「いのちの車窓から」感想文〜キラキラしたもの。

(※少々ネタバレあります)
星野源さんの音楽が好きでよく聴いている。
この本は、雑誌の連載エッセイをまとめたものだ。(一部書き下ろしあり)
自分の知らない楽しさを教えてくれそうで、ワクワクしながら読み始めた。
星野源さんの生活、出会った人や物とのエピソード、過去の体験、そこから繋がる現在が綴られている。
リアルな日常の描写に親しみを感じた。夜型の生活や、ゲームや映画が好きな一面、酒に弱い体質など、私的な部分がかいま見えるとテンションが上がる。
自分と同じように今を生きている人なんだと実感。共に楽しめるコンテンツがある事が嬉しい。

音楽に関する記述も多い。
たとえば楽曲「SUN」の歌詞は、星野さんが小さい頃から好きなマイケル・ジャクソンをイメージし、彼への個人的な思いを忍ばせたものらしい。
何度も聴いた曲が、作り手の思いを知る事で生まれ変わる。
「恋」の歌い出し部分の歌詞が書けるまでのエピソードもある。
恋といえば、新垣結衣さんについて書いた箇所は恋文を読んでいるようで(そんな直接的な表現はないのだが)、パッと世界が明るくなるような感じ。
鶴瓶さんや大泉洋さん、細野晴臣さんとのエピソードもある。タクシーの運転手や中華料理店のおじさん、カフェで隣に座った男性の連れた柴犬など、エッセイには様々な人(とワンちゃん)が登場する。

それを読めば、己のフィーリングに正直に、自分にも他人にも誠実に向き合う律儀さを感じる。同時に、星野さんは関わった人を自らの人生のドラマに組み込んで昇華させるのが上手い。
過去の苦しい経験も、現在にしっかり繋げることで伏線回収して浄化している。
フィーリングだけじゃなく、突き詰めて考えることで人生を彩り楽しみ切り開いていく。そんな力強さを感じた。

また音楽、踊ること、文章を書くことのきっかけも綴られている。創作する理由が丁寧に語られているので、読むごとにエッセイへの安心と信頼が積み重なっていく。(スローガンか)
私は深く考える人、行動に確固とした理由が伴っている人に憧れる。自分に本来ないものを持っている気がするからだ。星野さんは直感を大切にしながらも考え続ける人という印象だ。

好きな人、ものへの信頼は、深く理解するための一助になる。理解するとは自分の中に取り入れる事だ。
星野さんの創り出すものをこれからも追い続け、自分の糧にしたい。
読んだ事のない方は、ぜひ手に取ってみてくださいね。おすすめします。

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