青木栄一(2021)『文部科学省』中公新書

近年、失敗が目立つ文部科学行政について、その実施組織に着目して体系的に分析した一冊。文部科学省という機関を包括的に記述する本書は行政研究の手法として非常に面白く、基礎的理解を得るには丁度良い。

効果が目に見えにくいこともあり世論や財務省の査定では不利な立場にありつつ、全国の教育委員会に対しては明治以来の伝統的統制を堅持する”内弁慶”の文科省を、官邸や経済界が科学技術振興のために利用していく過程を中心に据え、昨今の様々な問題を関連付けながら解説をしている。書中に登場する旧科技庁系の文化が浸透しているという分析についてはまだ根拠薄弱に思えるが、論旨は的確であり全体を通じての違和感は小さい。いろいろな省庁について同様の研究を読んでみたい。

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