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人生のはじまり (ツクヨ編)

 ツクヨ様 貴方は本来あんな野蛮な世界に生れる予定では無かったのにあちらの世界の女神の不手際で地球に生れる予定の貴方まで巻き沿いになってしまってごめんなさい。
 そう伊弉諾尊が教えてくれた。地球の高天原に住まう神の1人伊弉諾尊。
 僕は本来、伊弉諾尊様の末裔として生まれる予定でいたにも関わらず不手際を起こしてしまった女神が地球に生まれるはずの僕の魂を異世界に生み落としたという話だ。
 元の時間軸まで遡り 生まれる様にしてくれるという内容を聞いて僕は恐怖を覚えた。
 そして少しだけ希望も…
 前の人生は生まれたときに捨てられた。なぜ捨てられたのかと言うと両親の間に生れたのにもかかわらず 容姿がまったくもって異なるものだったからだ。
 父だった人も母だった人も、金髪で緑の眼をしていた。生まれたばかりの僕はと言うと黒い髪に金色と青のオッドアイ。
 あの世界に生れて捨てられてすぐ奴隷商人に拾われ彼らの中の商品たちに育てられた僕は、隣国の貴族に買われたのだが 冬の寒空の下 僕は凍え死んでしまった。
 僕を大切にしてくれていたであろう貴族様が僕と一緒に買った子を気に入りお嫁さんにしたのだ。一緒に買われてきた子は僕を毛嫌いしており、いつか殺されるのではないかと思うくらいに虐められていた。現世では拷問と言うべきか。あの世界では躾程度にしか思われていなかったが・・・
 そのせいか僕は叩かれる事に殊の外敏感である。

 いつも叩かれて蹴られて、時には火傷をするくらい火を点けられたりと体中傷だらけになるくらい虐められていた。
 捨てられる置いて行かれる日常茶飯事だったはずなのに それはとても悲しい事だと認識している。
 なぜなのか、それは僕が本来生まれる場所の違う魂だったからと言われると腑に落ちた。
 そうか、僕のこの感情は普通だったのか。伊弉諾尊様が教えてくれた。

 元々 地球の日本 高天原に生れる予定だった魂なのだ その感情が通常装備だと。
 僕は僕だ と言う考え方も地球ならではなのだと。僕は犬や猫ではない。一人の人間なのだという考え方は間違ってなかったと 安堵する。

 そうか 今度は地球の本当の親の元に生れることが叶うのか

 そしたらもう叩かれたりしないかな 虐められないかな 蹴られたくないな 等と考えていたら 日本の高天原の神様 伊弉諾尊様があなたの両親はそんな悪党ではないですよと 教えてくれた。

 僕は ホッっと一息。
 少しだけ楽しみになった。伊弉諾尊様が特別にって事で今までの記憶どうする?と…
 僕の答えは、何もやってこれなかったから残して置いてほしいと言った。だけど痛い記憶等には蓋をしたいとも言った。

 伊弉諾尊様はそれを快く了承してくれた。

「さぁ 時間が来たよ。ツクヨ君が生まれる時間だよ」
 と教えてくれた

 あぁ~ 本来の処に戻れるのかぁ~と僕の意識は段々と空へ溶けて行った


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