1月5日「雪のこ」

ぽぽぽぽぽ。

二人の雪のこが生まれました。見渡す限りの灰色の世界にぽぽぽと、小さな小さな命が生まれた瞬間です。

「おお、こんにちは。」

「ああ、こんにちは。」

「おやおや、ここは雲ですかな。おお寒い。これはすぐにみんな生まれますな。我々少し早かったかもしれませんな。」

「へえ。ここは雲と言うのですか。私は初めてでございます。それにしても、本当にここは寒いですねえ。雲と言うのはどこなのですか。私何にも知らないのです。」

「おお初めてですか。いやはやおめでたい。ここは雲と申しまして人らが住う場所から遥か上空にございます。なあに、すぐに理解できますさ。私も初めはここがどこかも何が起きているのかもさっぱりわかりませんでしたが、すぐに理解できましたよ。ほら、もう雲は抜けますよ。ほら、ごらんなさいな。」

「おお。おお。これらが雲ですか。海よりも広いのですね。こりゃあすごい。こやつは生きておるんですかい。まるで地を這う蚯蚓のようにうねっておりますが。もしくはこれもまた一つの海なのでしょうか。私の知ってる海とは色も匂いも血あうのですが。」

「いや、これは蚯蚓でも海でもないのですよ。いや、まあ海には近いのかもしれませんが、海とは真逆の場所でございます。何せ海は我々が行きつく場所、雲は我々が帰る場所、生まれる場所ですからな。ほら、どんどん小さくなってゆくでしょう。雲は小さくなるのです。ですが消えることもない。私にも不思議な場所にございますなあ。あれはなんなのでしょうね。神の子なのでしょうか。」

「不思議ですなあ。本当に小さくなっていきますねえ。おお、海が見えてきましたよ。おお、これは確かに雲とは違うや、海は大きくなるんですねえ。大きくなるのですから、私には海の方が神の子なきがいたしますが。おお、人達が見えてまいりましたな。」

「海が神のこだとするならば、人たちは実に愚かなものですなあ。彼らには己があるのですよ。人たちは1つ1つが自分に個を抱いているそうです。その個の欲のために海や大自然を汚すのですよ。本当に不思議なやつです。」

「そうなのですか。いやはや不思議な生き物ですねえ。」

「そろそろ、到着でございます。またいつかどこかで会いましょう。それでは、さようなら。」

「ええ、さようなら。」