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コロナ禍の今から取り組むべき外国人材受け入れの課題解決。 「つながるダイバーシティ」への道筋

2021年4月、内定ブリッジ株式会社と共に外国人向け教材「つながるダイバーシティ動画研修」をリリースしました。外国人材の受け入れにあたっての課題はどこにあるのか、それらの課題を解決するにはどうしたらいいのかについて、内定ブリッジ株式会社の淺海さんと当社の齋藤が対話しました。

淺海さん

▲内定ブリッジ株式会社 代表取締役 淺海一郎氏

淺海 一郎(あさみ いちろう)
全国の外国人雇用企業に対し、社内体制整備や異文化コミュニケーション研修、ワークショップ等を提供(約1,000社/年)。ビジネス日本語教師。国際交流基金(JF)客員講師や東京都「中小企業における外国人材活用に関する検討会」委員、日本貿易振興機構(JETRO)高度外国人材スペシャリスト、経産省「外国人留学生の就職や採用後の活躍に向けたプロジェクト」政策検討委員会委員、その他厚労省有識者委員会委員等を務める。


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▲ClipLine株式会社 執行役員 エンタープライズ営業部 部長 齋藤 誉

齋藤 誉(さいとう ほまれ)
日本マイクロソフトにおいてパートナーディベロップメント、プロダクトマーケティングを経験後、ビジネスアプリケーション領域のソリューション営業責任者に着任。その後、株式会社インタラクティブソリューションズにおいて、経営企画・事業開発・営業を統括、2017 年に取締役を務めた後、2018 年 5 月に ClipLine に参画しエンタープライズセールスを統括。
中央大学文学部社会学科卒。

外国人材の受け入れ課題は外国人側・企業側の双方にある

―外国人材の受け入れにあたり、どのような課題があるのでしょうか。

齋藤:大きく二つあると考えています。一つ目は、微妙なニュアンスを伝え、理解してもらうことの難しさですね。いくら日本語ができる外国人の方であっても、彼らにとって日本語が母国語でない以上、テキスト形式のマニュアルで細かいニュアンスを理解しきることは困難です。

二つ目は教育対象が外国人材だけに偏っている点ですね。外国人材に向けた教育エッセンスが多い一方で、受け入れる側となる企業やマネージャー、現場上司を対象としたエッセンスが不十分というアンバランスな状態にあるんです。外国人人材を受け入れるには、外国人と受け入れ側の双方の視点を学び合い、つながっていく必要があるでしょう。

淺海:今回は外国人材の受け入れという視点でお話をしていますが、課題の自己分析ができなかったり、互いの問題を意識できなかったり、行動変容を起こせなかったりといった問題は日本人同士でも起こり得るものです。そのため、外国人材の受け入れに当たって、日本人と外国人の間に起こる問題を解決することは、日本人同士の問題解決にも役立てられるといえます。

受け入れ企業側が知見を得るのは、今、本当に大切なことです。自社に外国人人材がいるから他の外国人人材の教育はその人に任せてしまおうとか、英語ができる社員に対応を丸投げしてしまおうといったケースを見かけるのは少なくありません。異文化マネジメントのトレーニングを受けている上司があまりいない上、会社としても取り組んだ前例がないので丸投げされてしまうわけです。これは組織としてかなり問題だと思います。

外国人材が活躍すると、受け入れに反対していた人が賛同側に回ることも

―課題の解決方法についてお教えください。

齋藤:どちらの課題も、対象者に合わせた動画コンテンツを活用することで解決できると考えています。動画であれば実際の動きを見ることができるため、言葉だけではうまく伝えられない部分をカバーできます。また、自分が理解できるまで何度も繰り返し見ることができる点も利点でしょう。企業側にとっては、動画を一度用意すれば、次に新しく人が入ってきたときにも「これを見ておいてください」と言うだけでスムーズに研修につなげられるメリットがあります。

淺海:動画でロールプレイングを見て学ぶことで、シチュエーションごとに微妙に異なるニュアンスを理解できます。文化的なギャップを理解するためにも動画は非常に相性のいい教育ツールだと思いますね。また、一度動画を作り込むことで「講師に依存せずに済む」点もメリットです。同じ質の教育を全員に提供できますからね。

―受け入れる企業側の課題解決はいかがでしょうか。

淺海:外国人材の受け入れ体制の整備についての危機感は人それぞれ異なります。私の研修でも、必要性を理解できない方がいます。経営者やマネジメント層が抱いている「今、外国人材の受け入れ環境の改善をやらなければならない理由」をいかに現場社員にも伝えていくかが大切ですね。現場社員の行動変容はハードルが高いので、教育ツールを用意して渡すだけでは難しいでしょう。根っこにあるマインドセットを変えるには、コンサルタントの力を借りるといった工夫も必要だと思います。

ちなみに、外国人材の受け入れに反対していた人が賛同側に回る瞬間もあるんです。それは、受け入れた外国人材が活躍したとき。そのため、活躍できる環境をいかに作ってあげるかも推進する側の役目ですし、彼らを支援する私たちの仕事でもあると思っています。

―新サービスの「つながるダイバーシティ動画研修」が課題解決に寄与できる点はどこでしょうか。

齋藤:ミスコミュニケーションを考えるきっかけを作れる仕組みがあることですね。教材動画がYouTubeにアップされているのですが、動画自体のクオリティがいくら良くても、YouTubeでは「見ただけ」で終わってしまうおそれがあります。また、本当に最後まで見てくれているのかどうかを把握することもできません。

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▲YouTubeにアップされている動画の一部(経産省提供)

本サービスは、どの動画をどこまで見てくれているのかをデータで確認することができるように設計されています。また、視聴して一方的に受け取るだけではなく、録画機能を用いて意見をアップロードする機能も用意しました。録画データは公開設定にできるので、他の人たちがどんな風に捉えたのかも知ることができます。外国人人材向けに留まらず、幅広く活用していただけると思いますね。

人材不足になってから始めるのでは厳しい。今から取り組み始めることが肝要

―新型コロナウイルス感染症の影響もあり、外国人材受け入れの現状は数年前と異なっているかと思います。現状と今後について、どのようにお考えですか。

淺海:英語が話せる優秀な外国人の学生に「日本を勤務地に選びますか?」と聞くと、よほど日本好きの方でなければ正直厳しい回答が返ってくるのが現実です。バイアスもあり、優秀な海外人材からは「日本は働きづらいんでしょう?」と聞くことがあります。「働きやすいから、住みやすいから」と思って日本に来てくれる外国人の方が少ないことに危機感を抱いていますね。本当は国が率先して変えていかなければならないことだとも思っています。

齋藤:「コロナがあるから、今はまだ外国人受け入れ環境の整備には取り掛かれない」とおっしゃる企業もあります。採用を一旦止めたり消極的になったりしている企業は多いですね。ただ、止まっている間に何もしないでいていいのかという話だと思います。外国人採用やインバウンドが戻ってきたとき、何もしてこなかった企業は一気に人材不足問題が噴出するのではないでしょうか。優秀な海外人材がほしいと思っても、簡単に入ってもらえるわけではありません。入社してもらい、育てることも考えていただきたいですね。

淺海:外国人の採用が今難しくても、土壌づくりとして企業側が異文化マネジメントトレーニングを受けることはできますしね。組織からいかにダイバーシティに向かって舵を切っていくのか。その支援は私たちにとってやりたいことですし、やらなければならないことだと考えています。

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淺海さん、齋藤さん、ありがとうございました。アフターコロナに差し掛かり、経済が復興した際にはまた人材不足の問題が浮き彫りとなり、外国人材の手を借りなければいけない事態が訪れることでしょう。今まさにご活躍いただいている外国人材への対応も含めて向き合っていただき、グローバル視点での生産性向上を目指したいですね。