「ご近所ブロックをコレクティブハウス化」するブルーオーシャン市場

以下の記事で、「地域コミュニティ活性化」が副次的にビジネスにつながってしかもそれは「ブルーオーシャン市場」なのでは?ということを書いた。それに対する考えを、ここでは「ご近所ブロック」という単位で書いてみる。

「コミュニティ開発」が主目的であること

これ、3年半にわたるポートランド滞在の最終盤に、日本に帰国したらやりたいと思ってた構想の一つです。8年くらい経った今でも変わらずやりたいと思っていることです。

この時は、この構想がビジネスにつながるとは思ってなかったんだけど、「不動産」とか「リノベーション」という文脈で見れば、めちゃくちゃビジネスにつながる気がしてます。ただ、恐らく、ビジネスありきでやる限り成功はしないと思います。ポイントはコミュニティ開発ファーストであること。

「コレクティブハウス」とは?

個人的に、15年前くらいから環境問題とか地球の持続可能性などにすごく関心が高く、いろんな部分で自分のライフスタイルに影響を受けている。「暮らし」という部分でも、「核家族化」とか「一人暮らし」とかの小さい世帯規模で住むことが多くなれば、それだけ地球環境に負担がかかるというようなことを常に意識している。

ルームシェアやシェアハウスなどが増えてきているのはすごくポジティブな変化なのは間違いないが、もっと価値を高められる暮らし方を「コレクティブハウス」というものに見出した

それが10年前くらい。

シェアハウスとコレクティブハウスの違い

10年前くらいにこんなセミナーに参加していた。

ゲストハウス × コレクティブハウス
https://bokudeki.me/guest-house-x-kollektibhouse/

クルミドコーヒーなどの先進的なコミュニティ活動をしている影山知明さんが、当時、NPOコレクティブハウジング社として企画したセミナー。個人的には、すごく興味深い内容で、「コレクティブハウス」という暮らし方にすごく憧れをもつようになるきっかけになったセミナーでもあった。

このセミナーで学んだシェアハウス(ゲストハウス)とコレクティブハウスの一番大きな違いは、オーナーシップの違いだと考えている。もちろん、プライベートな領域とコモンの領域がバランス良く存在し、「生活をシェアする」という観点では同じ。ただ、シェアハウスには基本的にはスペースや建物のオーナーが別に存在し、その制約の中で生活のシェアをすることになる。

それに対してコレクティブハウスは、住人同士でオーナーシップを共有するので、いろんな制約がなくなり、やりようによっては既存の土地建物を全く違ったものにできる

既存のご近所ブロックをコレクティブハウス化する

コレクティブハウスは、基本的には新規で土地建物を共同で購入して共同で運営していく形が多いようだが、必ずしもその必要はないと考えた。既存のご近所ブロックをコレクティブハウス化しちゃえば良いってこと。

町内会とかよりもっと小さい「ブロック」という単位で、住人が顔見知りになって、やがて定期的に集まるようになり、自分たちのブロックを安全で住みやすくするために、スペースや建物、資金やスキル、時間や労力をコレクティブに使うということ。

やがて、住人みんながそのご近所ブロックに対してオーナーシップを共有するようになれば、それはコレクティブハウスそのものだと考える。

最終形に行き着くまでの「プロセス」が大事

この場合、リノベーションされた結果の完成度よりも、そのプロセスが重要になる。あくまで住人が主体であり、介入する場合は、主体となるコミュニティのメンバーが自ら参加し、衝突を含めた議論を巻き起こし、意思決定や合意形成まで行き着けるような、ファシリテーター的な役割で介入する必要がある。

例えばどんな未来が想像できる?

ロジック的には30年くらいのスパンで考えれば、自分の住むブロックの景色を全く違うものにできる。ご近所さん同士で二世帯や三世帯で住んで、余ったスペースをコミュニティガーデンにしたり、余った建物をリノベーションして住民間で自由に使えるコモンハウスにしたり、ソーラー発電システムを共同運用してエネルギーを自給自足したり…

景色だけでなく、交通事故などのリスクを低減したり、子育てなどで困った時の安心感をえられたり、もしかしたらそのブロック内である程度の経済が回るようになるかもしれない。コミュニティやソーシャル・キャピタルの価値は不動産価値を高めると思うし、アートのように人と環境に優しい経済の一端を担えると思う。

どんなメリットがある?

ご近所ブロックの住人
「例えばどんな結果になる?」セクションで書いたように、30年くらいのスパンでみて、自分の住むブロックの景色が全く違うものに変わり、コミュニティやソーシャルキャピタルのある豊かな暮らしを手に入れられる可能性がある。

サービスの運営者
ご近所ブロックという単位でも長い年月かけて景色が一変するのであれば、そこに様々なビジネスチャンスがあり、ご近所コミュニティを再定義して、ノウハウや実績を溜めていけば自ずとブロック内ので不動産やリノベーション案件などを受注しやすくなる。

そして、これをオンライン技術も活用して日本全国にプラットフォーム化すれば、100年スパンで考えても持続可能なビジネスになるかもしれない。

どうやって実現する?

正直、具体的にどうやって実現できるかまではまとまってないが、鍵は「オフラインの努力」と「オンラインのコミュニケーション技術」をうまく使い分けることだと考えている。

1. オフラインの努力
30年スパンで考えれば、恐らくオンライン技術が使えない人はいなくなる

なので、オンライン技術はフル活用する前提で、オンライン技術を使えない年配の人にも意思決定に加われるようにオフラインの定例ミーティングを儲けたり、情報が十分に行き渡るように回覧板を活用したり、コモンスペースを充実させて緩いコミュニケーションを起こりやすくする。

2. オンラインのコミュニケーション技術

NPO化してSlack の NPO 支援プログラムを利用する
Slackはうまく活用できれば、いろんなグループやコミュニティで変革を起こせるコラボレーションハブになっている。そのSlackがNPO(非営利団体)向けに、一定条件の元ではSlackのスタンダードプランがタダで使えるという支援プログラムを開始している。

Slack の NPO 支援プログラム
https://slack.com/intl/ja-jp/help/articles/204368833

これをご近所ブロックの全員が使えるようにする為に、ご近所ブロックをまちづくりNPOとして再定義するのはどうかと考えた。これが実現すれば、普通のローカルの住人が、企業のSlackと同じレベルでコミュニケーションを活発化させられる可能性がある。

アプリ・プラットフォーム化する
Slackでやらない場合は、独自に事業に最適化されたオンライン・プラットフォームを開発し、運営することもできるかも。ご近所SNSを運営するNextdoorは、既に世界で23万6千エリアからアクセスがあるらしく、ブロック単位にするともっとすごい数になる。

オンライン技術は、グローバルでリアルタイムでオープンなコミュニケーションができるようになったことが画期的ではあったが、つながりすぎることで様々な弊害が出てきていることは誰もが実感していることのはずNextdoorは、世界の無数にあるローカル地域をターゲットにして、プライベートで安心してコミュニケーションできるオンラインコミュニティを作り、影響力のあるプラットフォームの運営者としてビジネスとしても成功している。

あくまで「コミュニティ開発」が目的

個人的に自分の強みだと思っているのが、僕はあくまでコミュニティ開発がやりたいという想いがブレないこと。今日、ちょうど社会課題解決型スタートアップの活躍の記事を読んだけど、勝手に方向性が近いと感じている。

目的がビジネスよりもっと先にあれば、お金は後でついてくる、というか、後で副次的にビジネスにつながるということ。そう信じて、これからもブレずにやっていきたい。


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