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改めて動画の「すごさ」を考える

こんにちは、ClipLineの高橋です。当社のプロダクト「ClipLine」は動画を使って店舗マネジメントや人材育成を行うプラットフォームなので、今回は動画というメディアについて掘り下げてみようと思います。

まず、動画コンテンツの草分け的な存在と言えばやはりYouTubeだと思います。TikTokやinstagramの方が身近に感じる方もたくさんいると思いますが僕はまだそこまで行きつけていません。
Youtubeでは、「のがちゃんねる」という、筋トレやボディメイク方法を発信しているコンテンツをよく見ているのですが、「30日で腹筋を割るトレーニング」を真似してやっているうちに、本当に30日で腹筋を割ることに成功しました。

これまで自己流でどれだけやっても割れなかった腹筋が、たった30日で、しかも大した労せずに達成できたのです。やはり結果を出すには正しい方法を知り、そして再現する。これが何よりも大切だと改めて感じました。

このような「動作習得」に動画はうってつけのメディアです。ClipLineで動画を使っているのは、動画の持つ特性が情報伝達に最も適していると考えているからです。

特性1.動画は分身して拡散する

例えば僕が「のがちゃんねる」を見て筋トレを始めた時、繰り返し同じ動画を見て一緒にトレーニングをしていました。が、配信者側からすれば動画の撮影や配信はたった1回で、100人のために100回同じ事を話したりしてみせたりする必要はありません。動画の自分が繰り返してくれるからです。

そして、再生回数が増えれば増えるほど、分身の術のように自分の持っているノウハウをより深く、より多くの人に周知することが可能になり、追加コストはゼロで自身の出せる付加価値を動画の再生回数分増やしていけるのです。文字にすると落ちてしまうような、配信側の雰囲気や熱量も損なわないので、より正確な温度感での伝達が可能になります。

特性2.編集によってメッセージ性を変えられる

ノウハウ集積の賜物、テレビ
長い期間と膨大な資金をかけてノウハウが集積された最大の動画メディアはやはりテレビでしょう。CMで離脱されないよう、クイズ形式で締める、続きが気になる所でCMを挟む等、番組の作り方には様々な工夫があります。また、途中から視聴をはじめた人も内容の理解が出来るように、前提情報を端的に伝えてからCM明けするなどの工夫もあります。
最近では視聴率の低下を防ぐための苦肉の策として、あからさまな「CMまたぎ」が散見されるような側面もありますが、それを差し引いてもテレビ業界にはアテンションの引きつけ方のノウハウがたくさん蓄積されていると思います。

興味喚起の工夫が詰め込まれたWeb広告
Web広告でも動画が盛んに用いられるようになりました。内容をコンパクトにまとめ、一瞬で注意喚起させ、視聴者の感情を動かす工夫が詰め込まれています。
「のがちゃんねる」に続き、また運動の話になるのですが、僕はテニスが好きでスポーツCMをよく見ます。ハイライトシーンを寄せ集めたダイジェスト版とも言える短尺コンテンツはよく目にしますが、なかなかバリエーションがあって面白いですよね。1試合のダイジェストなら、得点が入った瞬間、クリティカルプレイの瞬間などを通して見て内容を把握できるし、様々な試合から珍プレイだけを集めたコンテンツ、笑えるコンテンツ、泣かせるコンテンツなど、場面場面を切り取って編集し、総集編にすることも可能なのです。ひとつの事実を様々な見せ方にアレンジできる、これも動画の魅力のひとつです。

また、何か一つのプレイを見せる場合にも、角度を変えて同じプレイを何度も見せる、スロー再生で見せるなど、興味喚起のための様々な工夫がされています。会場の人混みの中の一角度から選手を見るより、様々な速度、角度で同じプレイを何度も見れる方が意外と楽しめたりしますよね。見方によっては、編集されている動画がリアルに勝るというのは十分可能性のある話でしょう(もちろん会場の臨場感を体感することも捨てがたいですが、コロナ禍において動画観戦は断然おすすめです)。

思わず作りたくなるレシピ動画
ほかに、興味喚起の工夫をうまく施しているのが短尺のレシピ動画です。
レシピというのは、メニューを決めてから検索するのが一般的だったのですが、「ネットでレシピ動画を見ていたら作ってみたくなった」という逆転現象を起こしたわけです。まず、完成後の美味しそうな画像で注意喚起し、間髪入れずに材料を紹介、調理の手順をテンポよく次々にさばいていく。トータル数十秒で終わるわけですから、これなら簡単に作れそうだとそれほど料理上手ではない僕でも思います。

このように、動画というメディアは、他の情報や媒体とコラボレーションすることで、メッセージを強めたり、偏らせたり、新たな市場を開拓する可能性を秘めています。また、感覚的(右脳的)な理解がしやすいので、言語の壁、年齢の壁を限りなくゼロにし、多様性に対応しているという性質もあります。
しかし、当然ながら動画には苦手な分野もあります。

特性3.視聴ペースが決まっている

例えば本と比べてどうでしょうか。本は自分のペースで読み進めたり、パラパラめくって全体を把握したり、気になる所だけを読むことができます。動画は二次元の画像に加え、時間という概念を加えた三次元の媒体ですので、時間の制約があります。YouTubeなどにも速度調整の機能はありますが、自分の裁量で自由自在にとまではいかず、ある程度の限界があります。映像の把握もシークバーを通してサムネイルを見るだけでは内容自体は分からないので不十分ですよね。
逆に全編見てほしい情報しかない!という場合には優位になる点でもありますが、欲しい時に欲しい情報のみをピンポイントで得るのはまだ工夫が必要です。

特性4.検索が困難

皆さんも見たことがあるかもしれませんが、YouTubeにはアクセスアップを狙ったサムネイルやタイトルと内容が異なる動画が多く存在します。なぜアップロード時に摘発できないかというと、それを検索・検閲する機能がなく、制御することが現状では困難であるためと思われます。

文字で伝える電子書籍であれば内容の検索が可能で、かつハイライトを共有できるなどインターネットとの親和性も高いですが、映像の検索機能はまだまだこれからだと感じます。動画の中の会話やナレーションを文字起こしして検索にかけることもできますが、その場合には動作や表情といった非言語情報が抜け落ち、映像だから上乗せできていた情報が欠けてしまいます。これでは映像内の検索ができているとは言いづらいのです。

この問題はテクノロジーの進化とともに解決されると思いますが、まだ先のことになると予測しています。
これらの特性を踏まえ、動画の未来を予想してみましょう。

予測1.情報密度の増加

今後もヒトのアテンションを引くための研究が進むに伴い、1秒あたりの情報量は増加していくと考えられます。ただ、人間の認知にも限界がありますから、どこかで臨界点を迎えることになるでしょう。
認知の限界に挑むかのように、動画広告市場では一層の短尺化が進み、ビデオリサーチインタラクティブ社の調査によると6秒以下の動画広告が1年間で大幅増となっています。これは2017年の調査なので、現在はさらに短尺化の傾向が顕著になっていると考えられます。

【図表1】PC動画広告素材の秒数分布 推移

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出所:株式会社ビデオリサーチインタラクティブ

参考:動画の短尺化がますます進行中
Instagramのフィードに投稿される動画のうち、半数近くの45%が15秒以下である
2017年9月、TikTokがリリースされたのをきっかけに、短尺動画に特化したサービスが相次いで始まりました。2020年8月にInstagram Reelsが、
2020年9月にはYouTube ショートがインドでリリースされました。
SnapchatでもSpotlightが2021年3月にリリースされたばかりです。


予測2.パーソナルメディアへの移行が一層進行する

テレビが限られたチャンネル数と決められた時間帯での視聴を強制するのに対し、YouTubeやTikTokなどのタイムラインはオンデマンドです。個人ごとにバラバラで無限にチャンネルの選択肢があります。情報源の軸足が今よりさらに個人に移行する場合の前提条件は、コンテンツがリッチにあることです。若年層を中心に、日常の何気ない風景を動画で撮影してWebにアップしてシェアする行為は定着しつつありますが、さらにその数が増え、使い方が多彩になるにつれ、メディアの勢力図は大きく変容していくでしょう。

参考:2020年はYouTubeのコンテンツをテレビで見るケースが急上昇。テレビに代わりお茶の間の主役となりつつある。

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出所:Think With Google

世界には総人口を上回る数のカメラが存在する?

総務省の統計によると、世界の携帯電話利用者数は2020年で43億3,400万人(予測値)となっています。

全世界での携帯電話加入数の推移

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出所:総務省Webサイト

iPhone11や12にはデュアルまたはトリプルカメラが搭載されており、スマホや携帯電話以外に一眼レフカメラやデジタルカメラを保有する人を加えると、世界には総人口を上回るぐらい多くのカメラが存在してもおかしくないと言えます。

参考:CIPA一般社団法人カメラ映像機器工業会「デジタルカメラ統計」
毎年1,000万~2,000万台程度のカメラが出荷されている

スマホ用の編集ソフトの扱いは簡単です。AIなどで自動的にフォトムービーも生成してくれますので、編集コストはさらに下がり、半自動的に動画コンテンツが量産されていきます。当然、ヒトが動画を見る時間もますます長くなっていくでしょう。動画市場の拡大に伴い、最大限有効活用していく方法をこれからも考え続けていきたいと思います。