子どものトレーニング理論その2〜柔軟性が高ければ怪我をしにくい。わけではない〜
柔軟性が大事なのは前提として
多くの方のイメージ通りだと思いますが、少しでも関節の可動域を確保しておくことが身体パフォーマンスの向上と、怪我の予防に役立ちます。
これは間違いありません。
100km/hが限界の車を100km/hで走らせていたらすぐ壊れてしまいます。F1などは性能の限界ギリギリを攻めるので、速い反面ほんの少しのエラーですぐ壊れてしまいます。以前レース用の車に乗ってみたとき、ハンドルをほんの少し切っただけでグイッと曲がり、一瞬でスピンしました。遊びって安全性のためにとても重要なのですね。
関節にも必ず余白が必要です。特に身体は疲労の積み重ねやその日の体調で、可動域も毎日変化しています。競技動作で使う可動域が70だとして普段の可動域が80の場合、調子が良い日はいいですが疲労が溜まっていて65まで落ちていたら故障してしまいます。
しかし大事なポイントをほとんどの人が見逃している
実はもう一つ、柔軟性について重要なポイントがあります。
それは、
“全身の柔軟性に偏りがない”
ことです。
例えば腰周りはとても柔軟なのに股関節が硬い場合(実際にこのパターンは非常に多いです)、股関節がするはずだった仕事が他に回ってきてしまいます。そこで近くの腰が代わりに動きを作って全体として目的を達成しようとします。
“代償動作”といわれるものです。
このとき過度な負担がかかるのは硬い股関節ではなく柔らかい腰です。
硬い関節を痛めるのではなく、その近くの柔らかい関節が壊れるのです。
成績表に例えると、ALL 3よりALL 5の方が良いのは当然ですが、5科目あったとして、5/5/5/2/2より3/3/3/3/3/の方が断然安全です。
痛い場所と原因は別
多いパターンを具体的に挙げます。
痛い関節:肘
原因となる硬い関節:肩甲骨・胸郭(肋骨と背骨で囲まれたユニット)
→ 野球少年に多い肘の痛み。多くは肩甲骨周りがちゃんと動いていないパターンです。
注)肘の痛みには先天的な要因のものもあります。痛みがあるときは専門家を頼ってください。
痛い関節:肩
原因となる硬い関節:肩甲骨・胸郭・手首
→ これも野球に多いですね。リトルリーガーショルダーが有名です。これも肘と同じで肩甲骨周り、あとは意外と盲点なのが手首です。
痛い関節:腰
原因となる硬い関節:股関節・胸郭
→ 小学校高学年〜中学生で腰椎分離症(腰椎の疲労骨折)が多発しています。腰は上下に固くなりやすい関節があり、腰椎はよく動いてしまうので痛めやすいです。
痛い関節:膝
原因となる硬い関節:股関節・足首・足ゆび
→ サッカーやバスケ、ラグビーなどは膝の怪我が多いです。膝というのは実はほとんど運動パフォーマンスに重要な機能はありませんが、動かしやすいので過度に使い過ぎてしまいます。
痛い関節:足首
原因となる硬い関節:股関節・足ゆび
→ 圧倒的に怪我が多く、捻挫は身近な怪我ですね。第一に足のゆびの機能が密接に関係しています。また一見関係なさそうな股関節も関わっています。
どうでしょうか?
思い当たるところがありましたか?
まずは全身のバランス、次に全体の柔軟性向上。
柔軟性についてまとめると、
・まず極端に可動域の低い部分を改善し偏りをなくし、
・次に全体の可動域を競技動作で必要な分プラスアルファ(余白)を確保しておく、
という順で改善していくのが理想です。
大人の身体になると骨が固まり筋力がついてきて、可動域は低くなりやすいので、成長期のうちに改善しておくことが大切です。
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