友情出演:ゴールドシップ【君の膵臓をたべたい】
※”君の膵臓をたべたい”のネタバレ記事です。ご注意ください。
全て持っていかれた。
最後に持っていかれた。
リゼロを20巻まで読み終えて、第5章の感想でも書こうかなって思っていた時に、以前購入したまま手を付けていなかった「君の膵臓をたべたい」を手に取った。
有名な作品なので「読めばおそらく感動はするんだろうな。泣いちゃうんだろうな」何て思いながら読み進めた。
面白い。
どんどん読める。
「四月は君の嘘」と似ているな。
と思わなくはなかったが、物語の構成と言うのか、場面の切り替え方が私好みでどんどん読み進めた。
旅行のシーンとか大好きな展開だ。
終盤の”文庫”のくだりは冗長だなと思いながらも、それでも涙と鼻水をすすりながら読み進めた。
ラスト辺りになると、桜良視点でもう一つの「君の膵臓をたべたい」を書くべきだ。
絶対に書くべきだ。
そう考えていた。
ラスト残り数ページまでは本当にそう思っていた。
それを全て彼女がぶち壊した。
桜良がいなくなってしまった世界に留まりたい私に、
感傷に浸りたい私に対して彼女が
「ほら上を見ろ。空を見ろ。すごい晴れてるぞ」
そう言って、私の頭を無理矢理掴み、顔を空に向けさせられた気分になった。
「いっつも思うけど、弱っちいなぁ」
「黙って行ってこい」
「おらっ、起きろ桜良っ!」
何か何処かで見たことあるな・・・
この不遜な態度。
ああ。
そうだ。
ゴールドシップだ。
態度、台詞、行動、その全てがゴールドシップを彷彿させる。
物語の最後の余韻に浸ろうとする私の感傷を見事に破壊してく。
過ぎ去ったあの楽しかった時間に留まらさせてくれない。
容赦なく前を向かされる。
でもそれは決して嫌な気分とはならず、寧ろ悲しかった過去を胸に秘めつつ前を向くことで変わろうとする私を後押しするようで。
ごめん。
もう彼女がゴールドシップにしか見えない。
ゴールドシップが階段を上り
ゴールドシップが水をかけ
ゴールドシップが「もっと早く言えっ」と怒り
ゴールドシップが「ふーん」とにやにやしているようしにか思えなかった。
桜良が大好きと言っていた恭子は、凄く良い意味での物語の破壊者となり、あれだけ輝いていた桜良の存在を最後の最後で喰ってしまい、桜良がいなくなってしまった世界を完全に、そして清々しいまでにぶち壊してしまった。
でもそれで良い。
桜良が去ってしまった事で崩壊しそうになっていた日常はゴールドシップと化した恭子の手によって壊されてしまい、代わりに桜良が愛した日常が取り戻されてこれから先も続いていくのだから。
そして私は思うのである。
”やっぱり、桜良視点の「君の膵臓をたべたい」は無くても良いか。”
春樹たちの頭上には高い青空が広がっており、春樹と共に階段を下りる彼女がそっと後ろを振り返り、少しだけ意地悪な顔をしてウィンクをする姿が私には容易に想像出来るのだから。
日常は次の明日へ向かってもう動き出しているのである。
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