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行列のできるインタビュアー宮本恵理子さんとの対談で、「聞く」がもたらすたくさんの可能性に気づいた。 ー前編[出会いとkikikatsu編]

クラウドボックスが出会ったひとVol.8 前編[出会いとkikikatsu編]
[座談会]
宮本恵理子(インタビュアー・ライター・編集者) ×
徳永健(クラウドボックス代表・かるたプロデューサー)

『吉祥寺かるた』を制作する少し前、「吉祥寺」つながりで知り合った宮本恵理子さん。出会いから5年が経過した今、宮本さんが講師を務める講座「THE INTERVIEW」卒業生コミュニティのロゴをクラウドボックスでデザインさせていただいたことがきっかけとなり、今回の対談が実現しました。
「インタビュー」は、日常の中で誰もがやっていることで、「それはとても楽しいもの」であることをたくさんの人に知ってもらいたいという宮本さんの想いに触れ、そして「聞く」ということがもたらす無限の可能性に気づき、わくわくが止まらない対談となりました。
[後編はこちらから]

2024年5月7日 Musashino Valley にて/進行・文 WordDesigner 竹野恭子

出会いは『吉祥寺ブックマンション』から。
そして『吉祥寺かるた』の読み札に応募してくれた宮本さん。

ーーー本日はよろしくお願いします。『吉祥寺かるた』持ってきたんですが。(札を無造作にめくると、偶然にも「て」の札が出る)

『吉祥寺かるた』て札

徳永 お。これですよ。

宮本 わ!これですね。

徳永 宮本札「徹夜で羊羹」
『吉祥寺かるた』を作るときにSNSで吉祥寺の皆さんから読み札を募集して、そのときに宮本さんから投稿していただいた札です。

宮本 そうでした、そうでした。

徳永 あのときは、300ぐらいのアイディアが集まったんですけど、投稿された読み札がそのまま採用になったのって実はそこまで多くないんですよね。五十音に当てはめなきゃいけないし、長すぎたりもあったりでほとんどの札は編集しているんです。
「徹夜で羊羹」は、見た瞬間に「あ、1枚決まったな」って思いました。

宮本 ほんとですか?光栄です。

徳永  多分、読み札の中で一番短いんじゃないかな。

宮本  言い切ってる表現でね。

徳永   さすがだなと思った瞬間でございました。

『吉祥寺かるた・て』の札を手にする宮本さん。

ーーー読者の方にもわかるように、宮本さんとクラウドボックスの出会いからお話していただけますか?

徳永   宮本さんとクラウドボックスの歴史をおさらいすると…。

宮本  もう何年前になりますか? 2019年?

徳永   2019年の夏でしたかね?

宮本  暑い日でした。

徳永   この対談シリーズではたびたびお名前が登場する、楽天大学の仲山学長(仲山進也さん)に声をかけてもらって、お引き合わせいただいたんですよね。同じく vol.02に登場した中西功さんが、ブックマンションをオープンするときでした。

宮本  中西さんが吉祥寺でブックマンションをオープンするにあたって、仲山さんが「現場を見に行きたい」となって、ついでに「吉祥寺の人を何人か繋げちゃおう」ということだったかと。ちょうど私はブックマンションのクラウドファンディングにも参加していましたし。

徳永   出会ったときには、既に参加されていたんですね。

宮本  楽天大学学長の仲山さんとは元々知り合いで、Facebookでも繋がっていたんです。中西さんも元楽天の方ですし。仲山さんが「こんなクラファンがあります」って投稿されていて、私が「面白そうっ」て反応したことで、つなげてくださったんだと思います。

徳永   あのときは、中西さんと、仲山さんと、宮本さんと僕の4人で、ブックマンションの屋上に登りましたよね。

宮本  晴天の屋上で写真を撮りましたね。

吉祥寺ブックマンションの屋上にて。
右から宮本さん/仲山さん/中西さん/徳永。
調べたところ2019年6月13日のことでした。

徳永 今思い返しても、あれはなかなかすごい瞬間だったなあと。中西さんとは、それからずっと仲良くさせてもらっているし、『吉祥寺かるた』を作るときも一緒にいろいろなことを考えてくれて。ありがたいつながりを作っていただきました。

宮本 お会いしたその日に、クラウドボックスのオフィスにもお邪魔しましたよね。あのときは不思議なくらいにリラックスした時間が流れていて。初めましての人が何人もいるはずなのに、とても居心地がよかったのを覚えています。

徳永 まだ宮本さんがどんなお仕事をされている方なのかも、よく知らなかったんですが、でも妙な安心感がありましたね。

宮本 私ね、「前にお会いしたことありましたっけ?」って聞かれることが多いんですよ(笑)。よくある顔のパーツなのかしら?

徳永 宮本さんは菩薩顔なんじゃないかって、僕は思っているんですけど。似顔絵を描こうとすると観音様みたいになるんですよ。眉毛のラインとか。

宮本 さすが絵を描く方は、そうやって見えてるんですね。そういえば、取材先で「君は観音様みたいだね」って言われたことがあります。
とくさん(徳永のこと)もすごく印象的というか。初対面でお話したとき、とてもストーリーのありそうな方だなという印象でした。

徳永  僕は「行き当たりばっちり」っていうワードを、人生のポリシーみたいに考えていて。日々色々な出会いがある中で、そのひとつひとつが結果オーライってなっていくように、「動いて」「つないで」「何かに結びつけていく」ということをずーっとやってきてるなって思ってるんです。あの日中西さんと宮本さんを紹介してもらえたことは、僕にとっては超ラッキーでした。新たなアクションへのきっかけとなったわけですし。

宮本 私にとっても超ラッキーでしたよ。

徳永 そう言ってもらえると嬉しいです。あの出会いの後に『吉祥寺かるた』を作り始めたんですよね。中西さんと知り合って、「何か一緒にやりましょう」ってなって、色々と考えていく中で「ご当地かるた、今熱いですよ」って盛り上がって。
作り始めたのが2019年の秋ぐらいで、その年末に完成しました。ブックマンションでやったお披露目会には宮本さんにも来ていただいて。

宮本 はい。記念すべき『第1回吉祥寺かるた大会』ですね? 盛り上がりましたね。

徳永 宮本さんの他にも、中西さんのつながりで色々な人が来てくれました。宮本さんの息子さんも来てくれましたし。

宮本 そうそう。平成生まれ、令和生まれの子どもたちってなかなか『かるた』なんてやる機会がないのかもしれないけど、やってみるとすごく楽しんでましたよね。

徳永  やったことがなくても、みんな熱くなりますよね。


イラストレーション by 徳永 健

出会いから5年。やっとお仕事をご一緒する機会が巡ってきた。

ーーー宮本さんがインタビューとライティングについて講師をする講座「THE INTERVIEW」。その卒業生有料コミュニティ「kikikatsu」のロゴをクラウドボックスがデザインさせていただきました。

徳永 「THE INTERVIEW」の講座は、クラウドボックスのメンバー・竹野も受講させていただいて。コロナ禍の時だった(2022年春)と思います。

宮本 とくさんから竹野さんに薦めていただいたんですよね。

徳永 そう。宮本さんと出会った直後からずっと薦めていたんだけど、なかなかその気になってくれなくて(笑)。コロナ禍になって、我流でやっていたインタビュースキルに磨きをかけたいという気持ちになったみたいで、受講したいと手を挙げてくれました。

宮本 ありがたいですね。

徳永 最初はめっちゃ緊張してたけど、あとはもう宮本さんの菩薩パワー?で、なんだか楽しそうにやってました。

ーーー我流でやってきたインタビューの準備から本番・執筆まで、「これでいいんだ」という確認もできましたし、もっとこうしたらよくなる、こんな風にしておくと便利!という目からウロコのTipsのようなものもたくさん教えていただきました。悩めるインタビュアー・ライターの方たちともつながることができたのは大きかったです(竹野)。

徳永 「THE INTERVIEW講座」はどんな感じでやっているんですか?

宮本 ”インタビュー特化型ライター養成講座”と冠をつけているのですが、インタビューの手法やライティングの手法などを3回に分けてお話しています。現在26期生を募集しているところです(2024年6月現在)。

徳永 受講者は皆、ライターさんなんですか?

宮本 初期の受講メンバーは本業で何かしらライティングに携わっている方が半分以上いらっしゃったんですけど、10期くらいから、それ以外の方も増えました。インタビューの間口が広がったタイミングとも重なったのだと思うのですが。

徳永 コロナ禍の時ですよね。

宮本 コロナ禍で「クラブハウス」や「Voicy」などが知られるようになってきて、 ”人に話を聞く”というステージが増えたのではないでしょうか。「インタビューをやってみたい」とか、オウンドメディアを始める企業も増えて「オウンドメディア担当になっちゃいました!」という受講者の方もけっこういらっしゃいました。

徳永 動画のためのインタビューとか、書くことが目的じゃない受講者も?

宮本 いらっしゃいますね。「インタビューってどうやるんですか?」というところから入る「異業種ビギナー」の方が増えました。

徳永 きっと、宮本さんが『聞く技術』を出された影響もありますよね。「聞くことが上手になりたい」という方が幅広く受講するようになったのかも。

宮本さんの著書
『聞く技術』 ダイヤモンド社 (2021/10/27)

宮本 それはあるかもしれませんね。そもそも『聞く技術』の本も、講師もなんですが、最初は「伝える立場・教える立場になるなんてとんでもない」と思っていたんです。でも、出版社で10年近くもの間先輩に教わるばかりで、後輩に教えることができないままフリーとして独立してしまったので、ちょうど40歳くらいのタイミングになったとき、「好き勝手やっている」という罪悪感のような気持ちが募っていたんです。

徳永 教えてみてもいいかなというタイミングが来たんですね。

宮本 「教える」って、気構えなくても、「一緒に学び合う」という気持ちで始めたら楽しくなっちゃって。

徳永 なるほど。教える側になっても、元々聞くスタンスを常に持っていらっしゃるから、楽しむことができるんですね。一方的に喋るのではなく、受講者の方たちをまず受け止めるところから始めていらっしゃる。

宮本 デザインの仕事もそういう部分があるかもしれないのですが、インタビューやライティングの仕事は一人ひとりが自己流で「正解」がないことがほとんど。それぞれが大切に思ってることをシェアできる場があるといいなという想いでやっています。でも3回の講座でできることは限られているので、それぞれのインタビュー現場で起きたうまくいかなかったときの解決法をシェアしたり、他の人だったらどうやるのかコメントをもらえたりがもっとできたら…という想いが次第に大きくなっていきました。

徳永 取材の現場って、インタビュアー同士で立ち会うことってほぼないですしね。

宮本 そうなんですよ。受講生は卒業後もFacebookグループでつながっていて、インタビューの練習の場を必要としている方とか、まだまだ知りたいことがある方たちがいることを感じてはいたものの、今までは具体的な活動に至ってなかったんです。で、卒業生の皆さんで学び合いができるコミュニティを作ろう!となりまして。

徳永 それぞれの場所で、一人ひとりが異なる経験をして学びになったことをシェアできる場ってなかなかない。宮本さんの講座で得たことをインタビューの現場で実践して、「実際こんな風だった」とかをシェアしたくなりますね。それができる場が「kikikatsu」ということですね。

宮本 はい。「kikikatsu」の名前も参加者の方が考えてくださったんですよ。インタビュー現場での不安やモヤモヤを解消できたら…っていうのもあるんですけど、あと単純にね、やっぱりインタビューアーという職業は存在するけれど、インタビューそのものは誰もがやってることじゃないですか、日々の会話として。だとしたら、「話を聞くことは楽しい」ということをたくさんの人がわかったうえで、実践したら、「これは平和につながるのでは?」って思ってるんです。

徳永 それは確かに、そうですね!

宮本 深い納得感がありますね。

徳永 本当にそう思いますもん。

「聞くこと」が楽しくなれば、「平和」につながる!?

宮本 友人関係、家族関係、会社関係、何においても「話を聞くことは楽しい」という前提があれば平和につながっていく。

徳永  いや、ほんとそうですよ。国際関係においてもそうですよね。

宮本  国際関係も!確かにそうですね!

徳永 「自分をどうやって主張しようか」っていうのも、うまくいきそう。

宮本 うんうん。そうなんですよ。そういうことをシェアしたり、広げられる場にできたらと『kikikatsu』をはじめました。あとやっぱり皆さん「孤独です…」みたいなつぶやきをよく耳にするので、横のつながりができたらいいなというのもあります。

徳永 今はどんな活動をされてるんですか?

宮本  最初は本当に数人から始まって、リアルランチ会をしたり、オンライン相談会をしたり。あと私がブックライティングや本の執筆など、手がけた作品が出たときは、それを題材にして質問を受けたり。

徳永 「こんなのやりましょうよ」というアイデアが会員の方からも出てきたりしますか?

宮本 そうですね。皆さんの要望も聞いて、最近は新しい企画がどんどん生まれています。インタビューのトレーニングみたいなことも、先日やってみたんですよ。

徳永 どんな感じでやるんですか?

宮本 オンラインだったんですけど、2名の方がお互いテーマを決めてインタビューしあって、オーディエンスもいて全員でフィードバックするという。

徳永 いいですねそういうフィードバック受ける機会って案外ないですし。先日ここ(対談会場:Musashino Valley)で開催された、伊藤羊一さん(Musashino Valley代表)の講演の中で1on1のフィードバック会をやったんですよ。僕も会社のメンバーと月に一度1on1をやっているんですけど、そのフィードバックをもらうってありえないじゃないですか。そもそも第三者が聞いてたら1on1じゃなくなっちゃうので。それが、傍聴している参加者の方から「せっかくあの話になったのに、もっと聞いてあげなかったのがもったいなかったです」みたいなコメントいただけて新鮮でした。

宮本 やっぱりそれは、「フィードバック会」っていうたてつけがあるから遠慮なく言えるんですよね。そういう場はありそうでないなぁと思って。
このコミュニティを立ち上げて『kikikatsu』というネーミングが決まったときに、そうしたコミュニティの活動や想いを象徴するシンボルを作りたいと考えたんです。そこで『kikikatsu』メンバーの竹野さんを通じてクラウドボックスさんに相談して、ロゴが誕生しました!

徳永 竹野から「ロゴマーク、クラウドボックスで作れないか?」と打診がきたとき、「お任せください」とね。即答しました。

宮本 本当にありがとうございました。何案も出していただいて、どの候補もすごく考え抜かれていて良かったので、絞るのが難しかったです。

クラウドボックスがデザインした「kikikatsu」ロゴ

宮本 選んだロゴは「聞く」の花の輪。よく見ると、「K」と「i」になっていて。

徳永 デザイナーからデザインの説明を聞かないと、多分そこまではなかなか気がついてもらえないと思うんだけど(笑)。輪になっている、繋がってるっていう雰囲気を出しました。

宮本 このロゴマークを誰かに見せるときに、デザインストーリーを説明したくなるのがいいなと思っています。

徳永 説明するときに、さらに一言添えたり、さっきの「聞くことの楽しさ」の布教(?)に一役買うことができるといいなと思います。「聞くを楽しむコミュニティ」とつけたバーションのロゴもありますしね。

宮本 とくさんと5年前にお会いして「ようやくデザインをお願いできるまでに至りました」というのが感慨深いです。

徳永 なんだかんだ言ってね。ちゃんとお仕事として
繋がったのは初めてでしたからね。

会員になるともらえるロゴの入った「kikikatsu」会員証

ーーー 後編へ続きます

宮本 恵理子/インタビュアー・ライター・編集者
福岡出身、日経BPを経て独立。主に「働き方」「生き方」「夫婦・家族関係」のテーマで人物インタビューを中心に執筆。編集者として書籍、雑誌、ウェブコンテンツなども制作。主な著書に『大人はどうして働くの?』『子育て経営学』『聞く技術』(日経BP)など。家族のための本づくりプロジェクト「家族製本」主宰。インタビュー&ライティング講座「THE INTERVIEW」講師。

インタビュー会場として使わせていただいたMusashino Valley
次のステップに踏み出そうとする人たちのためのイベントや活動の場として
2023年にオープンしたスタートアップスタジオです。
宮本さんもパートナーとしてこの事業をサポートしています。


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