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機械(生きた死体)と化した人間が機械を発明して人間に復讐するというパラドックス

概要

安部工房の短編小説
1953年(昭和28年)雑誌『文學会』3月号に掲載。

あらすじ
会社を馘になり自殺しようとしていた機械技師が、国際秘密クラブに自分を「死体」として売り、生きたままロボットにされる物語。
彼は資本家たち(代議士、高官、銀行の頭取、大企業の重役たち)の意をくみ、ついに
「第2のロボットを生み出すにいたりました。
 人間から人間以上の能力を引き出すことに成功したのであります。」
(所長)

 戦後復興を遂げた日本社会に急激にアメリカ産業が流入し、高度経済成長期へと突入する直前の時期が舞台
「テクノロジーが人間世界を支配」し始めていることへの批判か。
ちなみにR62号とは、ロボット62号ということ。

「人間がはたすべき役割」とはいったい如何なるものであるのか。
それは、「機械の良きしもべ」となること。

 私は当初 時代背景から考えて「過度な資本主義への批判的作品」だろうと考えていた。と同時に映画「ターミネーター」や、現在社会の大きな問題となるつつある「AIの存在」を思い出した。「生きたままの死体」が、合理性の象徴たる「生きたままの死体」を再生産していく。もしかしたら私達は既に「資本主義の化身たる機械(合理性)の下僕」となっているのかもしれない。

 最後に『R62号の発明』の完成発表の席にただ一人残された人間である所長の言葉をあげておこう。

「R62号、こいつはいったい何をつくる機械なんだ?
 何をつくるつもりだったんだ!」

所長はありったけの声で叫んだ。

                (了)






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