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旅をする木

旅に出るときに持っていきたいと思う本が1冊だけある。
それは星野道夫さんのエッセー集「旅をする木」
読む時々で心に響く物語が違うから、何度読んでも飽きることがない。

はじめの章「新しい旅」の季節が春から初夏に移り変わる様子を語る短い文章は
いつ読んでもわたしの心に涼しい一風を吹き込んでくれる。
星野さんの文章はとても優しく、言葉というものの大切さを感じさせてくれる。
星野さんの文章はわたしを焦らせることがない。

星野さんが見た景色や吸った空気を肺で感じたいと思ったことがきっかけで、アラスカへ行ってからもう2年の月日が流れた。残念ながらフェアバンクスやマッキンレーなど、エッセーに出てくる場所までは行けなかったけど、あのときに見た大きな自然や氷河から川が生まれるところや入り江の水音など、エッセーを見るたびに実感として蘇ってくる。わたしがこうして日本の片隅でパソコンに向かっている瞬間も、あの入り江では水が波音を立てているんだなと思うだけで心が少し開放される(←クジラの話にひっぱられています。。)

先日1時間半ほどグリーン車に乗って移動する機会があり、荷物の中に「旅をする木」を詰め込んだ。もうすぐ40代半ばになるというのに独り身で、どの方向に踏み出すべきか決めきれずに派遣で働き、色々あって今は実家に戻って暮らしている。もう何年間も何も変わらず、目の前のことだけこなしているだけで何者にもなれずにいる自分が悲しくなる。定期的にやってくるこのモヤモヤとした心に響いたのは「オールドクロウ」の章だった。


「‥けれどもこんなふうにも思うのです。ひとつの正しい答えなどはじめから無いのだと…そう考えると少しホッとします。正しい答えを出さなくてもいいというのは、なぜかホッとするものです」

正しい答えなどない。わたしもホッとした。だから正しいかわからないけどやってみるしかない。そう思えた。失敗してもいい、余計なものは手を出さず、情報に振り回されずに踏み出してみようと思う。

きっとこの先の人生、何度もこの本に助けられるだろう。そんな気がする。

#星野道夫 #旅をする木 #もやもや

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