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私とラルク

L'Arc〜en〜Cielが好き。と言うと、「まさか」という顔をされる。
「あなたの口からラルクという言葉が出てくるなんて思わなかった。」とも言われる。それくらい自分には似合わないのだと思うが、好きなのだから仕方ない。
初めは好きではなかった。というか敬遠していた。
中学生の当時、ビジュアル系ロックバンドと称されるバンドが大流行し、生徒の中には熱狂的なファンもいた。
ビジュアル系ロックバンドとは、大まかに言うと男性がメイクをほどこし、髪を伸ばし、女性の様に着飾り、まるで中世ヨーロッパを思わせる装いと演出で音楽を奏でるバンドである。(個人の見解です)
そして、私はそのような流行に着いていけなかった。
それこそビジュアルだけを見ていて、理解不能、なんだか妖しい、妖しすぎて怖い。という第一印象により、心のシャッターを下ろした。
「L'Arc〜en〜Cielはビジュアル系じゃない」と友達から説明を受けても、どこがどう違うのか?という思いだった。
好きなものを否定するつもりはありませんが、あまり深入りはいたしません。というスタンスであった。

ある日、部活に行くと新しい楽譜が配られた。私は吹奏楽部に所属しており、クラリネットを担当していたのだ。
楽譜を見ると「DIVE TO BLUE」と書かれてある。
そしてその横に「L'Arc〜en〜Ciel」。

うわー

どうやらL'Arc〜en〜Cielの熱狂的ファンの先輩が顧問の先生の反対を押し切って楽譜を購入したらしい。
すごいガッツだ。
同じく何人かの熱狂的ファンの部員達は喜び、他の部員も「あー、あの曲か」という反応であった。
私はというと、この曲を聞いたこともなかった。その上英語が苦手だった為に曲名すら実は読めなかった。L'Arc〜en〜Cielは字面で覚えていた。

音符を確認する。
全くわからん。なんか付点四分音符とか付点八分音符がタイでいっぱい繋がっている。
実は吹奏楽部に所属していながら、音符がスムーズに読めなかった。特にリズムなんて音符から読み取れるようになったのは3年生になってからだ。
しばらくの個人練習の後、パート練習が始まる。
クラリネットは私達2年が3人、3年生が1人だった。先輩にリズムを教えて貰う。「ターッタ、ターッタ…や、ちょっと待って」先輩も自分が確認するので精一杯の様子である。
友達にも聞いたがやっぱりよくわからない。
いつも人にリズムを教えて貰って乗り切っていたが、今回ばかりは自力でなんとかするしかなさそうだ。
だがとにかく主旋律さえわからない。
どうしようどうしよう…
考えた末にとにかく曲名を聞いて、学校帰りにTSUTAYAへ走った。
人気があるだけにCDはすぐに見つかった。
それを借りて帰って、早速家で聞いた。

イントロが始まる、今までに聞いたことのない不思議な響きがした。
メロディに注意して聞いていたのだが、次第にその歌詞に聞きいってしまった。

「何が正しいなんて答えはないさ」

「君だけは大人にならないで」

中学生の心にグサっと刺さった。
中学生特有のモヤモヤとしていた心の霧が晴れたような、
まるで頭上に青空が広がる感覚に陥った。

「今も今も覚えている 幼い頃に見た朝焼けを」
思い出す朝焼けがあった。

同じだ!
そんなことで、やたらとシンパシーを感じたのである。

心のシャッターが、開け放たれた瞬間であった。

それ以降、人の好きなものに興味を抱くようになった。
表面だけ見てもわからない、自分の知らない世界がそこに広がっていることがわかったからだ。
そこは、自分にとっても大切な世界になる可能性を秘めている。

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