母娘で男性の家に上がり込んでいた件について
今思い返せば、明らかに話題性のある面白いお話。当時は日常。
小学4、5年生頃だったと思う。私は学校帰り母に連れられ男の人の家に遊びに行っていた。
その男性というのは、母の会社の同僚。妻子持ちの単身赴任だった。1Kの古いアパートで一人暮らしをしていた還暦間近であろう白髪混じりの男性だった。
彼をTさんと呼ぶことにする。
近所には私の知り合いも住んでいたため、Tさんの家に出入りするのは人目の少ない時間帯だった。
毎日のように部屋に行っては、母が晩御飯を作り3人で食べた。テレビとエアコンが私の家にはなかった。涼しい部屋でアニメやドラマを観させてもらえた時間は私にとって幸せの一言だった。お泊まりをしたこともある。間仕切りのない狭い一室で大人2人子1人眠るのである。しかも他人。事件が起こらなかったのが不思議で仕方ない。
いろんなところに3人で出かけた。ギターをやっていたTさんのコンサートにも足を運んだし、水族館、プール、遊園地にも行った。ドライブもしたし、某大型ショッピングセンターにも連れていってもらった。
Tさんは私のことを娘のように可愛がってくれていた。
その奇妙な生活にも終止符が打たれた。
深夜の車内暗くて怖いその場所で一人、母の帰りを待っていた。どのくらい待っただろう。遠くから母の高い声が聞こえてきた。口論していたのだ。
それから、もうTさんの家に上がらせてもらうことも、会うこともなかった。
母は強引な人だったから、多分無理やりだったのだろう。それにしても、妻子持ちの男性が、単身赴任先で夫持ちの子連れの女を家にあげるなんてやっぱり変だと思う。変なの。当時の違和感が今になってぶり返す。
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