的なワールドや綺麗な景色のワールドがいっぱいあって、こんなところでピアノ弾けたらいいな〜と思っていました。

バーチャルピアニストとして活動するなら、バーチャルでしか実現できないことをやろうと思っています。

私がメインで演奏しているのはクラシック音楽なのですが、クラシック音楽には一曲一曲にさまざまな情景があるんです。
たとえば、ラヴェルというフランスの作曲家の「水の戯れ」という曲は、山奥から雨水が、まだ川とも呼べないような小さな流れからはじまり、それが滝になって、飛沫を飛ばしながら激しい流れになり、最終的に海に流れていくという、水というものがどんどん姿を変えていく光景を思わせるような曲なんです。

現実だったら山奥とか海辺では弾くのは難しいのですが、バーチャル空間だったら山奥でも海辺でも弾くことができますし、なんだったら海の底でも演奏ができますよね。
そういう風に、聞きに来てくれる人が音楽を楽しむと共に情景を楽しむことができたら、新しい音楽体験になるのではないかと、clusterに来てから思うようになりました。

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6/30に開催された「旧いちこん城跡地 / IchiKon Old Castle cluster edition V2.0」でのコンサートでは、演奏する楽曲に合わせた演出がなされた。また、演奏の合間にはへぷたんさんから演奏した曲の背景まで語られているのが印象的だった。

──先日の旧いちこん城跡地では、それを目指した試みをされているように感じました
その前は高千穂マサキさんの「BAR GEKKO / バー 月光」でもピアノコンサートをされていましたよね

もともとは高千穂マサキさんからワールドのBGMをつくりたいという話をもらって、せっかくならその場で弾いてみたらどうかなと思い、コンサートを開催することになったんです。

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その時は、マサキさんがどういう思いでワールドを作成して、運営しているのかを知る機会にもなったので、すごく楽しかったです。
いちたろうさんのワールド以外でのコンサートはその時がはじめてだったんですけど、いろいろな方のワールドでワールドを作成した背景を聞きつつ、楽曲制作やコンサートをやれたらすごく楽しそうです。


clusterの日常を伝える「ピアノ練習配信」

──ワールドの作者の方の思いまで汲み取って作曲・演奏されるのは、曲の背景まで考えて演奏されているへぷたんさんだからこそですね。
最近では、ワールドでピアノの練習を行い、その配信をされているのが面白いなと思っていました。

もともとはピアノの練習の風景を見たいという方がいて、はじめたものです。

でも練習するだけでは芸がないと思って、clusterの日常の姿をcluster外に見てほしいという思いで配信をすることにしました。

配信をしていたら、みんながはくしちゃんというアバターで不意に踊り出すシーンがあったりとか思いも寄らないことが起こったりするんです。

はくしちゃんというアバターで不意に踊り出すシーン

これってclusterを知らない人から見たら、そんなアバター使えるの!とかどうやってアバターを変えてるのとか、リアルタイムで他の人とそんなことできるんだ!という発見になると思うんです。

また、clusterは誰かがワールドにいるとWebサイトの「ONLINE」部分にワールドが表示されますよね。
配信であらかじめワールドの様子が分かっていれば、ワールドにも入りやすくなるんじゃないかなと思っています。

──ワールドの中の様子を伝えるというのはなかなか難しいので、ワールドの様子を定点カメラで配信するというのはすごく面白いアイデアですよね。

自分のワールドもつくりましたね。ちょうどさくら(さく)さんがライブハウスのワールドをつくっていたのを見て刺激を受けて...

公開した時はclusterでの友人であり、さまざまな素敵なワールドをたくさんつくっているかわしぃさんやたぬきちさんなど色々な人にアドバイスもらったので、思い入れがありますね。
やっぱりクリエイターさんとコミュニケーションがとりやすいのはclusterのいいところだなあと感じたのを覚えています。

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へぷたんさんのワールド「ピアノ練習室(仮)
ヨーロッパの天井高の高い図書室をイメージして制作されたとのこと。

──ワールド作成に刺激を受けてワールド作成はすごくいいですね。
最近ではいろいろなワールドで練習されていますよね。コンサートの時と同じく、ワールドの雰囲気を考えて演奏されるんですか?

練習配信の方はあまり考えていないですね(笑)
練習が終わった後にワールドに合いそうな曲を少し弾いたりなどはありますね。ただ、聞く人にとってはシチュエーションによって曲の感じ方が変わるというのはあるのではないかなと思います。

hkさんの「Rainy harbor」など弾いてみたい素敵なワールドはたくさんあるので、これからも色々なワールドで演奏してみたいなと思っています...!

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hkさんの「Rainy harbor

──なるほど。そういう視点でワールドのことをあまり考えていなかったですね。
へぷたんさんのおすすめのワールドはあったりするんですか?

事前にその質問をもらっていましたが、多すぎて選べない!と頭を抱えていました(笑)

──なるほど(笑)

やっぱり今日お話してるワールドの作者であるいちたろうさんは大きな存在ですね。
ワールドのクオリティもそうですが、バーチャル空間の未来を考えて活動されているのがすごいなと思っています。

ただ、それはたまたま私がこの場所によく来ていて、よくお話ししているから知っているだけで、ほかのユーザーさんもバーチャル空間の可能性を真摯に考えていると思います。

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Ichitaro/いちたろうさんのIchiKon Caffee 3号店 V8.35


バーチャルピアノコンサートをやるための試行錯誤

──コンサートもかなりの回数重ねていますよね。イベントをやる中で試行錯誤されていることはあるのでしょうか?

座っているアバターをつくったりしましたね...(笑)
この時はアバター改変の名人であるひらぷん@半魚人さんに教えてもらいながら、アバターを調整しました。
clusterでは座ることはできないので、少しでも演奏しているように見えたらいいなと思って......なので、clusterで座れるようになると嬉しいなと思っています!
また、フルトラッキングで弾けるようになるのがいいんですけど、現状はHMDで被ったまま弾くのは難しいというのもありますね…...

──なるほど

あとは音質ですね。
clusterはある一定の音量レベルより静かになるとマイクが自動でオフになってしまうんです。

クラシック音楽だとダイナミックレンジ(最も大きな音と最も小さな音の比率)が広く、ピアニッシモ(とても弱く)、ピアニッシシモ(きわめて弱く)のような非常に小さい音があるので、いいところで音声がミュートになってしまうんですよね。その音を拾えるように音量を調整しても、今度はフォルテッシモ(とても強く)のような大きい音のところで音割れしちゃったりするんです。
そこで、人には聞こえにくいけどデジタル的には認識される20Hzの音を流し続けることでミュートにならないようにするというテクニックを使っています。

音楽活動をされている方でclusterのイベントに注目している方は多いと思うので、Zoomにある「オリジナルサウンド」のような機能が実装されたり、ステレオで再生できるようになったらいいなあと思っています。


イベントをする人たちが持続的に活動できるような「経済圏」を

──clusterはこれからどのようによくなっていくとよいと思いますか?

私はイベントをする人たちが持続的に活動できるように、関わった人が働きに見合った報酬をきちんと得られる仕組みができるといいなと思っています。

たとえば、イベントした時のVポイントの分配とか個人でも少額の有料イベントを開けるようになるとか、そういうことができるようになるといいなと考えています。
イベントにはワールド制作者さんだけでなく、演者さんとの間に立って企画するイベンターの人や、私みたいなバーチャル音楽家、カメラマン、ダンサー、モーションアクターなどいろんな方が関わっています。

メタバースの時代が来た時にそのようなバーチャルカメラマンやバーチャルパフォーマーが職業的な肩書きのひとつになるような仕組みがclusterから生まれたらいいなと思っています。そうなることでイベントの質もどんどん上がっていくと思うんです。


──ありがとうございます。「バーチャル経済圏」をつくる上で非常に重要な視点だと思います。
最後にclusterについて一言もらえますでしょうか。

clusterは運営とユーザーの距離が近くて、一緒にサービスをつくっている雰囲気が好きです。

はじめてclusterに来る人は、人が集まっているワールドにとりあえず何回も遊びに来てみてほしいなと思います。
私もそれでだんだんclusterの世界が見えてきたところがあるので、最初は魅力が分からなくてもぜひ何回も遊びに来てみてほしいなと思います。そうすることで次第にclusterのことが分かってくると思います。

──本日はお話ありがとうございました!

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今回のワールド|「IchiKon Caffee 3号店 V8.35」Ichitaro/いちたろう

今回、お話を聞いたのは、Ichitaro/いちたろうさんによる、空中に浮かぶカフェのワールド「IchiKon Caffee 3号店 V8.35」です。

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落ち着きのあるライティングで過ごしやすい環境になっています。

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スイッチによって空の色を変えることもできるので、気分によって雰囲気を変えることもできます。

青空にして、屋上に登ると爽快な風景が広がります!

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多くのcluster民が集まり、しゃべったり作業している場所なので、一度訪れてみてはいかがでしょうか?


インタビューして欲しい人募集中です

インタビューシリーズ「バーチャル探訪」では、この人に話を聞いてみて欲しい!という人を募集しています。

みなさんが一度話を聞いてみたかった人をぜひ教えてください。
下記のフォームから必要事項を記入して、送信ください。
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※必ず話を聞くことができるかどうかは分かりません