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たとえ明日世界が滅亡しようとも、今日私はベルマークを集める 〜ベルマークで随想する人生と存在について〜

私、ヌマルネコはズボラである。
ズボラを型にはめたような、その型からもはみ出るようなだらしない人間で、引き出しは常に開きっぱなし、服は脱ぎっぱなし、日記は3日どころか初日で更新ストップすること幾有余年。

そんな私が、上の息子が生まれたときから4年以上、続けていることがある。
タカラトミーの株とベルマークの収集だ。

「タカラトミー株はわからんでもないがベルマーク絶対いらんやろ(pgr」

あーね、聞こえる聞こえる。旦那も言ってる。
湖池屋ポテチ食べては「これ(ベルマーク)、残さなきゃだめ…?」とおずおず聞いてくる。
馬ッッ鹿野郎!!湖池屋は最大のな得点源だから絶対死守だっ!!シシューッ!!
(ケチャップやマヨや牛乳石鹸は滅多に更新しないからな)

なぜ私が執拗にベルマークを集めているか。

遡ること約30年。
その頃はベルマーク全盛期であった。(知らんけど)
教室の隅の、ベルマークで手に入れた電動鉛筆削りはみんなに愛されて削り節でパンパンだった。(知らんけど)
当時の小学生はノートやお菓子など、買ったものはとりあえず裏返してベルマーク無いかチェックするよう刷り込まれていた。(知らんけど)
どの家庭でも、夕餉の支度をしている母に切り取ったベルマークを貰う、温かな光景が見られた。(知らんけど)

嗚呼、美しき時代平成!!
(偏見入り)

しかし、だ。私の原動力はそんな懐古主義の話ではない。

そう…あれは3年生だったか…
特に楽しいイベントも無い11月。クラスでベルマークを集める、そんな季節がやってきた。
(季節柄のイベントなのかは不明)

ベルマーク収集は慣れたもので、私もまぁそれなりに貯めていましたとも。
何かの付録のセーラームーンの筆箱に放り込んでいったベルマークは30点くらいだったか。そこそこ真面目なほう、ひょっとしたらかなり上位だ。なにせ優等生だったからな!

ところが翌日、私のぬるい態度はしばき倒されたんだ…

山口くん。
クラスでも相当存在感の薄い彼。
私は彼(の顔は忘れたが、彼の存在)を決して忘れない。

その日、私の桂馬跳び斜め前の席の彼は、机にベルマークの山を作った。
飛んで下に落ちる何枚ものベルマーク。
周りの生徒が気づく。ざわめきが広がる。おちゃらけキャラのクラスメイトから「すげえ!!」の声。

その数700枚超。
しかもほぼ全てが高配点のカメラフィルム。

みんなで彼の机を囲み、枚数を数えたり点数を数えたり、ひたすら祭りだった。縁日の金魚すくいのような子どもたちの群がり。雑踏。わっしょいわっしょい。最終的には誰もが「山口すげえ!」と言ってただろう。

なんでもお父さんの趣味がカメラだと。
(おいおい趣味に金かかる父ちゃんだな、え、50万行ってね…?)

卓球の中国が如く、山口くんの圧倒的一人勝ちでその年のベルマーク収集活動は幕をおろし、我が校にはピッカピカの一輪車が納入された。

程なくして、全校に一輪車ブームが巻き起こった。
1年生から6年生までハマり、昼休みは一輪車の争奪戦となり、一輪車クラブが創設され、運動会でも一輪車ダンスなるものが披露された。

私?
ええ、私も舞いましたよ、華麗に空中乗り決めましたよ。空中乗り出来ることが一大ステイタスだったよね?
優等生だったからな!

もちろん、一輪車は学校中で集めたベルマークで交換されたものなんだけど。
一輪車は紛れもなく山口くんの存在感を放っていた。

…いや、一輪車ではないな。
私はあの、教室での、机の上に山を作ったとき(だけ)が6年間のハイライトだった彼を、今でも忘れることができない。

これは…恋…?

いや違うって。無い無い。それは無い。

彼は間違いなく人々の記憶に刻まれたのだ。
リレーのアンカーで1位の奴が誰だったか忘れたけど、圧倒的ベルマーク世界ランキング1位男は記憶に刻まれたのだ。

「死んだら新聞に載るようなロックスターに」とはTHE YELLOW MONKEYの歌詞。
(あ、ちなみに2016年の武道館メカラウロコは最前列を引き当ててその時のHEESEYの顎のラインがセクスィ過ぎて鼻血モンでずっと見てたら…(以下別の機会に))

30代になると同じように思う人も多いだろうが、私は死んでも新聞には載らないだろう。(うん、まぁ無理っしょ)
あなたも載らないだろう。(まぁ、そんなもんっしょ)

でもさー、焦りがないといえば嘘になるよねー。
わっかるー。
だって銭形警部だって29歳だよー?
えやばー!!!
@鳥貴族

ただ、山口くんは私の中でひとつの答えなの。
彼は新聞には載らない市井の人として確かに存在した。
人生に悩む時、自然と思い起こされるのは数多の成功者ではなく山口くんなのよ。

だから私は集める。

旦那にこっそり捨てられそうになるポテチ袋をゴミ袋から救い上げて集め続ける。

息子たちに「新聞に載らなくても大丈夫。あなたたちにはベルマークがあるから。」と伝えるためだけに。
(愛情表現下手ァ…)


沼る猫







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