住野よる(2020)『この気持ちもいつか忘れる』新潮社

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バクホンとのコラボ企画の小説。シンクロした世界観の音楽もとてもいい。内容は、どこか達観している男と周りの世界の軋みを描くもの。白石一文の物語に少し似ている。恋愛とは、社会的な武器も鎧も捨てて、ただ一人の人間として向かい合うということなのだと思わせる場面が描かれている。

気遣いとか思惑とか歯に衣着せたような会話をしている二人が、ある瞬間にふと剥き出しの感情をためらいもなくぶつけ合うことがある。社会的なといわれるような立ち振る舞いを放棄したありのままの人間交際。忘れていく気持ちや確かな過去と今という主題に、負けるとも劣らないまた一つの中身を読んだ。

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