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1月2日「朝陽」

朝目覚めると、いつものキラキラした均一で規則的な気持ちのいい朝の光ではなく、まるでくもり硝子がそこにあるかのような、不規則でふわふわとした和やかな光が部屋の中に差し込んでいた。六畳間の寝室に差し込んだ光たちは波打つ陰をつくって、さらりさらりと部屋の中を闊歩している。まだ寝ていたいという瞼をあげて外を見ると、そこには橙や黄色の魚たちが気持ち良さそうに泳いでいる。くもり硝子は水だった。
ああ、沈んだのか。
外の世界を泳ぐ魚たちは小さい部屋にぽつんと残された僕とは対象的に生き生きとしていて、生き物とはこういうものなのだなと思わせる。普段僕らが移動できる空間を遥かに超えた空間を彼らは手に入れた。いや、そもそも泳ぐというのはそういうことか。僕らと違って彼らはどこにでも行ける。縄張りという制約が彼らの世界にもあるのであろうが、せっかくならそんなもの取り去って、ただただこのより美しくなった世界を旅したらどうだろうか。ああキレイだな。これが自然か。無の美しさがそこにはあった。