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母と殿様ごっこ~女子の生き様~

認知症の母はいつもプリプリ怒っている。泥棒が入ってきて、家の中のものをすり替えているとか、カーテンが人の顔に見えて気持ちが悪いなど、文句を言っている。
きっと自分の身体が思うように動かないことも手伝ってイライラしているのだと思う。
そんな母にどう接していいのか分からず、私までイライラしてしまうときもある。

高齢の母が一番気をつけないといけないのは転倒である。今まで、元気だったお年寄りの方が転倒により、太ももの骨を骨折してしまい、あっという間に車椅子生活になったなどのお話しを聞く。転倒防止には神経をとがらせながら気を配っている。

母に「転んだら寝たきり」だからねと言い聞かせるとさらに腹を立てるようになった。

これでは、母と私どちらもイライラして精神衛生上よくないので、なにかいい方法がないか考えるようになった。

そこで、編み出したのが、母を「親方様」と尊敬の意を込めて呼ぶことにした。
「お母さんは、ウチの親方様やけん」と言って、
「親方様、ご飯はおいしいですか?」
「親方様、お風呂は気持ちいいですか?」

と、半分冗談で言っていた。そうしたら、母もその名を気に入ったらしく、「親方様のお通りじゃ!!」というようになり、私も「は、はぁー皆の者道を開けい」と言って、母が通れるように部屋の中のものをどかすのであった。
いい歳した母娘の「殿様ごっこ」である。
母もこんなことをして遊んでいるのはウチだけだろうねと言って笑っていた。

そんな母も今は肺炎で入院している。自宅で一緒に暮らすのは限界がきていると感じている。母と「殿様ごっこ」はもうできないかもしれない。寂しいと感じながらも、母と楽しく暮らした思い出は消えないし、これからも楽しい思い出は増えるかもしれない。
優しい母には、どうか苦しまずに寿命をまっとうしてほしいと願うばかりである。



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