前回
五月五日の水曜日、光里の二十三回目の誕生日だ。いろいろあって、この日、光里は十縷とデートすることになった。
デート中の会話は、リヨモが地球に来たばかりの話が主だったが、その中で光里から気になる一言があった。
「仲違い……に近いことはあったよ。私、一度だけあの子のこと、本気で怒鳴ったことがあって」
思わず驚いた十縷に、光里は語った。
電車で移動した十縷と光里は、四月にカムゾンたち巨獣が出現した港近くの遊園地に来ていた。かつてゲジョーが乗った観覧車に乗り、その中で話を続けていた。
「私も偉そうに言ったモンだよ。あの子の両親なんて話で聞いただけなのに、想像で語ってさ。戦争だって、実体験が無いクセにね」
窓から臨む景色を眺めながら、光里は当時を振り返ってしみじみと呟く。そんな彼女に、十縷は当然の質問をした。
「どうやって仲直りしたの? 今、二人ともそんなこと気にしてないよね?」
光里は問われると、視線を横の窓から正面の十縷の方に移した。独特な笑みを浮かべていた。嬉しいような悔しいような、何とも複雑な表情だった。
次回へ続く!