時、条件の副詞節の中、未来のことでも現在形のなぞ

「時、条件の副詞節の中、未来のことでも現在形」

これをそのまま丸暗記している人は多いのではないかと思う。
学校でも塾でも、「そのまま丸暗記せよ!」と教えられ、その理屈を聞こうとすると、先生に煙たがられてしまったのではないだろうか? わたしもそのうちの一人であった。なのでここにて、いくつかの文献を参考にして、私なりの結論を書いていきたいと思う。


英文法解説(江川)の記載

1953年に初版が発売されて以降、現在まで人気のある英文法書「英文法解説」の記載を見ていこう。 (参考にしているのは英文法解説第三改訂版)

この本のp211に、この副詞節の記載がある。(一例ずつ記載する)
時を表す副詞節
 You'll be sick when the ship begins rolling heavily.
条件を表す副詞節
 You'll cut yourself if you walk around here in bare feet.

 cf. whenやifが名詞節では事柄が未来であれば、現在時制は使われない。
 Tell me when you will be ready.

だが、依頼を表す場合、意志未来を表す場合においては、条件節でもwillが用いられる。
 If you will help me, I'll soon finish.  
   (please help me, then ,,,)

時条件の副詞節で、現在時制が使われる現象に対する伝統的な英文法の考え方は「主節の内容が未来を表しているから誤解のない限り副詞節にまで未来を表す will を使う必要はない」としている。

現代英文法講義(安藤)での記載

この本の中でも、この副詞節に対する考察がなされているが、安藤の意見では、「拘束節」は、時間の区別が関与しない、単なる命題と表しているため、その目的にもっともよく適したものとして、時間に対して中立な。現在時制が用いられているとされている。

はじめての英語史(堀田)での記載

この本では、主に英語の歴史について書かれているが、その中で興味深いポイントがあったのでここに書き加えたい。
If it rains tomorrow, we will stay here.
近代英語以前では、時、条件の副詞節だけではなく、またその他の広い副詞句においても、接続法という形をとっていたという。(現代でいう仮定法)
古くは If it be fine tomorrow  と言っていたようである。接続法のbe.
条件を表すのであるから、接続法を使っていたという意識があったようである。この副詞節で強く意識されていたのは未来というより、むしろ、「雨が降る」という可能性についてである。という記載あり。

まとめ

以上より、私は、「拘束節」(時、条件の副詞節)では、未来のことというより、むしろ、時間の区別が関与しない命題や可能性を表すという、安藤や堀田の意見がかなり的を得ているのではないかと思う。
江川の記載では参考にはなるが決定打にはならないと思う。
つまるところ、以上のいろいろな要因が重なって、
「時条件の副詞節の中、未来のことでも現在形」
という、文が現れたのだと思う。しかし江川のところで述べたように、
依頼や、意志未来の時は、条件節の中に出現するようである。
これは未来表現というよりは、話者の心的態度であるからだと思われる。

参考文献

英文法解説
現代英文法講義
英語の「なぜ?」に答えるはじめての英語史
また 日本人の英語(マーク ピーターセン)にもこの問題について考察されていた。


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