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クラウン*ベスのアメリカ体験記 vol.25

米国で”地上最大のショウ” リングリングサーカスのブルーユニットに入団したエリザベス! 今回は前回の続きでブルガリアから来た新体操団について綴ります。


私が今まで説明してきたリングリングサーカスの正式な名称は、リングリングブラザーズ・アンド・バーナム・アンド・ベイリーサーカスです。
Ringling Bros. and Barnum & Bailey
1919年にリングリング兄弟がバーナム・アンド・ベイリーサーカスを買収して合併して発足しました。アメリカ各地を回り、一般大衆のエンターテイメントとして人々を魅了しました。別名は「グレイティスト・ショー・オン・アース」
The Greatist show on Earth
地上最大のショーと言われるのは、スケールの大きさです。車輌90輌、従業員1540人、馬450頭、象40頭、フットボール上2つ分の大テント。観客席11000人分。地元の街に突然テントが立ち、エキゾチックな動物達や世界各国の一流の芸人達を自分の目で見ることができるのはまるで夢の中の出来事のようだったんじゃないかと思います。国際色豊かなショーは自分がまるで海外にいるような気分にさせてくれることでしょう。1900年初代ごく普通の人々のサーカスを見たときの感動はすごいものだったと想像できます。「サイドショー」ツアーでは2つの国から来たパフォーマー団が観客を各々の世界にトリップさせてくれました。

今回はブルガリアから来た新体操団を紹介します。世界選手権で新体操が最初に紹介されたのが1963年。その後年々新体操のファンが世界で増え続け、個人競技としてオリンピックでデビューしたのが1984年。1996年のアトランタオリンピックでは団体競技として新体操が初めて種目に加わります。そのときに銀メダルを受賞したのがブルガリアのチームでした。その中の2人の選手、マイア・タバコヴァ(Maia Tabakova)とヴィアラ・ヴァタチカ(Viara Vatachka)がリングリングサーカス「サイドショー」のために構成された9人の優秀な体操選手団に加わり合計11人による素晴らしい新体操の芸を観客に披露することになります。
新体操は普通の体操種目と同様、個人競技と団体競技の2つがあります。正式な新体操の大会では転回やバク転などの宙返り系は禁止。両競技ではフープ、ボール、棍棒、ロープ、そしてリボンなどの道具を使って複雑で優雅な体操のルーティーンにダンスの要素を織り交ぜます。これらのルーティーンは難易度、振り付け、道具や技の選択により特典が決まります。団体種目は選手5名で行われます。ショーでは彼女たちは真っ赤なカーペットの上でヨーロッパの雰囲気の音楽に合わせて踊りながらリボン、ロープ、棍棒、フープ、ボールをつかって優雅でスキルフルな技を披露します。私はテレビで新体操を見たことはあったけれど実際に生で演技を見るのは初めて。動きは柔軟で二十歳前後のかわいらしい笑顔が印象的です。

ブルガリア新体操のオープニングのリボン

こんなにあどけなく見える選手たちも技となるとベテラン。ピンク色の大きな薄手の織物がまるで生き物のようにリングの中央で動き出しその周りは棍棒、フープ、ボール、リボンなどをお互いに投げ上げてキャッチ。その正確さは目を見張ります。振り付けは早いテンポでフォーメーションが変化していき次から次へ形を変え観客の目を惹きつけ、最後は円形のフォーメーションでメリーゴーランドのように回転しながら選手たちのリボンが中央で編み込まれてフィナーレです。

新体操のリボンでメリーゴーランドのフィナーレ

赤いミステリアスな世界に妖精たちが飛んだり跳ねたりしているような幻想的な雰囲気です。この新体操団はこのツアーのために作られたので2年目のツアーが終わるとチームもなくなります。この2年間の間にサーカス内でボーイフレンドを見つけて交際を続け、翌年の新しいツアーでダンサーに転向したり、プロダクション・ウーマンと呼ばれるいくつもの芸ができるマルチ芸人団員として新たに契約をして居残る選手が何名もいました。彼と一緒に退団してアメリカ国内で結婚したりした選手もいました。私とスティーブがとても親しかったクラウンの一人、ランスのガールフレンドはブルガリア選手のリリア(Lilia)。英語での発音はリリー。名前の意味は百合の花(Lily)。この花のようにきれいで可愛らしい彼女とランスはショー以外の時間はいつも一緒。お互いおとなしいタイプの2人は彼らの世界にどっぷり浸っているかわいい恋人同士でした。また、サーカスバンドのサックス奏者、ジョッシュの新体操選手のガールフレンドの名前は、カミリア (Kamelia)。名前の意味は英語のCameliaとかけて花のツバキ。彼らも仕事以外はいつも一緒。カミリアとリリーは翌年の新しいショーでダンサーに転向しました。彼らは今頃どうしているんだろう、元気でいてくれたらいいなと案じます。

翌年の新しいeditionのショーでダンサーに転向したカミリア(左から1番目)とリリア(右から3番目)

続く。。。


書いたのは、

エリザベス

1990年クラウンカレッジジャパン2期卒業生。7年間日本でクラウンとして活躍後、渡米。アメリカとカナダのサーカスで10年間クラウニングを続行。その後10年間マクドナルドのクラウン、ロナルドのアシスタントを務める。現在アメリカ在住。

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