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ほろ大人

数日前、「揚げぎんなん」という渋いおつまみ系スナックを近所のスーパーで見つけ、気まぐれに買った。家で早速ひと粒食べてみると、カリッとした食感で穏やかな塩味。「なんだ、あんまり味しないな…?」と食べ終わりかけた瞬間、じわじわと苦味が口に広がった。ポテトチップのフレーバーでは出せない、野生の苦味。
「お〜お、ニガ美味しい!」と、その、ほろ苦のうまさに感動した。

そういえば、私はほろ苦い味が割と好きだ。
ゴーヤ、ピーマン、春菊、うど、菜の花…。以前はそれほど美味しいとは感じなかった食材たちがいつの間にか美味しく感じるようになっていた。お酒は弱いが、ビールも一口目が素晴らしく美味しい。いずれも、単純な「甘い!」「辛い!」「酸っぱい!」とは違う、奥深い味たちだ。さらにいえば、「苦い!」とも違う「ほろ苦い…(余韻)」という、グラデーションのある味というか、大人っぽいニュアンスがある。

そもそも苦味は毒性を示す味。だから甘味や酸味などの他の味よりも人間の舌が感知しやすいという。子どもの舌はさらに敏感というから、ピーマン嫌いの子が多いのも納得だ。大人になってさまざまな味を経験していくと苦味にも美味しさを感じ取れるようになるんだとか。

40代の私だが、苦味を美味しいと感じるようになったのなんて、結構最近のこと。人生でもほろ苦い経験をたくさんして、ようやく大人の感性になれたんだろうか。ほろ大人らしくなったのだろうか。

人生何周目か、世の中のあらゆる味を体験し尽くしたら、本物の毒の味さえ美味しく感じられるのかもしれない。
私は今のところ、揚げぎんなんで満足だけれど。


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