見出し画像

【レヴュー】20230503 THE STREET SLIDERS 武道館LIVE

  ストリート・スライダーズの結成40th記念LIVEが、5月3日に武道館で開催された。解散以来、23年振りの再結成である。
 元々時代にリンクさせて、あるいは時代に合わせて表現していくバンドではなかったので、今夜も時代遅れだとか同窓会的な雰囲気とは全く無縁で、会場はまるで昨夜のツアーの続きを待つファンの集まりのようであった。
 メンバーが入場し、ハリーの「Hello!」の声でTHE STREET SLIDERSのLIVEが23年ぶりに始まった。
 メンバーの立ち位置は、ステージ正面から見てハリーが右手、蘭丸が左手に、その奥の中心を分けるようにZUZUが左、JAMESが右であった。この立ち位置は‘80年代と‘90年代半ば迄とは違う立ち位置、つまり‘90年代後期から解散LIVE時の立ち位置と同じである。これは昨日の続き、つまり2,000年10/29以来の続きである、ということを示唆しているかのようであった。 
 各メンバーのソロ活動を追ってきた者であればわかるが、今回この四人が揃った時に秀逸だったのはZUZUのドラムであった。重さといい、テンポといい、キレといい、今回のライブの重要なキーとなっていた。23年前と変わらないどころかバンドをバージョン・アツプさせていた。
 LIVEは「チャンドラー」で幕を開け、四曲目に「Let`s go down the street」、五曲目から「one day」そして八曲目の「ありったけのコイン」と
殆どが初期のナンバーで占められた。バランスを取って各アルバムから満遍なく、ということではなく、ファンクやレゲエ、ダンスナンバーも出来るバンドがそれらの曲をリストから外したということは、今回のセットリストが自分たちの原点でありそれを集ったファンへ見せる、表現するということに徹したからだろう。そのことは九、十曲目の「曇った空に~」と「ミッドナイト・アワー」」にもあらわれている。このJOY-POPS名義で作られた8ビートの二曲は、この曲にドラムとベースが入ったなら、と誰もが思わざるを得ない曲であったが、元々JOY-POPS用の曲であったのか、またはSLIDERS再結成を念頭に置いて作られたのかは定かではないが、どちらだったにせよ今回昇華して非常に良い形となり、今回のセットリストに全く違和感なく組み込まれていた。
 途中ハリーのバンドメンバー紹介があったが、SLIDERSからハリーのソロ活動を見続けて来た者にとっては感慨深いものであったし、joy-popsでは積極的にMCを担当した蘭丸が今回MCを行わなかったことはこれがSTREET SLIDERSのLIVEである、ということを温かく示していた。
 LIVEは後半「天国列車」、「Hello Old Friends」そして「So Heavy」と続き、公演はさらにアンコール二曲を演奏して終演した。アンコール最後の曲「TOKYO JUNK」の前に、ハリーが「全ての関係者へ感謝したい」と述べていたがこれは全てのスタッフやマネジメント側へだけではなく、ファンへ向けたものでもあったろう。

 アンコール終演後、ステージ四方の上方から一気に白い幕が降り、そこには手書きの筆文字で「ザ・ストリート・スライダーズ 秋・ツアーやるゼィ!」と横書きで書かれてあった。皆呆気にとられた後にスマホを次々と、そして続々と向けていた。
この告知の演出は抜群であった。
 元々スライダーズはこのようなユーモアやPOP性を前面に出したり受け入れたりすることが極端に少ないバンドであった。従って今回のこの演出に基づいたツアー告知は失敗に終わる可能性もあったし、ファン離れをも起こしかねなかった筈だ。しかしながらスライダーズのそのイメージと告知の演出のユーモアとのギャップが大きければ大きい程、その効果が高まることも確かである。今回このような演出でツアーの告知を承知したということは、それがバンドの好調さと自信の表れであり、元来持っているスライダーズというバンドのスタイルの確固性と不動さが今回の告知のユーモアとPOP性を許容した、ということであろう。そして今回その判断は大成功であった。また今回のこの告知を裏返して考えてみた場合、この再結成ライブのタイミングと武道館という会場においてこの告知と演出を考えたクリエーターは称賛に値するだろう。スライダーズが今現在置かれている状況を完璧に理解し、読み切っていた。
 この演出の告知にOKを出したスライダーズの判断とこのタイミングでこの告知を提案してきたクリエーターのセンスと状況判断、驚きや戸惑いはあったものの特段何の抵抗もなくツアー告知を受け入れ白い幕にスマホを向けるファン、最高の武道館LIVEを経験したこの三者は、三位一体となって九月のツアーを目指す。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?