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自分たちでつくるビジョン体験セミナ

セミナー参加

2024.1.10 ㈱グラグリッド三澤直加さんによる書籍『正解がない時代のビジョンのつくり方』出版記念「自分たちでつくるビジョン体験」セミナーに参加しました。

正解がない時代のビジョンのつくり方 「自分たちらしさ」から始めるチームビルディング(2023/11/15)

ビジョン策定者にかかわる外部支援の共通点

私は組織内あちこちの商品開発プロジェクトに、デザイン部隊としてのトレーナ/リサーチャ/ファシリテータまたはチームを相手にするシステムコーチとして関わるので、商品戦略・コンセプト・ビジョンなどの話し合いをクライアントチームとすることが大変多いのです。現在ちょうど"ファシリテータ時々コーチ"のような役割を取ったプロジェクトがあったので、いつも頭の整理の仕方を見せてくれる三澤さんのお話を聴きに来ました。

すると、案件に関わろうとする際に論点としている内容が今回のお話とかなり重なることがわかりました。違いは本にして他の人もできるくらいきちんと体系的に整理できているか、そうでないかにありました。
内容は今回ご紹介の前述の書籍に譲りますが、ああ一緒だなと思ったのは例えば以下のようなことでした:

  1. ビジョンづくりの5つの壁

  2. 思考のモード

  3. 目指すは星ではなく世界観でありその共有方法

  4. 正解を求める上位マネジメントとのコミュニケーション

など。

ビジョンづくりの5つの壁

5つの壁には、過去にとらわれたり、部署ごとの壁/制約があったり、手段と目標の選択問題などいろいろあるのですが、多くは我々システムコーチがいう「ゴースト」(その場に存在していないのにメンバーのふるまいに影響を持つもの)と似ていました。ちらつく上位マネジメントの影とか、目標管理の罠など最たるものです。また過去から現在に影響を及ぼし続けるゴーストも存在します。これも5つのうちの一つでしたね。なるほど問題の本質への探索過程での視点はシステムコーチに似ているなと、セミナー開始時点から前のめりです。

思考のモード

セミナーでは、サービスデザインの世界的リーダー エツィオ・マンズィーニの言う慣習モードとデザインモードの話が出てきました。ざっくり言ってしまうと、価値軸上で:
a. 問題解決側に寄る態度が慣習モード(物事の良し悪しが明確)
b. 意味形成側に寄る態度がデザインモード(価値判断軸は不安定、探索が必要)
で、b.が増えつつあるよねということでした。過去にとらわれないでビジョンを展開するにはデザインモードも必要になってきたのです。下記に安西さんの記事を引用しておきます:

ならば、みんなb.の態度を取れば新しいことができて良いのかというと、それではコトは進まなくなります。
これも人のコミュニケーションのモードなのだと考えると、システムコーチが使う3つのコミュニケーションレベル(合意的現実レベル、ドリーミングレベル、センシェントエッセンスレベル)の話と似ていることに気づきます。人は異なるコミュニケーションレベルを行ったり来たりして対話するモデルなのだという理解です。企業のオフィスで通常交わされる会話は多くがa.のモード(合意的現実レベル)です。とても効率的でGo/NGも明確です。しかし実際には、より深い意識レベルに渦巻く様々な感情、価値観の影響をうけながら人は対話をしているのでした。このような多種のモード、あるいはレベルはどれか一つ、いずれか一つ、ではなく常に双方存在しているものです。
モードやレベルという概念を持つことで、意識的に複数のステージを行き来することができ、多様な視点を得て活かすことが可能です。個人でもメンバー間の関係性においてもです。

3つの現実レベル

あるいはb.は、ロベルト・ベルガンティ教授のいう「意味のイノベーション」を目指すモードだとも言えます。コトの本質、意味のシフトを突き詰める先に新たな価値が生まれるという立ち位置です。
実は効率化組織においては、このコトの本質追求に時間を割くということ自体が難しいことも知っています。私は、これを知的安全性の高低の問題、と位置付けて昨年末書籍に図を載せました(『哲学思考』p.200)。本当に多様な目玉を入れて新しい意味を見出すには、思考の質である本質追求とともに、関係性の質が上がっていなければならないという意味です。両方上げてハイパフォーマンスチームを生もうというのが私の本来仕事にしようとしている部分ですがこれは今回のセミナー外の話なので、別途書きます。

関係性の平面 ©Masahiro Ibaragi,2023

セミナーが進むにつれ、多層的にあちこちのフレームワークが重なってくる楽しい体験でした。

目指すは北極星ではなく世界観でありその共有による進化

セミナーでは前述の動的な価値軸の話につながって、大きな目的をたった一つの北極星にはしない、という態度が提示されました。
ここでは北極星は固定された価値観で設定される目標点の例えとして使われています。ビジョンにはもっと個々人の解釈に自由度をもたせることで参画できる人も多様になり、様々な価値を包含できて素晴らしいですよというお話でした。
私は通常北極星を、目的としている状態、目の前に広がる景色であり世界観、と説明していたので、実質考えていることは同じだったなと思っています。
同じであることを確信できたのはその世界観の表現方法が似ていたからです。今回紹介された事例では、ビジョンを一つのメタファーで表現するところからその状態を空間的に広がる大きな地図、絵巻にして共有し、かつ次々と拡大していました。
これは、すなわち世界観の中に複数の「物語」を載せてデリバリーしているんですね。例えば:

a. LEGO® SERIOUS PLAY®メソッドを扱う認定ファシリテータでも私達は、組織のビジョンに絡んで、それを最終的にはLEGO® ブロックを使った「作品」で表現し、皆でその作品の持つ物語を語ってもらう、という共有、語り継ぎをすることがあります。とてもパワフルなメソッドです。

b. マサイ族の「テリトリーマップ」から転じた「コミュニケーションマップ」という、空間と時間の両方を表す大きな地図を作って、組織のビジョンを時間軸も異なる多数の物語を紡ぐ形で表現し共有したこともあります。全員で創るLEGO® ブロック同様、非常に高い熱量でその物語を語ることができるのが特長でした。特に組織外の人への説得力が強かったのを覚えています。

c. もっと卑近なところでは商品のコンセプト自体も、それを取り巻く多様な人々の想いや関係性を地図にすることで、複数ある自分たちのサービスの役割を明確にしていく、という図を媒介にしたリサーチサービスをしています。
そう、目指すのは、ひとつの仕様ではなく、構築したい世界観なのです。

最後はやっぱり上位マネジメントとのコミュニケーション

セミナーでは会場から多々出てきたのは、「そうは言ってもわかってもらえないんです」という悲痛な叫びでした。
ただ、話を聴けば聞くほどどこの組織も問題はほぼ同じでした。ということはたった一つ処方箋があれば周り中の組織を救えるのですね。これはいい話です。
講師の経験談からも、いつでも効果が出る銀の弾があるのではなく、多彩な武器の使う順番を工夫しながら対応している姿が浮かんできました。そして、装備は何百と揃えなくても大丈夫だという感触も持てています。みな同じことで悩んでなんとかしているので、なんとかなるのです。

アプローチには自由度がある

ビジョン構築には型がいくつかあること、活用方法は柔軟であることを今回改めて認識させていただきました。
あちこちで様々な人たちが提唱している方法論、アプローチは本質的には相互に極めて似通っていること、状況に応じて多様なアプローチをとっても構わないこと、などがとても腹に落ちた時間だったなと思います。
一番うれしかったのは、ビジョンって「世界観」だよね、という共感が持てたこと。まさにその通りです。

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