村上龍(2013)『心はあなたのもとに』文春文庫

大切なものは一瞬である。記憶に残るのはいつだってほんの一コマであって、何度も何度もその場面が頭の中で繰り返される。それが思い出、大切な思い出で、忘れならない悲しい幸せのような大切なひととき。

ずっと変わらない感情は無くて、そのわずかな変化に私たち人間はいつか気づいてしまう。すると、苦しみ悩む。でも、それを忘れたいと思う。対象は変わらなくても、そして対象が喪失されるとこれまたひどく感情をかき乱される。無常を感じさせる、儚さの漂う一冊。

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